最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★港町ジャネスコ編★

201:カンニング

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「ただいま~。……え、何あれ?」

「ただい……、ま?  ……カービィ、何しているの??」

「二人とも早かったな。実は……、我が帰ってきた時からずっと、あの状態なのだ。話し掛けても触れても、何の反応もない」

   午後三時頃、俺とグレコは港町ジャネスコへと戻った。
   あまりテトーンの樹の村に長居すると、恐ろしい船旅に出掛ける事が嫌になりそうだったので、早く帰ろうと俺が提案したのだ。
   最後に母ちゃんに会って、皮袋に入った干しルブーベリーの実を沢山貰った。
   母ちゃんの心配そうな笑顔を見て俺は、絶対に無事に帰ってくるぞ!  と、心に誓ったのであった。

   ……そして今。

   隠れ家オディロンの宿泊部屋にて、俺とグレコは目の前の光景に首を傾げている。
   大きなベッドにゴロンと寝転がっているギンロの向こう側、小さなベッドの上で座禅を組み、目をカッ!  と開いたままのカービィがそこにはいた。
   それも、ただ座禅を組んでいるわけではなさそうだ。
   こう、身体中から、七色の光のオーラというか、モワモワとした光が放たれているのだ。

「何?  すっごい魔力なんだけど……??」

   ほほう、これがカービィの持つ魔力なんだな。

   ユークの時もそうだったが、魔力というものは、大きければ大きいほど、体外に放出された際に具現化するものなのだと、後でカービィに教えてもらった。
   即ち、対峙した相手が強大な魔力を放出している状態ならば、魔力が全くない俺でも目にする事が出来る、という訳なのだ。

   七色のオーラを纏ったカービィは、全身の毛をサワサワと揺らしながら、瞬きすらせず、一心不乱に手元の本を見つめている。
   しかも、手を使っていないというのに、本のページがゆっくりと独りでにめくられていくのだ。

   なんていうかこれ……、ホラーじゃんか、こえぇ……

   妙な寒気を感じる俺。

「ずっとって……、お昼前からってこと?」

「うむ。昼餉も口にせず、ずっとあの状態なのだ」

   マジか……
   なんだろうな、一種のトランス状態、とか?
   見た感じ、勉強をしているように見えるのだけども。

   無言のまま、カービィを見つめること数分。
   パラパラと独りでにめくられていた本のページがなくなって、パタンと背表紙が閉じられた。
   それと同時に、カービィを取り巻く七色のオーラもす~っと消えて、見開いたままだったカービィの目が、パチパチと瞬きをした。

「か……、カービィ?  大丈夫??」

   グレコが声をかける。

「ん?  あ、グレコさん。モッモにギンロも、もう帰ってたのか♪」

   うわぁ~、まるで何事もなかったかのようなその言葉が逆に恐怖だわ~。

「カービィ、お主……。いったい何をしておったのだ?  かれこれ半日はそうしておったぞ」

   ギンロよ、半日は言い過ぎなんじゃないかい?
   まだ時間の概念ちゃんと理解してないなこいつ。

「何っ!?  もうそんなに時間が経ったのか!??  なんて分厚い本なんだ」

   手元の大きな本に目を落とすカービィ。
   勿論それは、ノリリアから渡された、世界魔法史大全集である。

「えっと……、勉強してたの?」

「ん?  あぁ……。普通に読んでちゃ覚えられそうにもなかったからさ。ちょ~っとズルしちゃおうかと」

   いつも通り、ヘラヘラと答えるカービィ。

「ズルって、何するつもりなのよ?」

「えっとぉ~……、分かりやすく言うとだな、頭の中に魔法で強制的に記憶を書き足したんだ!」

   ほ~、なるほど……、わからんわ。

「よく分からないけど……、大丈夫なの?  そんな事して……。ズルしたってノリリアにバレないのかしら??」

   バレるバレない以前に、体に何か副反応が出ないかどうかの方を心配しようよグレコ。

「たぶん大丈夫だ。これはおいらが独自に編み出した魔法だからな。この魔法のおかげで、幾度となくピンチを乗り切ってきたんだ!」

   ……ふ~ん、要はカンニングって事かしらね?
   頭の中に記憶を足す魔法が本当にズルなのかどうかは、俺には分からないけど、なんとな~くだけど、フェアじゃない気がする。

「しかし、そのような事をして、お主の頭は大丈夫なのか?  これまでもそうしてきたと言うが……。故にそのような事になっているのではないのか??」

   うんうん、そうだよねギンロ、心配だよね。
   けど何故だろう、そのような事、って部分がすごく引っかかるよね。
   ギンロはいったい、カービィをどう思っているのだろうな?
   俺と同じように、カービィは頭がおかしいと感じていたのだろうか……

「ん~、どうなんだろうな?  だいたいこれで覚えた事は数日後にはスッキリなくなっている事が多いな。残っている記憶もあるけど、なんかこう曖昧だし……。けど別に死ぬわけじゃねぇからさ、大丈夫大丈夫♪」

   恐ろしい一夜漬け方法だな。
   絶対それのせいで、そのような事、になっているんですよカービィ君は。

   すると、カービィのお腹が、キュルキュル~っと鳴った。
   無理もない、昼食も食べずに、カンニングペーパーを頭の中に作っていたんだからね。

「……おいら、腹減ったな~」

「我も、少し……、肉が食いたい」

   おぉ、珍しいね、ギンロがお肉だなんて。
   ……まぁ、見た目的にはその方が正しいんだけどね。

「じゃあ、特にする事もないし、外にお茶しに行く?」

「いいわね、そうしましょ♪」

「やっふ~♪  昼飯昼飯~♪」

「デザートはケーキにしようぞ♪」

   ……皆さん、我々パーティーの全財産は今、50500センスですよ~。
   明日のご飯のことも考えて、なるべく安いお店でお願いしますよ~。






   俺の希望通り……、というか忠告通り、俺たちは小さなカフェに入って、ギンロは骨つき肉とケーキを、グレコと俺は紅茶とクッキーを、カービィは遅めのランチ定食を頼んだけれど、お支払いは1500センスで済んだ。
   
「ピタラス諸島では金なんか使わなくていいと思うぞ。商船は三食ついてるからな。あ~でも……、島の探索に出掛けるなら、その間の食事はどうするんだろうなぁ?」

「それは、明日、ノリリアに聞いてみましょう。ザッと探索プロジェクトの話は聞いたけど、細かいとこまではまだ分からないものね」

「我は、何も食せずとも、三日はもつ」

「え~、それは無理だよ~。僕、すぐお腹空くもん。まぁ、僕の鞄の中にいろいろ入ってるから、食料の心配はしなくていいんじゃない?」

「それもそうね。明日、残りのお金で軽食でも買っておきましょ。ここからは何が起きるかわからないもの」

「そうだな、用心するに越した事はねぇ」

「うむ。では、甘い物も少し頼みたい」

「オッケー。じゃあ明日は、あんまり予定は溜め込まずに、とりあえず軽食の買い出しだけして、後は各々自由に過ごそうよ」

「そうね。もうこの町ともお別れだし……、最後くらいゆっくりしましょ♪」

   そんな事を話しながら、俺たち四人は宿屋へと歩いた。
   明後日にはもう、俺たちは海の上にいる。
   この整った石畳の地面とは、しばしのお別れだな。

   暮れ始めた港町ジャネスコの街並みを、オレンジ色に染まるその景色を、俺はしっかりと目に焼き付けたのだった。
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