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1 騙される
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貧しい山間の村に生まれ育ったライルは、15の歳に幼馴染のヒューゴを誘って町へ出た。狩りや荒事の腕には村の誰よりも自信が有り、冒険者として身を立てるつもりだった。
村の同年代の男の中でも気弱でいまいち頼りなかったヒューゴを誘ったのは、その中で読み書き計算ができるのがヒューゴだけだったからだ。学校なんて上等なものは王都や大きな街にしかなく、それも貴族や裕福な商人の子どもが通うものだ。村では村長の娘だけが町から呼び寄せた家庭教師に教育を受けていたが、金髪碧眼で優しげな容姿のヒューゴを気に入っていた村長の娘が、ヒューゴを婿に取る前提で彼にも授業を受けさせていた。
そんなヒューゴを連れて町に出るとライルが告げた時は、村長や村の有力者といわれる大人達からえらく叱責されたものだが『数年だけ稼いだら必ず戻ってくるから』と説得してなんとか許しを得た。
そもそもライルが当てにしていたのはヒューゴの読み書きの能力だけだったので、街の暮らしに慣れて生計を立てられるようになったらヒューゴだけを村へ帰すつもりでいた。
身勝手に聞こえるかもしれないが、貧乏子沢山な上に早くに父を亡くしたライルの家に比べて、ヒューゴの家は村の中でも比較的裕福だ。上には兄がひとりだけで、村一番の金持ちの村長の家に婿入りも決まっている。事情が逼迫したライルと違い、ヒューゴがわざわざ街に出る必要はない。
『ライルはちょっと考えなしなところがあるから、1人で都会になんて行ったらあっという間に騙されて身ぐるみはがされちゃうよ』
ヒューゴは単に幼馴染を案じて付いてきてくれるようだった。しかし狩りや剣の腕も特にぱっとせず、なよなよとしたヒューゴをライルは内心ちょっと下に見ている。実際に村で遊んでいる時も『ガキ大将のライルと子分のヒューゴ』という認識が遊び仲間の間には有り、それは大人になっても変わらないだろうとライルは思っていた。
◇◇◇◇
ライルとヒューゴは街へ出て3年もしないうちに、ギルドでは名の知れた冒険者になった。
もともと山で野生動物や小型の魔獣を倒して日々の糧としていた環境で育ったというのもあるが、田舎者を騙そうとする有象無象には賢いヒューゴのおかげで引っ掛かることもなく、ヒューゴがその時の力量に見合った依頼をそつなく選んでくれたおかげで危なげなくランクがあがっていき、懐に余裕が出来たおかげで村ではとても習う機会の無かった高等魔法をギルドの講習で習得することができたからだ。
ヒューゴはライルが思っていたよりずっと頭の回る男だった。それだけでなく勤勉で、ライルが実家に仕送りしてもなお余る金で夜遊びに繰り出す間も体術や魔法の鍛錬を怠らなかった。
ヒューゴがAランクに昇格してから半年経って、やっとライルはCランクからBランクへと昇格できた。それもヒューゴと組んで討伐依頼をこなしていたからで『ヒューゴのおこぼれに与っての昇格だ』と他の冒険者からは嘲笑される始末だった。
小さな村の中では全てが自分の思いのままで、やや傲慢な性格に育っていたライルにとって、小さな頃からずっと下に見ていたヒューゴに抜かされたどころか、そのヒューゴのおまけ扱いされる状況は屈辱だった。
だからAランク以上の冒険者への指名依頼でヒューゴだけが遠方へ向かった隙に、わずか数行だけの書き置きを残してライルは遠い街へと、逃げるように拠点を移したのだった。足がつかないように魔法で髪の色などを変えつつ街を6つほど移動してから、高額な転移門を利用して一気に国の反対側へ飛んだ。ここまで遠くに来たらAランクのヒューゴにも自分を捜すことはできないだろうと、ライルは意気揚々と新天地の街を歩いた。
◇◇◇◇
その日、Aランクパーティー《赤銅の鉾》の3人は王都と地方都市を繋ぐ大街道近くの峠で、繁殖し過ぎたグレートウルフを討伐する依頼を請け負っていた。
拠点の街を早朝に発ち、山に分け入ったのは昼過ぎで、対象をあらかた殲滅したところで日暮れを迎えた。討伐した獲物をマジックバッグに放り入れると、クリーン魔法で身綺麗にしてあらかじめ場所を定めておいた野営地に向かう。そこではパーティーに同行する雑用係の男が、食事の支度をしている最中であった。
「待たせちまったな、ライル。やっとお楽しみの時間だぜ」
リーダーのハンクは実に爽やかな笑顔を浮かべ、ライルに駆け寄ると、その身体を抱え上げる。
「ちょっ⋯ハンクさん、まだ食事の準備が途中なので」
「あ?ほぼほぼ出来てるみてーなもんだろ。今日は飯より先にライルに突っ込む気分なんだよ」
ハンクは野営地から20歩も離れていない雑木林までライルを担いで行き、ライルに革鎧と衣服を脱いで靴だけ残して真っ裸になるよう命令した。
ライルは言われるまま服を脱ぐ。下半身も裸になるためにいったんブーツを脱ぎ、一糸纏わぬ姿になると再びブーツに足を通した。
「ハァ⋯エロ。裸にブーツってなんでこんなエロいんだろうな?見てるだけでギンギンなったわ。よし、そしたらそこの木に手ぇ突いて尻こっちに突き出せ」
「⋯⋯はい」
ライルはハンクに背を向けて、尻を見せつけるような格好を取る。男にしては白くて丸い尻を両手てま乱暴に鷲掴みにしたハンクが、ライルの尻たぶをぐいっと割り開くと、ヒクヒクと息づく桃色の窄まりから、魔法で錬成された粘度のある透明な液体がつうと垂れ落ちる。
「よ~し、まんこの準備は万端だな!」
ハンクは猛りきった陰茎をバックからライルに突き入れた。
「ああっ!!」
「お゛あ゛~これだよこれ。堪らねぇなお前の雌穴はよ!!」
パンパンと肌を打つ破裂音が響くほどにハンクは容赦なくライルに腰を打ちつける。アナルを穿たれる刺激に、歯を食いしばってライルは耐えた。
パーティーのメンバーが面倒な前戯無しにいつでも突っ込めるように浄化と湿潤の魔法を施しておくよう躾けられているライルのアナルは、リーダーのハンクのペニスを難無く受け入れ、キュウキュウと食い締める。
「リーダー、今日は俺達にも順番回してくれよな~。前とその前の依頼の時はずっとリーダーがライル使ってて俺らお預けだったじゃん」
「飯も食わんとよーやるわ⋯マジで絶倫だよなあの人。しかも遅漏っていう」
木の陰でまぐわっているので姿こそ見えないが、他のメンバーのぼやきと食器のカチャカチャという音が聞こえてくる。
「ンッ⋯ァッ⋯」
「おっ。甘い声出てきたな!そろそろイクか?ん?」
ハンクのペニスで意図的に前立腺をゴリゴリと擦られ、男達に抱かれ慣れたライルの身体はもう堪らなかった。ひときわ高い悲鳴をあげてのけ反ったライルはビクビクと身体を震わせ絶頂した。
「くっ⋯搾り取られそ⋯だが俺はまだまだ耐えるからなライル!」
「っ⋯ハンクさん、おれ、イッたばっかだからっ⋯!」
「よしよし、イキマンいっぱい突いてやろうなッ⋯乳首弄りながらガン突きしてやるからイキまくれよ!」
「やっ⋯乳首もいっしょやだぁっ⋯⋯!!」
その夜、ライルはメンバーにかわるがわる朝まで身体を弄ばれ、ふもとの街の宿に辿り着いて身体を休められたのは日も高く上がってからだ。
だがこんなことは特に珍しくもない。この5年の間、これがライルの日常だった。
◇◇◇◇
ヒューゴの元を去った5年前、最初に辿り着いた小さな都市の冒険者ギルドで、ライルはハンク率いる《赤銅の鉾》にパーティー入りを勧誘された。
聞けばメンバーが1人欠けたばかりで新たなメンバーを捜していて、Bランクでソロのライルは求めていた人員とのことだった。
ライルとしては格上のAランクのパーティーに加入することに不安はあったが『色々と教えてやるから大丈夫だ』と言われて、胸を借りるつもりで差し出された契約書にサインした。
書類関連はほとんどヒューゴに任せっきりで、村を出てからも読み書きをほとんど勉強しなかったライル。
故郷の兄と同じ歳頃のハンク達に、たった数日間、親切面で街を案内されただけで、ライルは彼らをすっかり信用してしまった。唯一書ける自分の名前をハンクが差し出す書類にサインした結果⋯⋯村を出る前にヒューゴが言った通りになった。
『あっという間に騙されて身ぐるみはがされちゃうよ』
ハンクの契約書には魔力によって縛られた隷属の文言があった。その日からライルは反抗も逃亡も自死も封じられ、パーティー専属の奴隷となった。
◇◇◇◇
爽やかな風貌で人当たりの良さそうなハンク達は、見た目と裏腹にとんでもないド屑であった。
ライルの前に隷属の契約で嵌めた冒険者は10人はくだらないという。だいたいが田舎から出てきたばかりの読み書きのできない低ランクの冒険者で、娼館の無い出先での依頼の時に、パーティーの性欲処理とその他雑用をさせる目的で連れ歩くのだ。
しかしAランクパーティーの任務に低ランクの冒険者を帯同させると、強い魔獣や盗賊などに襲われても自衛の能力が足りずにすぐに死んでしまう。そこである程度ランクの高い獲物を探していたところ、条件にぴったりのライルがやって来たのだった。
「お前はツラは可愛いしケツの具合も良いし、マジで良い拾いもんだったぜライル。奴隷は毎度5年契約で縛るんだが、契約満了まで生き残りそうなのもお前が初めてだなあ。次のやつも男にするか!」
「ええ~っ次は女にしようぜ、リーダー」
「俺はどっちでもいーけど女を奴隷にしてた時は一気に2人で穴が使えて時短だったな」
「ああ、あのヒーラーの子な。チンポ抜いて身支度ととのえて振り返ったら、樹上から降ってきたサーペントに丸呑みにされちまって可哀想なことしたな⋯あの後フルチンでサーペント討伐したの間抜け過ぎたよな」
「リーダーが匂いが嫌で萎えるからって魔物避けの香を使わねえから奴隷がすぐ死ぬんじゃん」
最近ライルを犯している時に、ハンク達は次の奴隷をどうするか話し合っていることが増えた。もうすぐライルの5年間の隷属契約が終わるからだ。
ハンク達は救いようのない屑だが、勝手な理由でヒューゴを利用した上、しょうもないプライドでいきなり姿をくらませたライルもたいがい屑の自覚があった。この状況は自業自得だ。
タダ働きでこき使われていて、外部との接触も制限されているので、故郷に仕送りどころか手紙の1通すら出せていない。この街に来る前に持っていた金も全て奪われてしまっている。
ライルはもうBランク冒険者ではない。BランクどころかFランクの初級冒険者ですらないのだ。国内の冒険者ギルドの決まりは共通で、3年以上依頼を受けないでいると資格が消失する。5年間ハンク達の奴隷をしているライルの冒険者資格は言わずもがなである。
ハンク達から解放されたらすぐにライルはこの街を離れるつもりでいるが、先行きは不安だった。
村の同年代の男の中でも気弱でいまいち頼りなかったヒューゴを誘ったのは、その中で読み書き計算ができるのがヒューゴだけだったからだ。学校なんて上等なものは王都や大きな街にしかなく、それも貴族や裕福な商人の子どもが通うものだ。村では村長の娘だけが町から呼び寄せた家庭教師に教育を受けていたが、金髪碧眼で優しげな容姿のヒューゴを気に入っていた村長の娘が、ヒューゴを婿に取る前提で彼にも授業を受けさせていた。
そんなヒューゴを連れて町に出るとライルが告げた時は、村長や村の有力者といわれる大人達からえらく叱責されたものだが『数年だけ稼いだら必ず戻ってくるから』と説得してなんとか許しを得た。
そもそもライルが当てにしていたのはヒューゴの読み書きの能力だけだったので、街の暮らしに慣れて生計を立てられるようになったらヒューゴだけを村へ帰すつもりでいた。
身勝手に聞こえるかもしれないが、貧乏子沢山な上に早くに父を亡くしたライルの家に比べて、ヒューゴの家は村の中でも比較的裕福だ。上には兄がひとりだけで、村一番の金持ちの村長の家に婿入りも決まっている。事情が逼迫したライルと違い、ヒューゴがわざわざ街に出る必要はない。
『ライルはちょっと考えなしなところがあるから、1人で都会になんて行ったらあっという間に騙されて身ぐるみはがされちゃうよ』
ヒューゴは単に幼馴染を案じて付いてきてくれるようだった。しかし狩りや剣の腕も特にぱっとせず、なよなよとしたヒューゴをライルは内心ちょっと下に見ている。実際に村で遊んでいる時も『ガキ大将のライルと子分のヒューゴ』という認識が遊び仲間の間には有り、それは大人になっても変わらないだろうとライルは思っていた。
◇◇◇◇
ライルとヒューゴは街へ出て3年もしないうちに、ギルドでは名の知れた冒険者になった。
もともと山で野生動物や小型の魔獣を倒して日々の糧としていた環境で育ったというのもあるが、田舎者を騙そうとする有象無象には賢いヒューゴのおかげで引っ掛かることもなく、ヒューゴがその時の力量に見合った依頼をそつなく選んでくれたおかげで危なげなくランクがあがっていき、懐に余裕が出来たおかげで村ではとても習う機会の無かった高等魔法をギルドの講習で習得することができたからだ。
ヒューゴはライルが思っていたよりずっと頭の回る男だった。それだけでなく勤勉で、ライルが実家に仕送りしてもなお余る金で夜遊びに繰り出す間も体術や魔法の鍛錬を怠らなかった。
ヒューゴがAランクに昇格してから半年経って、やっとライルはCランクからBランクへと昇格できた。それもヒューゴと組んで討伐依頼をこなしていたからで『ヒューゴのおこぼれに与っての昇格だ』と他の冒険者からは嘲笑される始末だった。
小さな村の中では全てが自分の思いのままで、やや傲慢な性格に育っていたライルにとって、小さな頃からずっと下に見ていたヒューゴに抜かされたどころか、そのヒューゴのおまけ扱いされる状況は屈辱だった。
だからAランク以上の冒険者への指名依頼でヒューゴだけが遠方へ向かった隙に、わずか数行だけの書き置きを残してライルは遠い街へと、逃げるように拠点を移したのだった。足がつかないように魔法で髪の色などを変えつつ街を6つほど移動してから、高額な転移門を利用して一気に国の反対側へ飛んだ。ここまで遠くに来たらAランクのヒューゴにも自分を捜すことはできないだろうと、ライルは意気揚々と新天地の街を歩いた。
◇◇◇◇
その日、Aランクパーティー《赤銅の鉾》の3人は王都と地方都市を繋ぐ大街道近くの峠で、繁殖し過ぎたグレートウルフを討伐する依頼を請け負っていた。
拠点の街を早朝に発ち、山に分け入ったのは昼過ぎで、対象をあらかた殲滅したところで日暮れを迎えた。討伐した獲物をマジックバッグに放り入れると、クリーン魔法で身綺麗にしてあらかじめ場所を定めておいた野営地に向かう。そこではパーティーに同行する雑用係の男が、食事の支度をしている最中であった。
「待たせちまったな、ライル。やっとお楽しみの時間だぜ」
リーダーのハンクは実に爽やかな笑顔を浮かべ、ライルに駆け寄ると、その身体を抱え上げる。
「ちょっ⋯ハンクさん、まだ食事の準備が途中なので」
「あ?ほぼほぼ出来てるみてーなもんだろ。今日は飯より先にライルに突っ込む気分なんだよ」
ハンクは野営地から20歩も離れていない雑木林までライルを担いで行き、ライルに革鎧と衣服を脱いで靴だけ残して真っ裸になるよう命令した。
ライルは言われるまま服を脱ぐ。下半身も裸になるためにいったんブーツを脱ぎ、一糸纏わぬ姿になると再びブーツに足を通した。
「ハァ⋯エロ。裸にブーツってなんでこんなエロいんだろうな?見てるだけでギンギンなったわ。よし、そしたらそこの木に手ぇ突いて尻こっちに突き出せ」
「⋯⋯はい」
ライルはハンクに背を向けて、尻を見せつけるような格好を取る。男にしては白くて丸い尻を両手てま乱暴に鷲掴みにしたハンクが、ライルの尻たぶをぐいっと割り開くと、ヒクヒクと息づく桃色の窄まりから、魔法で錬成された粘度のある透明な液体がつうと垂れ落ちる。
「よ~し、まんこの準備は万端だな!」
ハンクは猛りきった陰茎をバックからライルに突き入れた。
「ああっ!!」
「お゛あ゛~これだよこれ。堪らねぇなお前の雌穴はよ!!」
パンパンと肌を打つ破裂音が響くほどにハンクは容赦なくライルに腰を打ちつける。アナルを穿たれる刺激に、歯を食いしばってライルは耐えた。
パーティーのメンバーが面倒な前戯無しにいつでも突っ込めるように浄化と湿潤の魔法を施しておくよう躾けられているライルのアナルは、リーダーのハンクのペニスを難無く受け入れ、キュウキュウと食い締める。
「リーダー、今日は俺達にも順番回してくれよな~。前とその前の依頼の時はずっとリーダーがライル使ってて俺らお預けだったじゃん」
「飯も食わんとよーやるわ⋯マジで絶倫だよなあの人。しかも遅漏っていう」
木の陰でまぐわっているので姿こそ見えないが、他のメンバーのぼやきと食器のカチャカチャという音が聞こえてくる。
「ンッ⋯ァッ⋯」
「おっ。甘い声出てきたな!そろそろイクか?ん?」
ハンクのペニスで意図的に前立腺をゴリゴリと擦られ、男達に抱かれ慣れたライルの身体はもう堪らなかった。ひときわ高い悲鳴をあげてのけ反ったライルはビクビクと身体を震わせ絶頂した。
「くっ⋯搾り取られそ⋯だが俺はまだまだ耐えるからなライル!」
「っ⋯ハンクさん、おれ、イッたばっかだからっ⋯!」
「よしよし、イキマンいっぱい突いてやろうなッ⋯乳首弄りながらガン突きしてやるからイキまくれよ!」
「やっ⋯乳首もいっしょやだぁっ⋯⋯!!」
その夜、ライルはメンバーにかわるがわる朝まで身体を弄ばれ、ふもとの街の宿に辿り着いて身体を休められたのは日も高く上がってからだ。
だがこんなことは特に珍しくもない。この5年の間、これがライルの日常だった。
◇◇◇◇
ヒューゴの元を去った5年前、最初に辿り着いた小さな都市の冒険者ギルドで、ライルはハンク率いる《赤銅の鉾》にパーティー入りを勧誘された。
聞けばメンバーが1人欠けたばかりで新たなメンバーを捜していて、Bランクでソロのライルは求めていた人員とのことだった。
ライルとしては格上のAランクのパーティーに加入することに不安はあったが『色々と教えてやるから大丈夫だ』と言われて、胸を借りるつもりで差し出された契約書にサインした。
書類関連はほとんどヒューゴに任せっきりで、村を出てからも読み書きをほとんど勉強しなかったライル。
故郷の兄と同じ歳頃のハンク達に、たった数日間、親切面で街を案内されただけで、ライルは彼らをすっかり信用してしまった。唯一書ける自分の名前をハンクが差し出す書類にサインした結果⋯⋯村を出る前にヒューゴが言った通りになった。
『あっという間に騙されて身ぐるみはがされちゃうよ』
ハンクの契約書には魔力によって縛られた隷属の文言があった。その日からライルは反抗も逃亡も自死も封じられ、パーティー専属の奴隷となった。
◇◇◇◇
爽やかな風貌で人当たりの良さそうなハンク達は、見た目と裏腹にとんでもないド屑であった。
ライルの前に隷属の契約で嵌めた冒険者は10人はくだらないという。だいたいが田舎から出てきたばかりの読み書きのできない低ランクの冒険者で、娼館の無い出先での依頼の時に、パーティーの性欲処理とその他雑用をさせる目的で連れ歩くのだ。
しかしAランクパーティーの任務に低ランクの冒険者を帯同させると、強い魔獣や盗賊などに襲われても自衛の能力が足りずにすぐに死んでしまう。そこである程度ランクの高い獲物を探していたところ、条件にぴったりのライルがやって来たのだった。
「お前はツラは可愛いしケツの具合も良いし、マジで良い拾いもんだったぜライル。奴隷は毎度5年契約で縛るんだが、契約満了まで生き残りそうなのもお前が初めてだなあ。次のやつも男にするか!」
「ええ~っ次は女にしようぜ、リーダー」
「俺はどっちでもいーけど女を奴隷にしてた時は一気に2人で穴が使えて時短だったな」
「ああ、あのヒーラーの子な。チンポ抜いて身支度ととのえて振り返ったら、樹上から降ってきたサーペントに丸呑みにされちまって可哀想なことしたな⋯あの後フルチンでサーペント討伐したの間抜け過ぎたよな」
「リーダーが匂いが嫌で萎えるからって魔物避けの香を使わねえから奴隷がすぐ死ぬんじゃん」
最近ライルを犯している時に、ハンク達は次の奴隷をどうするか話し合っていることが増えた。もうすぐライルの5年間の隷属契約が終わるからだ。
ハンク達は救いようのない屑だが、勝手な理由でヒューゴを利用した上、しょうもないプライドでいきなり姿をくらませたライルもたいがい屑の自覚があった。この状況は自業自得だ。
タダ働きでこき使われていて、外部との接触も制限されているので、故郷に仕送りどころか手紙の1通すら出せていない。この街に来る前に持っていた金も全て奪われてしまっている。
ライルはもうBランク冒険者ではない。BランクどころかFランクの初級冒険者ですらないのだ。国内の冒険者ギルドの決まりは共通で、3年以上依頼を受けないでいると資格が消失する。5年間ハンク達の奴隷をしているライルの冒険者資格は言わずもがなである。
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