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11.お披露目
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王宮の大夜会。
豪奢なシャンデリアが輝き、名だたる貴族たちが集うその中心にカタリーナはいた。
(お、落ち着かない)
身に纏っているのは、シュミット辺境伯家が用意した最高級のミッドナイトブルーのドレス。
背筋を伸ばし優雅に微笑むその姿は、夜空に輝く一等星のような気品を放っていた。
「よく似合っている」
「あ、ありがとう。ギルも素敵よ。周囲の視線がすごいもの」
「ん? あぁ、それは……皆カタリーナを見てるんだ」
「えぇ?」
周囲を見回すと、確かにこちらを見ている人々と目が合ってしまう。
見られている。そう思った途端、身体がこわばった。
「大丈夫。カタリーナがあまりに美しいから皆が見惚れてるだけだ。緊張する必要はない」
「そ、そんなこと言われると余計に構えてしまうわ」
ギルベルトはカタリーナの言葉に楽しそうに笑うと、そのままエスコートを続けた。その堂々たる振る舞いに周囲からはため息が漏れていた。
「……ふふ、そうね。あなたが隣にいてくれるんだものね」
カタリーナがようやく微笑みを返した、その時だった。
「……信じられない。辺境にいるはずのお姉様がどうしてここに?」
会場の隅から、刺すような視線と、聞き覚えのある不快な声が届く。
振り返ると、そこには顔を青ざめさせたメアリーとクルーゲ伯爵が立っていた。
彼らは、自分たちが王宮に「招待」された理由も分からぬまま、そこに立つ美しい女性が、自分たち虐げていたカタリーナあることにようやく気づいたようだった。
「お、お前……本当にカタリーナか!? なぜこんなところにいる! 辺境で野垂れ死んだのではなかったのか!」
二人が周囲の目も構わず詰め寄ってくる。そのあまりに無作法な振る舞いに、周囲の貴族たちが眉をひそめた。
「お久しぶりです伯爵。それにメアリー」
「どうしてギルベルト殿下の隣に……まさか知り合いなのか?」
伯爵も、驚愕を隠せない様子でカタリーナを凝視していた。
「お姉様! どうしてそんな大切なことを黙っていたのですか? 私たちに殿下を紹介する義務があるはずよ!」
二人の無作法な振る舞いにギルベルトの表情がドンドンと険しくなる。
「紹介する義務、ですか?」
カタリーナはかつて震えながら見上げていた父と妹を、今は真っ直ぐに見据えた。
「私の物をすべて奪い、泥水のようなスープを啜らせ、着の身着のままで辺境へ捨てたのはどこのどなただったかしら。あの時、私とあなたたちの縁は完全に切れたと思っていましたわ」
「黙れ! 親に向かってなんという口を。お前が殿下のお気に入りだというなら、まずはこの父に口を利くのが筋だろう! 早くこちらへ来い!」
伯爵は人目も憚らず、カタリーナの腕を掴もうと無作法に手を伸ばす。その目は娘への愛情など微塵もなく、公爵家という巨大な利権への飢えでギラついていた。
「そうよ、お姉様!私ならお姉様よりずっと上手に殿下を喜ばせて差し上げられるわ。そのドレスも、その場所も、本当は私にふさわしいものなのよ!」
メアリーの剥き出しの嫉妬と、父の浅ましい強欲。
その醜悪な親子に、周囲の貴族たちは軽蔑の視線を隠そうともしなかった。
カタリーナが冷ややかな視線を向けると、そこへ一人の紳士が静かに歩み寄った。
「お引き取り願おうか。私の娘を、これ以上不快にさせないでいただきたい」
「まあ、お父様!」
現れたのは、シュミット辺境伯だ。カタリーナは満面の笑みを浮かべた。
父とメアリーは、国の重鎮である辺境伯の登場に一瞬で縮み上がった。
豪奢なシャンデリアが輝き、名だたる貴族たちが集うその中心にカタリーナはいた。
(お、落ち着かない)
身に纏っているのは、シュミット辺境伯家が用意した最高級のミッドナイトブルーのドレス。
背筋を伸ばし優雅に微笑むその姿は、夜空に輝く一等星のような気品を放っていた。
「よく似合っている」
「あ、ありがとう。ギルも素敵よ。周囲の視線がすごいもの」
「ん? あぁ、それは……皆カタリーナを見てるんだ」
「えぇ?」
周囲を見回すと、確かにこちらを見ている人々と目が合ってしまう。
見られている。そう思った途端、身体がこわばった。
「大丈夫。カタリーナがあまりに美しいから皆が見惚れてるだけだ。緊張する必要はない」
「そ、そんなこと言われると余計に構えてしまうわ」
ギルベルトはカタリーナの言葉に楽しそうに笑うと、そのままエスコートを続けた。その堂々たる振る舞いに周囲からはため息が漏れていた。
「……ふふ、そうね。あなたが隣にいてくれるんだものね」
カタリーナがようやく微笑みを返した、その時だった。
「……信じられない。辺境にいるはずのお姉様がどうしてここに?」
会場の隅から、刺すような視線と、聞き覚えのある不快な声が届く。
振り返ると、そこには顔を青ざめさせたメアリーとクルーゲ伯爵が立っていた。
彼らは、自分たちが王宮に「招待」された理由も分からぬまま、そこに立つ美しい女性が、自分たち虐げていたカタリーナあることにようやく気づいたようだった。
「お、お前……本当にカタリーナか!? なぜこんなところにいる! 辺境で野垂れ死んだのではなかったのか!」
二人が周囲の目も構わず詰め寄ってくる。そのあまりに無作法な振る舞いに、周囲の貴族たちが眉をひそめた。
「お久しぶりです伯爵。それにメアリー」
「どうしてギルベルト殿下の隣に……まさか知り合いなのか?」
伯爵も、驚愕を隠せない様子でカタリーナを凝視していた。
「お姉様! どうしてそんな大切なことを黙っていたのですか? 私たちに殿下を紹介する義務があるはずよ!」
二人の無作法な振る舞いにギルベルトの表情がドンドンと険しくなる。
「紹介する義務、ですか?」
カタリーナはかつて震えながら見上げていた父と妹を、今は真っ直ぐに見据えた。
「私の物をすべて奪い、泥水のようなスープを啜らせ、着の身着のままで辺境へ捨てたのはどこのどなただったかしら。あの時、私とあなたたちの縁は完全に切れたと思っていましたわ」
「黙れ! 親に向かってなんという口を。お前が殿下のお気に入りだというなら、まずはこの父に口を利くのが筋だろう! 早くこちらへ来い!」
伯爵は人目も憚らず、カタリーナの腕を掴もうと無作法に手を伸ばす。その目は娘への愛情など微塵もなく、公爵家という巨大な利権への飢えでギラついていた。
「そうよ、お姉様!私ならお姉様よりずっと上手に殿下を喜ばせて差し上げられるわ。そのドレスも、その場所も、本当は私にふさわしいものなのよ!」
メアリーの剥き出しの嫉妬と、父の浅ましい強欲。
その醜悪な親子に、周囲の貴族たちは軽蔑の視線を隠そうともしなかった。
カタリーナが冷ややかな視線を向けると、そこへ一人の紳士が静かに歩み寄った。
「お引き取り願おうか。私の娘を、これ以上不快にさせないでいただきたい」
「まあ、お父様!」
現れたのは、シュミット辺境伯だ。カタリーナは満面の笑みを浮かべた。
父とメアリーは、国の重鎮である辺境伯の登場に一瞬で縮み上がった。
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