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愛されSubは尽くしたい
初めてのおねだり1
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「ここが汐君の一番恥ずかしいところ?」
「ちがう。下、も……」
「手が震えてる。僕には見せられない? それとも、わざとゆっくり焦らして……たくさん苛めて欲しいのかな」
耳輪にある軟い骨を歯で挟まれて、汐は「ひっ」と短い悲鳴を漏らす。痛みの糧にもならない、ほんの小さな刺激が、腹の底のぞくぞくする部分を増幅させる。
「Rewardよりお仕置きのほうが好き?」
「いや……」
意地悪に囁かれて、汐は深見の唇とは反対へ顔を背けた。汐が答えに焦れるほど、深見の表情には愉悦が滲む。深見のGlareにより、満たされない苛立ちから解放され、荒んでいた心は凪を取り戻している。深見は汐を完全に屈服させたい訳ではない。プレイを通じて、深見の考えや人柄に触れ、汐は少しずつ理解している。自分自身のSub性との向き合い方を。
「この部屋の中で、僕だけに教えて」
「嫌いに……ならない? 変だ、って。思わない?」
「ああ。教えてくれたら、汐君のことをもっと好きになる」
その言葉に勝るCommandは存在しない。最後まで身につけていた下着を脱いでしまうと、尻を高く上げた。
「誠吾さんに、初めてお仕置きしてもらったとき……。痛くて、泣いて、でも。すごく、気持ちよかった。……だから、今度は三回、思いっきりお尻を打って欲しい」
「きちんとお強請り出来て偉いね。分かった」
ベッドから離れ、深見は鏡台の袖口から一本の鞭を手に取り戻ってきた。黒々として鱗のように編まれた立派なものだ。深見は上等なそれを、汐の背に滑らせていく。滑らかでいて冷たい皮の感触に、汐は息を飲んだ。ただの道具のはずが、深見が操ればまるで生きている蛇のように肌を這う。一番のお気に入りなのか、手にしているそれを「この子」と呼んだ。
「プレイで使うのは初めてなんだ。これより痛みの少ない鞭で試すんだけど、ここまで耐えられるSubがいなくて」
深見は至極嬉しそうに、鞭を振るった経歴を語る。初めて尻を打ってもらったときは素手で、叫び出すほどに痛みにのたうち回った。いい素材の鞭を束ねると、汐の首に巻きつけて白い肌を緩く締める。
「く……っ」
「もし三回を超えて打ちそうになったら、セーフワードをかけて。……僕も、途中で踏みとどまれるかどうか、わからない」
汐の被虐心を昂らせるためのブラフだと思った。けれど、放出されるGlareが乱れている。美しく研ぎ澄まされて洗練された、ハイランクのGlareが。肩越しに振り返って見た深見の瞳に、赤い閃光が宿っているようだった。いつでも主導権を握る深見が、弱音らしい言葉を吐いているなんて。
深見はベッドから降りて距離をとった。いつあの鋭い鞭で打たれるのだろう。無意識に掲げた尻が左右に揺れると、深見に羞恥を煽られる。
「待ち遠しいのは分かるけど。Stay. ……そう。Goodboy」
ヒュン、と振るった鞭で空気を裂く音が後ろから聞こえ、汐は緊張で全身を強張らせた。
「……はっ」
天井と床が一瞬で引っくり返ったのかと思った。いや違う。反射的に汐は打たれたばかりの箇所を、庇っていた。ぎちぎちと歯を食いしばるが、あと二発残っているのだと考えると意識が遠くなる。汐は堪らず嗚咽を溢した。
「や……やだ。いたぁ……っ。も、いやぁ……」
後ろが熱くて痛い。「やだ」と「嫌」は確かに本音だけれど、奥底にあるのはもっと別の感情だ。二発目が一番怖い。汐は啜り泣きながら、臀部を再び深見の眼前に晒した。
「泣き顔がすごく可愛い。演技じゃないんだ。汐君は健気で可愛い、最高のSubだね」
さっきまでよがり泣くほどの鞭を振るった当人の声とは思えない。低い声で褒められて、下腹が熱を帯び、ずしんと重くなる。
「あああぁっ!!」
完全に開ききった喉から、一際大きな悲鳴が飛び出した。ひっ、ひ……と少量でしか息を吸えない。くっきりと痕がついているだろう場所を鷲掴みにされ、汐は蕩けるような声を出した。
「んっ、ん……あ」
「痛みの中で快感を探しているのかな。……本当に、すごくいい。僕にはもったいないくらいの、賢くて素敵で……最高のSubだ」
──僕……本当に。Subでよかった……。
流している涙は、辛いから溢れているものじゃない。自分自身で否定し続けていた性を、最愛の人が欲してくれている。
深見は汐の望み通り、本気で三回打ち終えた。
「Good. すごくいい子だったね」
「ん……ん。誠吾さ……もっとよしよしってして? 汐の頭たくさんなでなでして……」
とろんとした瞳で、深見を見上げる。足の間で力を抜いた汐は、深見の胸に背中を預けた。どのプレイの後よりも、汐の心と身体は満たされていた。心地のよい浮遊感に捕らわれたまま、うりうりと深見に甘える。ほわほわと多幸感に包まれて、難しい思考は泡のように溶けてしまう。Subspaceへと入るには、信頼関係が深いこと、Domの指示や力量、そして何よりもSub自身の才能が必要だ。
「あっ……。そこ、は……やらぁ……っ」
「気持ちよくない? 腰、浮かせてるけど」
深見の手が頭から下りてきて、悪戯に胸の突起を摘まむ。むず痒い感覚から逃れたくて、汐はいやいやと首を振った。Subspaceの最中にいる汐は、小さな抵抗すら出来ない。
深見は片手だけで、汐の膝を簡単に割った。
「誠吾さん……お尻、ひりひりする」
「待ってて。痕が残らないように手当をする」
シーツと擦れると、火傷したように鈍く痛む。薬用のジェルを手に取った深見が、尻を向けるように言った。
「ひゃ……ん」
冷感タイプのジェルが体温を吸いながら、肌の上へ蕩けていく。狭間に垂れたジェルを指で掬うときに、奥の窄まりを掠め、不埒なことを考えてしまう。
──抱いては……くれないのかな。
過去のプレイの際に性器には触れるものの、お互いにセックスには移らない。服の下で深見の張り詰めているものを目にしたことはあるが、実際のところ、本心は分からない。
「ちがう。下、も……」
「手が震えてる。僕には見せられない? それとも、わざとゆっくり焦らして……たくさん苛めて欲しいのかな」
耳輪にある軟い骨を歯で挟まれて、汐は「ひっ」と短い悲鳴を漏らす。痛みの糧にもならない、ほんの小さな刺激が、腹の底のぞくぞくする部分を増幅させる。
「Rewardよりお仕置きのほうが好き?」
「いや……」
意地悪に囁かれて、汐は深見の唇とは反対へ顔を背けた。汐が答えに焦れるほど、深見の表情には愉悦が滲む。深見のGlareにより、満たされない苛立ちから解放され、荒んでいた心は凪を取り戻している。深見は汐を完全に屈服させたい訳ではない。プレイを通じて、深見の考えや人柄に触れ、汐は少しずつ理解している。自分自身のSub性との向き合い方を。
「この部屋の中で、僕だけに教えて」
「嫌いに……ならない? 変だ、って。思わない?」
「ああ。教えてくれたら、汐君のことをもっと好きになる」
その言葉に勝るCommandは存在しない。最後まで身につけていた下着を脱いでしまうと、尻を高く上げた。
「誠吾さんに、初めてお仕置きしてもらったとき……。痛くて、泣いて、でも。すごく、気持ちよかった。……だから、今度は三回、思いっきりお尻を打って欲しい」
「きちんとお強請り出来て偉いね。分かった」
ベッドから離れ、深見は鏡台の袖口から一本の鞭を手に取り戻ってきた。黒々として鱗のように編まれた立派なものだ。深見は上等なそれを、汐の背に滑らせていく。滑らかでいて冷たい皮の感触に、汐は息を飲んだ。ただの道具のはずが、深見が操ればまるで生きている蛇のように肌を這う。一番のお気に入りなのか、手にしているそれを「この子」と呼んだ。
「プレイで使うのは初めてなんだ。これより痛みの少ない鞭で試すんだけど、ここまで耐えられるSubがいなくて」
深見は至極嬉しそうに、鞭を振るった経歴を語る。初めて尻を打ってもらったときは素手で、叫び出すほどに痛みにのたうち回った。いい素材の鞭を束ねると、汐の首に巻きつけて白い肌を緩く締める。
「く……っ」
「もし三回を超えて打ちそうになったら、セーフワードをかけて。……僕も、途中で踏みとどまれるかどうか、わからない」
汐の被虐心を昂らせるためのブラフだと思った。けれど、放出されるGlareが乱れている。美しく研ぎ澄まされて洗練された、ハイランクのGlareが。肩越しに振り返って見た深見の瞳に、赤い閃光が宿っているようだった。いつでも主導権を握る深見が、弱音らしい言葉を吐いているなんて。
深見はベッドから降りて距離をとった。いつあの鋭い鞭で打たれるのだろう。無意識に掲げた尻が左右に揺れると、深見に羞恥を煽られる。
「待ち遠しいのは分かるけど。Stay. ……そう。Goodboy」
ヒュン、と振るった鞭で空気を裂く音が後ろから聞こえ、汐は緊張で全身を強張らせた。
「……はっ」
天井と床が一瞬で引っくり返ったのかと思った。いや違う。反射的に汐は打たれたばかりの箇所を、庇っていた。ぎちぎちと歯を食いしばるが、あと二発残っているのだと考えると意識が遠くなる。汐は堪らず嗚咽を溢した。
「や……やだ。いたぁ……っ。も、いやぁ……」
後ろが熱くて痛い。「やだ」と「嫌」は確かに本音だけれど、奥底にあるのはもっと別の感情だ。二発目が一番怖い。汐は啜り泣きながら、臀部を再び深見の眼前に晒した。
「泣き顔がすごく可愛い。演技じゃないんだ。汐君は健気で可愛い、最高のSubだね」
さっきまでよがり泣くほどの鞭を振るった当人の声とは思えない。低い声で褒められて、下腹が熱を帯び、ずしんと重くなる。
「あああぁっ!!」
完全に開ききった喉から、一際大きな悲鳴が飛び出した。ひっ、ひ……と少量でしか息を吸えない。くっきりと痕がついているだろう場所を鷲掴みにされ、汐は蕩けるような声を出した。
「んっ、ん……あ」
「痛みの中で快感を探しているのかな。……本当に、すごくいい。僕にはもったいないくらいの、賢くて素敵で……最高のSubだ」
──僕……本当に。Subでよかった……。
流している涙は、辛いから溢れているものじゃない。自分自身で否定し続けていた性を、最愛の人が欲してくれている。
深見は汐の望み通り、本気で三回打ち終えた。
「Good. すごくいい子だったね」
「ん……ん。誠吾さ……もっとよしよしってして? 汐の頭たくさんなでなでして……」
とろんとした瞳で、深見を見上げる。足の間で力を抜いた汐は、深見の胸に背中を預けた。どのプレイの後よりも、汐の心と身体は満たされていた。心地のよい浮遊感に捕らわれたまま、うりうりと深見に甘える。ほわほわと多幸感に包まれて、難しい思考は泡のように溶けてしまう。Subspaceへと入るには、信頼関係が深いこと、Domの指示や力量、そして何よりもSub自身の才能が必要だ。
「あっ……。そこ、は……やらぁ……っ」
「気持ちよくない? 腰、浮かせてるけど」
深見の手が頭から下りてきて、悪戯に胸の突起を摘まむ。むず痒い感覚から逃れたくて、汐はいやいやと首を振った。Subspaceの最中にいる汐は、小さな抵抗すら出来ない。
深見は片手だけで、汐の膝を簡単に割った。
「誠吾さん……お尻、ひりひりする」
「待ってて。痕が残らないように手当をする」
シーツと擦れると、火傷したように鈍く痛む。薬用のジェルを手に取った深見が、尻を向けるように言った。
「ひゃ……ん」
冷感タイプのジェルが体温を吸いながら、肌の上へ蕩けていく。狭間に垂れたジェルを指で掬うときに、奥の窄まりを掠め、不埒なことを考えてしまう。
──抱いては……くれないのかな。
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