Bランク冒険者の転落

しそみょうが

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《赤銅の鉾》は依頼をひとつ片付けると、たいてい2、3日休みを取る。そういう時の連中は賭場か馴染みの娼館に入り浸っているので必然的にライルの休息日だ。

と言っても主の『命令』で外出を禁じられているライルは、冒険者ギルドに併設された宿の1室で過ごすより他はない。午前中はメンバー達の装備の手入れをし、買い置かれたパンなどを口に入れた後は、素振りなどの鍛錬をして部屋に備えられた浴室で風呂に浸かる。

ハンク達は屑ではあるが、腐ってもAランクのパーティーで、こんな風にいつでも湯が使える贅沢な部屋を常宿にできる。こうして1人で風呂に浸かる時間だけが、奴隷生活に於けるライルの唯一の娯楽だった。

ハンク達が部屋に滞在している時にライルが入浴すると、奴らの気分次第で浴室に乱入してきて湯船で散々に嬲られるが、今日は深夜もしくは翌朝まで帰らないと告げられているので安心して入浴できる。

翌日は山の中の廃坑で繁殖したゴブリンの討伐をこのギルドに所属する冒険者総出で行う予定で、もちろんライルも連れて行かれることになっている。ゴブリンの数次第ではライルも戦闘に駆り出されるかもしれない。できるだけ身体を休めておこうと、ライルは早めに就寝した。


◇◇◇◇


「っ!?」

眠っていたライルは身体に加えられた衝撃で目が覚めた。

「お~悪い。起こしちまったな」

寝ている間に下半身の衣服だけを脱がされ、寝台に仰向けで横たわるライルの裸の脚は大きく割り開かれていた。ライルのアナルに勃起したペニスを捩じ込んだハンクが、ニヤつきながらライルを見おろしている。

「なっ⋯どうしてっ⋯ハンクさん、娼館に行ってきたんじゃ」

「おー。そうなんだけどよ。大満足で帰って来たのに、お前が風呂上がりのいーニオイさせて可愛い顔して寝てやがるからまたムラついてきちまってな。昨日もヤッたから慣らさねえでもズッポリ入ったぜ」

「そんな、明日は朝から仕事が」

「まあ他の2人は賭場に行ったし、俺の相手すりゃいーだけだから楽勝だろ?俺も娼館で出してきたとこだから、1発2発出しゃ治まるし」

そう言ってゆるゆると腰を揺すり始めるハンクはフゥフゥと荒い息をしてすっかり興奮した様子だ。今夜はゆっくり眠れると思ったのに⋯ライルは悔しい気持ちで唇を噛み締めるが、それがハンクに見咎められてしまった。

「ハァ~。嫌がるお前をヤるのも興奮するが、今は可愛い感じで媚びられてー気分なんだよなぁ。ほら、自分で膝裏持って股広げな」

魔術によって隷属させられているライルの身体は、ハンクに命令されると己の意志関係無く従ってしまう。


「もっとマンコ見せつけるように脚開け。よーしよし、いいぞ。出し入れしやすくなったわ」

ハンクはライルの腰を掴んで激しく腰を振り始める。

「ンッ⋯は、ハンクさん、それ早いっ⋯早いのダメですっ」

「あ?わかんねーな。何がダメなのかちゃんと言えって」

「ぁっ⋯ハンクさんの、お、オチンチンで早く突かれるとすぐイッちゃうからっ」

「そーかそーか。ライルちゃんは俺のオチンチンで早く突かれるとすぐイッちゃうくらい気持ちーんだな?」

「ちがっ」

「ちなみにオチンチンで突かれると、どこでイッちゃうんだ?」

「っ⋯お、おしりで」  

「ん?尻じゃなくてマンコだろ?ったく何度も教えても覚えねえなお前はよっ!」

激しいピストンを受けながら、尻を2度3度と引っ叩かれたライルは悲鳴をあげながら絶頂した。

「あ゛~出る出るっ」

達したハンクによってアナルに精液が注がれた。ライルは強い絶頂の余韻で、身体がビクッビクッと跳ねるのが中々おさまらない。

「ぁ⋯う゛う⋯」

寝入っていたところを襲われたライルの目から涙が零れるが、それを見たハンクの陰茎がまた、ライルの中でムクムクと大きくなる。

「ゃっ⋯もうやめてくださいっ⋯」

「ハァハァ⋯泣いちまって可哀想になぁライル⋯だがお前がエロいのが悪いんだぜ?ケツ叩かれてイくとか淫乱にも程があんだろ。たっぷり朝まで可愛がってやるからな」


◇◇◇◇


結局、明け方まで続いたセックスにより、寝過ごしたハンクとライルは、怒り心頭のギルマスがドア越しに怒鳴りつける声で叩き起こされた。

急いで身支度を整えて階下に降りると、ギルドのフロアにいるのは他のパーティーメンバー2人とギルマスだけだった。

「おせーよリーダー」

「お~。わりぃ。ライルのマンコが俺のチンポにしゃぶりついて離してくれなくてよ~。つーかお前らだけ?他のやつらは?」

「ったくハンクこの種馬野郎が!!お前らが集合時間過ぎてもちっとも来ねえから他の連中は先に行かせたぞ!!廃坑のある山を所有している貴族が別ルートで雇ったとかいうSランク冒険者も一緒にな!!」

「ああ?Sランク?」

元冒険者のギルマスは髭面の大男だ。今は怒っているため強面だが、快活でギルドの冒険者から慕われている。しかしまったくの善人ではなくギルドの利益が優先で、Aランクパーティーのハンク達が立場の弱い冒険者を隷属させて良い様に使っているのを黙認していた。

「へぇ~Sランクねえ。そいつ有名なやつ?」

「いや。ここ最近Aランクから昇格し立てだそうで、Sランクとしてはこれからってとこみてえだ。えらくツラの良い男なんだが、背が2mある俺と同じくらいでよぉ⋯って、無駄話してるヒマがあったらさっさと出発しろ!!今ならまだ追いつくだろ」


◇◇◇◇ 


ギルドが用意していた幌馬車で鉱山に到着すると、山道の入り口あたりの開けた場所に、先行した冒険者達の幌馬車が停めてあった。

ハンクとあとの2人が怠そうに山道を登って行くのを見送ると、ライルは先に到着して野営地で仕事をしている下級冒険者や雇われの下働きの者たちに交じり、パーティーのテントの設営を始めた。

テントや焚き火の準備等がひととり終わっても、のんびり休憩とはいかない。ハンクのせいで昨晩ろくに寝ていないライルは、今にも目の前のテントに潜り込んで眠りたいほどに疲労していたが、山中の冒険者が討ち洩らしたゴブリンが野営地まで逃れてくる可能性があり警戒は怠れない。

ギルマスの説明では数百を超えるゴブリンが繁殖していて、上位種の存在も確認されているようだが⋯

「うわああっ!で、出たーっ!ゴブリン出たっ!!」

すぐ近くにいたFランク冒険者が、テントの陰から現れたゴブリンを見つけて絶叫する。

「ちょ、待って待って!俺いま武器持ってない!!」 

「キャーッ!!こっちからも3匹来たっ!!」

まだ経験の浅いFランク冒険者グループはゴブリンとの交戦に慣れておらず、すっかりパニックに陥り右往左往している。放っておけば同士討ちしそうな勢いすらある。見かねたライルが、野営地に現れた4匹のゴブリンの首を、剣で次々と刎ねていった。

「あああ、ありがとうございますぅっ~俺達まだ1回しかゴブリン討伐したことなくてっ⋯」 

ぶわわと泣き出すFランク冒険者達。

「おい、お前らまだ気を抜くには早いぞ。後続が来るかもしれねえし、武器持ってる個体だって」

そう指示を飛ばしている間に、新たに現れたゴブリンが、ライル達に向けて矢を放つのが視界の端に映った。雑用と性処理ばかりで戦闘から久しく遠ざかっていたから気付くのが遅れたか。ライルは咄嗟に、隣にいた初級冒険者を庇うように前に出た。

「!?」

しかしライル達に向けて飛んできていた矢も、二の矢をつがえていたゴブリンも、青白く発光したと思った次の瞬間には、まるで最初からそこに何も存在していなかったかのように消え失せた。

「みんな大丈夫かい?」

ぽかんとするライル達の前に現れたのはやたら背の高い男だった。今のはこの男の魔法なのだろう。ライルが見たこともない高度な魔法だった。

「山中の討伐が終わったから、逃げたのを探しに来たんだけど⋯怪我が無いみたいで良かったよ」

『貴族が別途雇った冒険者がいる』とギルマスが言っていたのをライルは思い出していた。最近Sランクになったばかりのその男は、身の丈2mのギルマスと同じくらいデカかった、とも。

目の前の男は確かに背丈はギルマスくらいだが、いかにも無頼漢といった厳つい風体のギルマスとは真逆の印象だ。程良く引き締まった身体に肩までの金髪をゆるく束ね、女受けしそうな柔和な顔付きの色男である。

「あ、そうだ君達《赤銅の鉾》っていう高ランクパーティーを知らないかな?」

にわかにハンク達のパーティー名が出され、ライルの身体がギクリと強張る。Fランク冒険者の面々も気まずげにライルを見る。あのパーティーにライルどんな扱いを受けているか、この街の冒険者で知らぬ者はいないのだ。

そこへハンク達が戻って来る。

「おおい!まだ飯できてねーのかよ!ったく怠慢だぞ!」

「そんなに怒っちゃ可哀想だよ。この子達は僕達が討ち洩らしたゴブリンと交戦していたんだから。お腹が空いてるなら僕の《収納》に入っているお弁当を分けようか?旅をしているからいつもたくさん持ち歩いてるんだ」

「お?そんじゃ遠慮なく貰うわ。朝も昼もろくに食うヒマなくて死ぬほど腹減っててよ~。討伐もアンタのおかげで早く終わったし何から何まで悪いな」

「気にしないで。ああ、君達の分もあるけど要るかな?」

「わあっ!いいんですか!?ありがとうございます!」

Sランク冒険者らしき男は、飯に釣られて群がるハンク達とFランク冒険者の面々に弁当の包みを配り始める。

「さあ、君も遠慮せずにどうぞ。さっきは危なかったね」

ぼうっと佇んでいたライルにも男は弁当を差し出す。思えばまだ助けてもらった礼もろくに伝えていなかった。ライルは弁当を受け取りながら、頭ひとつ分以上も背の高い男を見上げた。

幼馴染のヒューゴに全体的な雰囲気がどこか似ているとは思っていたが、こうして近くにいると本当に良く似ている。だがヒューゴの体格はライルと同じかむしろ華奢なくらいであったし、声もこんなに低くはなかった。

「え⋯ライル⋯?ライルだよね!?髪がすごく長くなってて気付かなったよ!!もう~っ!!5年も連絡のひとつもくれないなんて酷いよっ!!僕ず~っとライルのこと探してたんだからね!?」

肩を両手でがしっと掴まれてがくがくと揺すぶられ、ライルはくらりと目眩がするのを感じた。

「お、お前⋯ヒューゴか⋯?」

「そうだよっ!幼馴染の顔を忘れちゃったの!?あ、そうか。僕この5年ですごく背が伸びちゃったし、遅い声変わりもしたからね⋯て、ライル!?ちょっと大丈夫!?」

疲労と寝不足と諸々のショックからくる貧血で、ライルは倒れた。

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