婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第27話 第二王子エリオット視点 ― 真実の映像

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第二王子エリオット視点 ― 真実の映像

 調査を始めてから数日。
 僕とレオナルドは、人目を避けるように夜ごと密会を重ねていた。

 証言を探っても、出てくるのは不自然な噂ばかりだった。
 「ミーア様は可憐で清らか」「ローゼ様は冷酷で苛烈」――まるで同じ筆で書かれたかのような言葉が、あちこちの口から繰り返される。
 意図的に仕組まれているのは明らかだった。

 そんなある晩。
 レオナルドが机の上に黒曜石のような宝玉を置いた。

「殿下。……映像を手に入れました」

「映像?」

「はい。古代の魔道具《水晶記録珠》。術者の魔力で刻まれた出来事を、映像として保存できる品です」

 ごくりと息を呑む。
 そんな代物がまだ動くとは……。

「何を……記録したんだ?」

 レオナルドは一拍置き、真剣な瞳で僕を見つめた。

「ミーア嬢の、真の姿を」

 その言葉に、心臓が大きく跳ねた。

 珠に指をかざすと、空中に淡い光が広がり、やがて像を結ぶ。
 月夜の庭園。噴水の水音。……そして、鮮やかな桃色の髪を揺らす女。

 ミーアだった。



「……で? どういうつもりだ、ミーア」
 映像の中で、鋭い声が響く。アーサーだ。
 その横で、マッスルが豪快に腕を組み、愉快そうに笑っている。

「ミーアは俺たち二人を選んだんだ。欲張りだが、それもまた魅力だろ?」

「くだらない」
 アーサーの冷徹な声。けれど、彼の瞳には抗えぬ熱が宿っていた。

 ミーアは二人を見上げ、口元を艶やかに歪める。
「ふふ……お二人とも、わたしを責めたいのですか? それとも、まだ、わたしを欲しいのですか?」

 ――背筋が凍った。
 声に漂う甘美な毒気に、思わず拳を握る。

 アーサーが一歩踏み込み、マッスルが分厚い腕を伸ばし……。
 二人に両側から抱きすくめられ、ミーアはうっとりと目を閉じた。



「こ、これ……!」
 思わず声が裏返る。

「殿下、まだ続きがあります」
 レオナルドの声が冷静に響いた。

 映像はさらに移り変わる。
 夜の廊下、人気のない客間、裏庭の陰。
 ミーアは昼間の天使のような姿とは真逆に、妖艶な笑みを浮かべ、二人の男を巧みに弄んでいた。

 アーサーには「冷たい眼差しが怖いの」と涙を見せ、マッスルには「力強さが安心するの」と囁く。
 どちらも簡単に心を許し、彼女の掌の上で転がされていた。

 ――吐き気がこみ上げる。

「くっ……やめろ……!」
 思わず叫び、珠から手を離した。
 映像は霧散し、部屋に静寂が戻る。

 僕は荒い息をつき、椅子に身を沈めた。

「……こ、これ以上は……見られない。こんな……こんな悪女だったなんて」

 胸の奥がぐちゃぐちゃに掻き乱される。
 兄上が「天使」と讃え、国中が憧れを寄せた女の、本当の姿。
 それは欲望にまみれた怪物だった。

 レオナルドが静かに言葉を落とす。

「殿下。ご覧になった通りです。ミーア嬢は二股どころか、王妃の座を狙いながら二人の有力貴族子息を手玉に取っている。……これは致命的な醜聞となりましょう」

「……証拠は?」

「はい。すべてこの珠に記録済みです。……殿下がご覧になったのはほんの一部。必要であれば、裁判の場で全映像を公開できます」

 その言葉に、僕は息を呑んだ。
 全てを暴けば、兄上がどれほど庇おうと、ミーアの仮面は崩れ去る。

 だが同時に、胸の奥が冷たく震えた。
 この映像を見れば、兄上の心はどうなるだろう。
 「天使」と盲信していた相手の裏切りを知れば……国は、王家は。

 それでも。

「……救わなければならない。ローゼ姉さんを」

 震える声で呟くと、レオナルドは深々と頷いた。

「殿下の御心のままに。必ず、この証拠を切り札といたしましょう」

 僕は拳を握りしめる。

 ――許さない。
 無実の姉さんを陥れ、欲望のままに権力を貪るあの女を。

 月明かりが窓を照らす。
 その光の下で、僕は決意を新たにした。

 必ず真実を暴き、ローゼ姉さんを救い出す。
 その時まで、僕は何度でも立ち上がる。
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