辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯

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12.新たな家族

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「お、お父様だと? し、シュミット辺境伯閣下! い、今、娘と仰いましたか……? それはいったい誰のことで……」

 伯爵が慌てて辺境伯に詰め寄ると、彼は紳士的な笑みを浮かべた。

「その通り。私は先日、カタリーナ嬢を我がシュミット辺境伯家の正式な養子として迎えた。今、彼女の父親はこの私だ」

 会場にどよめきが広がる。

「あのシュミット辺境伯の養子?」
「あの娘は誰なんだ?」
「ギルベルト殿下も隣にいるということは、かなりの大物なんじゃ……」
「でもあんな美しい娘なんていたか? パーティーで見かけたことがない」

 周囲のざわめきに、メアリーが苛立ちながら顔を真っ赤にした。

「そんな……っ、おかしいわ! 私の方が、メアリーの方が辺境伯家の娘にふさわしいわ! こんな、家族を騙して逃げ出すような女より、私の方が……!」

 嫉妬に狂ったメアリーの叫びを、冷徹な声が遮った。

「誰が家族を騙したと?」

 ギルベルトの低い声が会場に響く。
 彼は守るようにカタリーナの腰を抱き寄せ、氷のような視線で伯爵親子を射抜いた。

「シュミット辺境伯には感謝している。カタリーナの価値を正当に評価し、盾となってくれたことに。……お前たちは彼女をぞんざいに扱っていたというのに」

 ギルベルトの声が、会場全体に響き渡る。

「カタリーナ・シュミットは辺境の地で薬草の栽培に尽力し、魔獣被害に苦しむ多くの民を救ったのだ。その功績を持って、シュミット辺境伯家の養子となり、そして俺の伴侶となった。また、本日より俺は新国王より公爵位を賜った。これからも国のため、王のために尽くすと誓おう!」

「ギルベルト公爵閣下は素晴らしい!」
「公爵夫人も聖女のようじゃないか!」
「なんておめでたいの!」

 会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

 その熱狂の渦中で、伯爵とメアリーだけが、冷や水を浴びせられたかのように立ち尽くしていた。
 さっきまで「自分の手柄」にしようと鼻息を荒くしていた伯爵は、ガタガタと膝を震わせ、顔面を土気色に変えている。
 メアリーもまた屈辱で唇を噛み締め、惨めに顔を歪めていた。

 そうして歓声がおさまると、ギルはメアリーと伯爵を睨みつけた。

「さて、婚姻のため妻の元実家を調査したわけだが……お前たちが彼女に強いた虐待、領民への不正な課税、横領……すべて調査済みだ。貴族にあるまじき行為、陛下もいたくお怒りだ」

 ギルベルトの言葉に、伯爵とメアリーの顔から血の気が引いた。

「殿下、いや、こ、公爵閣下、それは何かの間違いで……!」
「黙れ。本日付でクルーゲ伯爵家は爵位を剥奪、領地は没収。家督の取り潰しが決定した。お前たちは二度と、カタリーナの前に姿を見せることは許されない」

 兵士たちが駆け寄り、呆然とする父とメアリーを引きずっていく。

「嘘よ!お姉様、助けて!」

 叫ぶメアリーの声も、祝賀会の華やかな音楽にかき消されていった。

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