婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第25話 第二王子エリオット視点 ― 冤罪の断罪と誓い

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第二王子エリオット視点 ― 冤罪の断罪と誓い

 煌めくシャンデリアの下、王宮大広間は春の祝宴にふさわしく華やかに彩られていた。
 けれど僕の胸には、ずっと小さな不安が渦巻いていた。兄上――アルベルト第一王子の笑みは、芝居がかった仮面のようで、何かが起こる予感がしてならなかった。

 そして、その時は訪れる。

「――ローゼ・フォン・エルンスト公爵令嬢! おまえとの婚約は、この場をもって破棄する!」

 空気が凍りついた。
 大広間を埋め尽くす貴族たちの息が、一斉に止まったように感じる。

 ローゼ姉さん――兄上の婚約者。幼い頃から僕にとって憧れであり、光そのものだった人。
 その彼女が、今、公開の場で「捨てられた」。

 さらに兄上は、ピンク髪の男爵令嬢ミーアを抱き寄せ、「清らかな天使」と称えた。
 侯爵子息アーサー、伯爵子息マッスルらが次々に声を上げ、ローゼ姉さんを断罪する。

「ローゼ様はミーア様を虐げていたのだ!」
「弱きを虐げる女が未来の王妃だと? 許せん!」

 ――あり得ない。
 僕は拳を握り、思わず一歩前へ踏み出した。

「ローゼ姉さんがそんなことするわけない!」

 叫びかけたその瞬間、背後から強い力で腕を掴まれた。

「殿下!」

 低く鋭い声。
 振り返れば、そこにいたのは僕の側近――レオナルド・フォン・クロイツベルグ。
 長身で冷静沈着な彼は、幼い頃から僕を支えてくれている信頼の騎士だ。

「今はお控えください!」

「なにを言っている! ローゼ姉さんは冤罪なんだ、黙っていられるか!」

 僕は必死に押し返そうとする。
 けれどレオナルドの視線は冷たく、しかし誠実だった。

「証拠がありません。ここで声を上げれば、殿下ご自身が『逆らう者』として断罪されます!」

 その一言に、胸が締め付けられる。
 確かに、今ここで僕が声を荒げても、誰も耳を貸さない。
 むしろ、兄上の茶番に逆らう「第二王子の反逆」として利用されるだけだ。

 唇を噛みしめ、視線を前に戻す。
 ローゼ姉さんは必死に訴えているのに、誰も聞こうとしない。
 近衛兵に荒々しく拘束され、地下牢へと連れて行かれようとしていた。

「……くそっ」

 声にならない呻きが漏れる。
 胸の奥で怒りと無力感が渦巻き、拳が震える。

「殿下……必ず機会は訪れます。そのときこそ、証拠を突きつけて救い出すのです。今は……耐えてください」

 レオナルドの言葉は、氷のように冷静だった。
 けれど、その奥に確かな信頼と忠義の熱が宿っていることを、僕は知っている。

 僕は深く息を吸い、叫びを飲み込んだ。
 視線だけは逸らさず、地下牢へ引きずられていくローゼ姉さんを見送る。

 ――助ける。必ず。

 今は証拠も力も足りない。
 けれど、諦めはしない。
 ローゼ姉さんを救うまで、僕は何度でも立ち上がる。

 心に誓いを刻む。
 それが、無力な僕にできる唯一の抵抗だった。
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