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ご対面
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魔王への挨拶をする日、私とクラウスとティルは魔王城の目の前まで来ていた。
城は丘の上にあり、遠くに街が見えた。おそらくこの間クラウスと出かけた街だ。
「僕はここまでなんだ。行ってらっしゃい。その結界が破れたら飛んでいくからね!」
「はい、ありがとうございます。行ってきます」
ティルとハグをして別れを惜しむ。
ティルは今回招待されていないので、城の外で待っていてくれることになっていた。
パーティーの時のように、ブローチの中に隠れていることも出来ないから仕方がない。
(人間は誤魔化せても、魔王には無理よね)
その代わり、ティルの張ってくれた結界に異常があれば、すぐに連絡出来るようになっているらしい。
ありがたいけれど、使わなくて済むのが一番だ。
「それじゃあ行こうか」
クラウスにエスコートされて城の中にはいると、少しだけ頭がクラクラした。外とは明らかに空気が違う。
「強い魔力が充満しているな。大丈夫か?」
「大丈夫です。ちょっと違和感がある程度なので」
我慢出来ないほどではないし、こんなところでクラウスを心配させたくない。
背筋を伸ばし、気合を入れ直す。
(クラウスの生みの親にご挨拶するんだから、ちゃんとしなくちゃ!)
薄暗い城の中には誰もいなかった。それなのにたくさんの気配がある。
(見られている気がするわ。……私には見えない魔物がいるのかも)
クラウスは気にする様子もなく、どんどんと進んでいく。もはや歩き慣れている感じさえする。
周囲の気配は、クラウスを避けるように動いている。
(悪意はそこまで感じないし、クラウスを恐れているみたい。私がビビったらダメね)
私は「気づいているけれど、なんとも思っていませんよー」という顔をしながら、クラウスとともに歩いて行った。
クラウスが足を止めたのは、大きな扉の前だった。
「ここだ」
目の前の扉は重々しく、いかにも魔王がいそうな雰囲気だった。
クラウスは扉を見つめたまま動かなくなってしまった。
「もしかして、緊張していますか?」
エスコートしてくれたクラウスの顔が少し強張っている。
「俺が? まさか。カレンこそ大丈夫か?」
「……ちょっと不安なので、手を握っていてくれますか?」
固い表情のまま笑うクラウスの手をそっと握ると、いつもより冷たかった。
なにか言葉をかけたかったのに、何も言葉が浮かばない。
「あのっ……」
「少し、力を貸してくれ」
クラウスの小さく掠れた声が聞こえたと同時に、クラウスの唇が私の唇に優しく触れた。
(どうしてそんな顔をするの? まるで最後みたいな……)
悲しげで、強い感情を抑えているかのような、見ていて辛くなる顔をしていた。
待って、と言いたかったのに、言葉が口から出る前に扉が開かれた。
「よく来ましたね。クラウス」
「……お久しぶりです。魔王様」
魔王の姿も声も、想像とはまるで違っていた。
恐ろしい姿を想像していたのに、玉座に座っていたのは、爽やかな青年だった。
(これが魔王? すごく優しそうだし、人の姿をしている……)
物腰柔らかな態度でクラウスに微笑む姿は、魔王とは思えないほど穏やかだった。
一方のクラウスは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あなたがカレンさんですか?」
「はい、カレンと申します。お会いできて光栄です。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「こちらこそ、急に呼び出して申し訳ありません。クラウスと結婚した方がどんな人なのか、気になってしまって」
挨拶をしながら魔王をちらりと観察する。
申し訳なさそうにふにゃりと笑っている姿には、親近感すら覚えそうだ。
「いつまでその気持ち悪い姿でいるのですか? それに、その話し方は何なんですか?」
クラウスの声と表情は冷たく、魔王に対する嫌悪感がにじみ出ていた。
「クラウスは手厳しいな。カレンさんを怖がらせないための配慮ですよ。それとも……僕がこの姿で何か不都合でもあるのですか?」
「……いいえ」
一瞬だけ、空気が張り詰めた。
クラウスもそれを感じたのだろう。それ以上、魔王に言い返すことはなかった。
どうやら魔王は、普段と違う姿らしい。
(本当に私のため? それとも、クラウスを刺激するため……?)
ティルは親子喧嘩と言っていたけれど、なかなか根が深いのかもしれない。
「立ち話も疲れるでしょう? 別室にお茶を用意してあります。そちらでゆっくりと話しましょう」
魔王がそう言って部屋の奥を指さした時、外から大きな爆発音が聞こえ、地面がぐらぐらと揺れた。
「きゃあっ! 一体なに……」
クラウスが、私をさっと抱き寄せる。
「おやおや……大変なことが起きたようだね」
「どういうことだ? おい、何を企んでいる?!」
落ち着いている魔王とは対照的に、クラウスは殺気に満ちていた。
「声を荒げるより、様子を見に行ったらどうですか? 結界管理は君の仕事でしょう?」
「……くそっ!」
こんなに焦っている姿は見たことがない。緊急事態のようだ。
「結界に何かあったのですか?」
「どうやら城周辺の結界が一部、破られたようですよ」
クラウスが答えるよりも先に、魔王が教えてくれた。
「大変じゃないですか! クラウス、私は構わないので行ってきてください」
「……分かった。すぐ戻る。なにかあったらティルを呼べ」
「はい」
私が返事をしたと同時に、クラウスの姿が消えた。
(大丈夫かしら? クラウスの結界が破られたってことは、誰かが魔王を狙っているということでしょう?)
クラウスが想定していた以上の強い魔物がいる。
そう思うと、身体が冷たくなるのを感じた。
城は丘の上にあり、遠くに街が見えた。おそらくこの間クラウスと出かけた街だ。
「僕はここまでなんだ。行ってらっしゃい。その結界が破れたら飛んでいくからね!」
「はい、ありがとうございます。行ってきます」
ティルとハグをして別れを惜しむ。
ティルは今回招待されていないので、城の外で待っていてくれることになっていた。
パーティーの時のように、ブローチの中に隠れていることも出来ないから仕方がない。
(人間は誤魔化せても、魔王には無理よね)
その代わり、ティルの張ってくれた結界に異常があれば、すぐに連絡出来るようになっているらしい。
ありがたいけれど、使わなくて済むのが一番だ。
「それじゃあ行こうか」
クラウスにエスコートされて城の中にはいると、少しだけ頭がクラクラした。外とは明らかに空気が違う。
「強い魔力が充満しているな。大丈夫か?」
「大丈夫です。ちょっと違和感がある程度なので」
我慢出来ないほどではないし、こんなところでクラウスを心配させたくない。
背筋を伸ばし、気合を入れ直す。
(クラウスの生みの親にご挨拶するんだから、ちゃんとしなくちゃ!)
薄暗い城の中には誰もいなかった。それなのにたくさんの気配がある。
(見られている気がするわ。……私には見えない魔物がいるのかも)
クラウスは気にする様子もなく、どんどんと進んでいく。もはや歩き慣れている感じさえする。
周囲の気配は、クラウスを避けるように動いている。
(悪意はそこまで感じないし、クラウスを恐れているみたい。私がビビったらダメね)
私は「気づいているけれど、なんとも思っていませんよー」という顔をしながら、クラウスとともに歩いて行った。
クラウスが足を止めたのは、大きな扉の前だった。
「ここだ」
目の前の扉は重々しく、いかにも魔王がいそうな雰囲気だった。
クラウスは扉を見つめたまま動かなくなってしまった。
「もしかして、緊張していますか?」
エスコートしてくれたクラウスの顔が少し強張っている。
「俺が? まさか。カレンこそ大丈夫か?」
「……ちょっと不安なので、手を握っていてくれますか?」
固い表情のまま笑うクラウスの手をそっと握ると、いつもより冷たかった。
なにか言葉をかけたかったのに、何も言葉が浮かばない。
「あのっ……」
「少し、力を貸してくれ」
クラウスの小さく掠れた声が聞こえたと同時に、クラウスの唇が私の唇に優しく触れた。
(どうしてそんな顔をするの? まるで最後みたいな……)
悲しげで、強い感情を抑えているかのような、見ていて辛くなる顔をしていた。
待って、と言いたかったのに、言葉が口から出る前に扉が開かれた。
「よく来ましたね。クラウス」
「……お久しぶりです。魔王様」
魔王の姿も声も、想像とはまるで違っていた。
恐ろしい姿を想像していたのに、玉座に座っていたのは、爽やかな青年だった。
(これが魔王? すごく優しそうだし、人の姿をしている……)
物腰柔らかな態度でクラウスに微笑む姿は、魔王とは思えないほど穏やかだった。
一方のクラウスは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あなたがカレンさんですか?」
「はい、カレンと申します。お会いできて光栄です。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「こちらこそ、急に呼び出して申し訳ありません。クラウスと結婚した方がどんな人なのか、気になってしまって」
挨拶をしながら魔王をちらりと観察する。
申し訳なさそうにふにゃりと笑っている姿には、親近感すら覚えそうだ。
「いつまでその気持ち悪い姿でいるのですか? それに、その話し方は何なんですか?」
クラウスの声と表情は冷たく、魔王に対する嫌悪感がにじみ出ていた。
「クラウスは手厳しいな。カレンさんを怖がらせないための配慮ですよ。それとも……僕がこの姿で何か不都合でもあるのですか?」
「……いいえ」
一瞬だけ、空気が張り詰めた。
クラウスもそれを感じたのだろう。それ以上、魔王に言い返すことはなかった。
どうやら魔王は、普段と違う姿らしい。
(本当に私のため? それとも、クラウスを刺激するため……?)
ティルは親子喧嘩と言っていたけれど、なかなか根が深いのかもしれない。
「立ち話も疲れるでしょう? 別室にお茶を用意してあります。そちらでゆっくりと話しましょう」
魔王がそう言って部屋の奥を指さした時、外から大きな爆発音が聞こえ、地面がぐらぐらと揺れた。
「きゃあっ! 一体なに……」
クラウスが、私をさっと抱き寄せる。
「おやおや……大変なことが起きたようだね」
「どういうことだ? おい、何を企んでいる?!」
落ち着いている魔王とは対照的に、クラウスは殺気に満ちていた。
「声を荒げるより、様子を見に行ったらどうですか? 結界管理は君の仕事でしょう?」
「……くそっ!」
こんなに焦っている姿は見たことがない。緊急事態のようだ。
「結界に何かあったのですか?」
「どうやら城周辺の結界が一部、破られたようですよ」
クラウスが答えるよりも先に、魔王が教えてくれた。
「大変じゃないですか! クラウス、私は構わないので行ってきてください」
「……分かった。すぐ戻る。なにかあったらティルを呼べ」
「はい」
私が返事をしたと同時に、クラウスの姿が消えた。
(大丈夫かしら? クラウスの結界が破られたってことは、誰かが魔王を狙っているということでしょう?)
クラウスが想定していた以上の強い魔物がいる。
そう思うと、身体が冷たくなるのを感じた。
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