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愛されSubは尽くしたい
二度目のプレイ2
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「今から誠吾さんの言うこと、一つだけ何でも聞く」
ハイリスクな賭けだった。深見が本気で汐を突き放したいと思っているのなら、拒否の意思をCommandで示すだろう。
無謀な賭けをしている訳じゃない。
──今までだって。僕に会いたくないなら、二度とここへ来ないことだって出来たはずだし……。
深見を信頼しているからこそ、汐は行動に出た。
「出来なかったら……誠吾さんに付き合ってってもう言わない。その代わり、きちんとCommandを聞けたら、僕とプレイをする」
「……Commandを出さない選択肢だって」
「それならずっとここで待つ。誠吾さんがCommandをくれるまで」
「……めちゃくちゃだな」
絆されるというよりは、呆れたような溜め息を吐いた。Domである深見に強制は出来ない。言葉で感情が伝わらないなら、目に見える形で好きという気持ちを渡したい。
赤い絨毯の上に尻をつき、深見を見上げる。視線がようやく合うと、深見の目からGlareが放たれる。Commandを繰り出す合図に、背筋がしなる。
「Kiss」
「……えっ?」
──聞き、間違いじゃない……Kissって。
思いもよらないCommandが飛んできて、汐は何度も瞬きをする。
「出来ないなら、プレイは──」
「できる……するから」
深見に近づくために、汐は立ち上がろうとした。足が痺れていてもたつき、転びそうになる。深見は「どこへ」の指示をくれない。Kneelを取っている今、一番近くにキス出来るのは、靴の先だ。
汐の心に躊躇いが生まれる。
好意を証明するのなら、そこへ口付けるべきだろうか。それとも靴を脱がせてから?
汐は困惑の表情を浮かべて、深見の顔を見た。
──『頭の中でいろいろと考えているだろう。拙くてもいい。僕の指示にだけ従いなさい』
深見の言葉が脳内で蘇り、心の防壁が崩れ落ちた。指摘された通り、どのDomに対しても、汐は命令に従う前に立ち止まる。癖のようなものだった。でも、今は。
──心の底から、あなたに尽くしたい。
従いたい。触れたい。奪いたい。
膝の上へ乗り、汐は深見の唇へ視線を注いだ。
「……ん」
汐の行為を褒めるように、Glareの濃度が増す。周囲の景色など目に入らない。自らが決めた、キスのしたい場所へ、汐は初めてのキスをした。
……────。
「どうして手の甲にキスを?」
上着をかけながら、深見が問いかける。汐は真っ赤な顔を隠すために、プレイルームのベッドでうつ伏せになっていた。
「い、言わない……!」
じたばたと打ちつけた足が、スプリングで軽やかに跳ね戻ってくる。
「聞きたい。Say」
──あ……ずるい。
「いつか好きになってもらえたときに、誠吾さんからキスして欲しいから」
深見が強めのGlareを出していたこと、Commandを使われると思っていなくて油断していたこと。何より深見に心を許しているから、するりと本音が出てしまった。
「も、もうっ。言うつもりなかった! ……誠吾さん、どうしたの?」
乙女みたいな理由を、馬鹿らしいと思っているだろうと。どうやら内心そうではないらしい。口元を手で覆いながら、斜め下へ汐から視線を外している。
「……若いな。そういうところ」
深見は感心したように呟く。淡いネオンの光で、表情はぼやけてよく分からなかった。
「……嫌だった? 手にキスするの」
「嫌だったらGlareもあげていないし、ここにも来ていない」
汐は今、半分腰が抜けてしまった状態だ。久しぶりに大量のGlareを間近で浴びて、キスをした直後立てなくなってしまった。抱えられ、プレイルームに連れて来られたのだ。
一応、賭けには成功したことになるけれど。
──もう、好きって認めちゃえばいいのに。
深見の行動にも言葉にも、汐に対する甘い感情が滲み出ている。これは好意に基づくものなんじゃないだろうか。汐には確信があった。
「まだ立てないか?」
「……ん。もう、だいじょうぶ」
身体の芯が抜けてしまったみたいに、ふにゃりとなる。支えている手足はふるふると子鹿のように震え、ぽすっと顔から柔らかいベッドに着地する。深見は苦笑し、汐の身体を後ろから抱き締めた。
「僕のせいだな。汐君はGlareが効きにくい体質だと思っていたから」
「え、そうだけど?」
「気付いてない? 初めて会ったときより、Glareは強く出してない」
「あ……」
深見が汐の肩に頬を寄せる。より身体が密着し、汐は緊張で全身を強張らせた。
Glareの細かい強弱は、Subの汐には分からない。ただ、客観的に見て、深見の出すGlareのコントロールは的確だと思える。
「……せっかく、誠吾さんに会えたのに。プレイ出来ない」
しおらしくしゅんとなる汐の両腕を、深見は胸の前へ持ってくるよう指示する。
「Stay. そう、いい子だね」
「な、なに……」
汐の細い手首を、深見は片手でぎゅっと纏める。そうして、外周を指でなぞった。意図が分からず、汐は困ったように仰いだ。
「汐君のここはリボンで縛られてる。それほど強く結んでいないから、汐君の力で簡単に解ける」
目に見えないリボンを、まるで実物が見えているかのように、深見は淡々と説明をする。
「あ……ん」
シャツの上を深見の手が這い、汐は身を捩った。こそばゆいというよりは、閉ざした官能を呼び起こす触り方に、息が乱される。やがて、内側でつんと尖り始めた箇所を、深見の指先に見つけられる。
「ん……!」
鼻から抜けるような甘い嬌声が、部屋の中に響いた。自ら発したものなのに、いやらしく聞こえてしまう。
StayのCommandを受けているため、汐は言葉で身体を拘束されている状態だ。優しい愛撫につい不安になり、深見のほうへ振り返った。
「今日は、いたいこと……する?」
「しないよ。汐君は苦手?」
少し迷った後に、汐は素直にこくりと頷いた。深見は嫌な顔をせず、正直に告白した汐を褒めてくれる。
ハイリスクな賭けだった。深見が本気で汐を突き放したいと思っているのなら、拒否の意思をCommandで示すだろう。
無謀な賭けをしている訳じゃない。
──今までだって。僕に会いたくないなら、二度とここへ来ないことだって出来たはずだし……。
深見を信頼しているからこそ、汐は行動に出た。
「出来なかったら……誠吾さんに付き合ってってもう言わない。その代わり、きちんとCommandを聞けたら、僕とプレイをする」
「……Commandを出さない選択肢だって」
「それならずっとここで待つ。誠吾さんがCommandをくれるまで」
「……めちゃくちゃだな」
絆されるというよりは、呆れたような溜め息を吐いた。Domである深見に強制は出来ない。言葉で感情が伝わらないなら、目に見える形で好きという気持ちを渡したい。
赤い絨毯の上に尻をつき、深見を見上げる。視線がようやく合うと、深見の目からGlareが放たれる。Commandを繰り出す合図に、背筋がしなる。
「Kiss」
「……えっ?」
──聞き、間違いじゃない……Kissって。
思いもよらないCommandが飛んできて、汐は何度も瞬きをする。
「出来ないなら、プレイは──」
「できる……するから」
深見に近づくために、汐は立ち上がろうとした。足が痺れていてもたつき、転びそうになる。深見は「どこへ」の指示をくれない。Kneelを取っている今、一番近くにキス出来るのは、靴の先だ。
汐の心に躊躇いが生まれる。
好意を証明するのなら、そこへ口付けるべきだろうか。それとも靴を脱がせてから?
汐は困惑の表情を浮かべて、深見の顔を見た。
──『頭の中でいろいろと考えているだろう。拙くてもいい。僕の指示にだけ従いなさい』
深見の言葉が脳内で蘇り、心の防壁が崩れ落ちた。指摘された通り、どのDomに対しても、汐は命令に従う前に立ち止まる。癖のようなものだった。でも、今は。
──心の底から、あなたに尽くしたい。
従いたい。触れたい。奪いたい。
膝の上へ乗り、汐は深見の唇へ視線を注いだ。
「……ん」
汐の行為を褒めるように、Glareの濃度が増す。周囲の景色など目に入らない。自らが決めた、キスのしたい場所へ、汐は初めてのキスをした。
……────。
「どうして手の甲にキスを?」
上着をかけながら、深見が問いかける。汐は真っ赤な顔を隠すために、プレイルームのベッドでうつ伏せになっていた。
「い、言わない……!」
じたばたと打ちつけた足が、スプリングで軽やかに跳ね戻ってくる。
「聞きたい。Say」
──あ……ずるい。
「いつか好きになってもらえたときに、誠吾さんからキスして欲しいから」
深見が強めのGlareを出していたこと、Commandを使われると思っていなくて油断していたこと。何より深見に心を許しているから、するりと本音が出てしまった。
「も、もうっ。言うつもりなかった! ……誠吾さん、どうしたの?」
乙女みたいな理由を、馬鹿らしいと思っているだろうと。どうやら内心そうではないらしい。口元を手で覆いながら、斜め下へ汐から視線を外している。
「……若いな。そういうところ」
深見は感心したように呟く。淡いネオンの光で、表情はぼやけてよく分からなかった。
「……嫌だった? 手にキスするの」
「嫌だったらGlareもあげていないし、ここにも来ていない」
汐は今、半分腰が抜けてしまった状態だ。久しぶりに大量のGlareを間近で浴びて、キスをした直後立てなくなってしまった。抱えられ、プレイルームに連れて来られたのだ。
一応、賭けには成功したことになるけれど。
──もう、好きって認めちゃえばいいのに。
深見の行動にも言葉にも、汐に対する甘い感情が滲み出ている。これは好意に基づくものなんじゃないだろうか。汐には確信があった。
「まだ立てないか?」
「……ん。もう、だいじょうぶ」
身体の芯が抜けてしまったみたいに、ふにゃりとなる。支えている手足はふるふると子鹿のように震え、ぽすっと顔から柔らかいベッドに着地する。深見は苦笑し、汐の身体を後ろから抱き締めた。
「僕のせいだな。汐君はGlareが効きにくい体質だと思っていたから」
「え、そうだけど?」
「気付いてない? 初めて会ったときより、Glareは強く出してない」
「あ……」
深見が汐の肩に頬を寄せる。より身体が密着し、汐は緊張で全身を強張らせた。
Glareの細かい強弱は、Subの汐には分からない。ただ、客観的に見て、深見の出すGlareのコントロールは的確だと思える。
「……せっかく、誠吾さんに会えたのに。プレイ出来ない」
しおらしくしゅんとなる汐の両腕を、深見は胸の前へ持ってくるよう指示する。
「Stay. そう、いい子だね」
「な、なに……」
汐の細い手首を、深見は片手でぎゅっと纏める。そうして、外周を指でなぞった。意図が分からず、汐は困ったように仰いだ。
「汐君のここはリボンで縛られてる。それほど強く結んでいないから、汐君の力で簡単に解ける」
目に見えないリボンを、まるで実物が見えているかのように、深見は淡々と説明をする。
「あ……ん」
シャツの上を深見の手が這い、汐は身を捩った。こそばゆいというよりは、閉ざした官能を呼び起こす触り方に、息が乱される。やがて、内側でつんと尖り始めた箇所を、深見の指先に見つけられる。
「ん……!」
鼻から抜けるような甘い嬌声が、部屋の中に響いた。自ら発したものなのに、いやらしく聞こえてしまう。
StayのCommandを受けているため、汐は言葉で身体を拘束されている状態だ。優しい愛撫につい不安になり、深見のほうへ振り返った。
「今日は、いたいこと……する?」
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少し迷った後に、汐は素直にこくりと頷いた。深見は嫌な顔をせず、正直に告白した汐を褒めてくれる。
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