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第20話 死闘、バジリスク戦
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朝焼けが黒魔の森に差し込む頃、二人は村を出発した。
森の奥に進むほど、空気は湿り、木々は鬱蒼と茂り、まるで獣の腹に飲み込まれたような圧迫感に包まれていく。アリスターは魔導式の羅針盤を手に、バジリスクの魔力反応を探っていた。
「このあたりだね……反応が強くなってきた。そろそろ警戒しようか」
「了解。右腕と左足、両方使う必要がある相手ってことだね」
エリーゼは静かに剣の柄に手をかけ、呼吸を整える。森の奥からは、獣とも爬虫類ともつかない異様な気配が漂っていた。
そのとき、腐葉土を踏みしだく重い音が聞こえた。木々の隙間から現れたのは、体長三メートルを超える巨大なバジリスクだった。蛇のような胴体に、鳥の脚、獣の尾、鋭く割れた双角。そして何より、黄色く濁った双眸が異常な魔力を放っている。
――視線を合わせるな。
エリーゼは即座に気配を読み取り、顔を伏せた。バジリスクの石化の魔眼は、真正面から視線を交わした者を一瞬で石に変える呪いを秘めている。
「エリーゼ、石化防御の結界を展開する! 二十秒しかもたないから、その間に接近戦を頼む!」
「任せて!」
アリスターが魔導書を広げ、金色の魔法陣を宙に描いた。地面から立ち上がるようにして、光の膜がエリーゼの全身を包み込む。石化の呪いを中和する、対魔眼結界――時間制限付きの高度な魔術だ。
エリーゼは地を蹴った。金に輝く右腕が風を裂き、銀色の左足が大地を蹴り砕く。
バジリスクが咆哮を上げ、首をもたげて睨みつけてくる。だが、結界が効いている今は怖くない。エリーゼは迷いなく飛び込み、刃を振るった。
――ガギィィン!
その鱗は、まるで鋼鉄のように硬かった。刀身が滑り、弾かれる。
「くっ、これじゃ普通に切るのは無理……!」
バジリスクが尾を振り回し、エリーゼを薙ぎ払おうとする。とっさに後方に跳び、地面を転がって回避した。
「硬質鱗……ただの爬虫類じゃないってわけだ。よし、じゃあこれでどうだ!」
アリスターが叫び、地面に魔法陣を展開する。炎の柱がバジリスクの足元から吹き上がり、体表を焼いた。だが、バジリスクは咆哮を上げただけで、致命傷にはならない。
「エリーゼ、弱点は頭部と眼球の周辺! 硬質鱗が薄い!」
「了解! じゃあ――全力でいく!」
エリーゼは剣を収め、構えを変えた。彼女が選んだのは、前世で培った“面打ち”の構え。
「剣道三段、全開モード!」
冗談めいた口調の裏に、本気の気配が満ちる。金龍の右腕が黄金の光を帯び、フェンリルの左足に雷のような気が満ちる。
一瞬――。
大地を踏み砕くような跳躍。重力を無視したような滞空。そして、鋭く落ちる斬撃。
「――破空閃《はくうせん》ッ!」
エリーゼの刃が、バジリスクの頭部に突き刺さった。
黄金の閃光と共に、鱗が砕け、濁った双眸が潰される。断末魔のような咆哮とともに、バジリスクはのたうち回り、地をえぐりながら崩れ落ちた。
……勝負は、決まった。
「ふぅ……終わった?」
エリーゼが地に着地し、息を吐く。右腕の金光は薄れ、左足の力も次第に沈静化していく。
「いやはや、さすがはフェンリル様と金龍様の加護を受けし剣聖。ボクの魔法がなければちょっとは危なかったけどね?」
「はいはい、アリスターもすっごく頼りになったよ。石化してたら死んでたし」
アリスターは得意げに胸を張り、エリーゼはくすくすと笑った。
バジリスクを収納した後、二人は森を抜け、再び獣人の村へと戻る。
討伐したバジリスクの体をドンと、村の中央にある集会所に出すと、村人たちは歓声を上げ、村長は何度も頭を下げて礼を述べた。
「これで狩りも再開できます。本当に……ありがとうございました」
「お礼なんていいさ。ただ、泊まるときはちゃんと歓迎してくれればそれで」
アリスターが軽口を叩くと、村人たちの笑いが広がった。
夜、星空の下。焚き火の明かりに照らされた二人の影が、静かに揺れていた。
「ねぇアリスター。……バジリスクとの戦い、ちょっと懐かしい感じがした」
「前世の記憶?」
「うん。剣道の試合みたいだった。集中して、一瞬で決めるあの感覚。……わたし、やっぱり剣を振るうのが好きだなって、思った」
アリスターはしばらく黙っていたが、やがてふっと笑った。
「なら、ボクは魔法を使うのが好きだな。誰かのために、力を貸すのも悪くない」
焚き火の火が、パチパチと音を立てた。
こうして、ひとつの事件は幕を閉じた。
だが、彼らの旅はまだ続く。マケドニア聖教国へと向かう、その道の先には、さらなる真実と闇が待っていることを――この時の二人はまだ、知る由もなかった。
【エリーゼ=アルセリア】
レベル:20
HP:321
MP:162
攻撃:402【177+剣225】
防御:168
早さ:282
幸運:100
スキル:──剣聖──フェンリルの加護 金龍の加護
装備:テオドリック帝国 王家の剣
森の奥に進むほど、空気は湿り、木々は鬱蒼と茂り、まるで獣の腹に飲み込まれたような圧迫感に包まれていく。アリスターは魔導式の羅針盤を手に、バジリスクの魔力反応を探っていた。
「このあたりだね……反応が強くなってきた。そろそろ警戒しようか」
「了解。右腕と左足、両方使う必要がある相手ってことだね」
エリーゼは静かに剣の柄に手をかけ、呼吸を整える。森の奥からは、獣とも爬虫類ともつかない異様な気配が漂っていた。
そのとき、腐葉土を踏みしだく重い音が聞こえた。木々の隙間から現れたのは、体長三メートルを超える巨大なバジリスクだった。蛇のような胴体に、鳥の脚、獣の尾、鋭く割れた双角。そして何より、黄色く濁った双眸が異常な魔力を放っている。
――視線を合わせるな。
エリーゼは即座に気配を読み取り、顔を伏せた。バジリスクの石化の魔眼は、真正面から視線を交わした者を一瞬で石に変える呪いを秘めている。
「エリーゼ、石化防御の結界を展開する! 二十秒しかもたないから、その間に接近戦を頼む!」
「任せて!」
アリスターが魔導書を広げ、金色の魔法陣を宙に描いた。地面から立ち上がるようにして、光の膜がエリーゼの全身を包み込む。石化の呪いを中和する、対魔眼結界――時間制限付きの高度な魔術だ。
エリーゼは地を蹴った。金に輝く右腕が風を裂き、銀色の左足が大地を蹴り砕く。
バジリスクが咆哮を上げ、首をもたげて睨みつけてくる。だが、結界が効いている今は怖くない。エリーゼは迷いなく飛び込み、刃を振るった。
――ガギィィン!
その鱗は、まるで鋼鉄のように硬かった。刀身が滑り、弾かれる。
「くっ、これじゃ普通に切るのは無理……!」
バジリスクが尾を振り回し、エリーゼを薙ぎ払おうとする。とっさに後方に跳び、地面を転がって回避した。
「硬質鱗……ただの爬虫類じゃないってわけだ。よし、じゃあこれでどうだ!」
アリスターが叫び、地面に魔法陣を展開する。炎の柱がバジリスクの足元から吹き上がり、体表を焼いた。だが、バジリスクは咆哮を上げただけで、致命傷にはならない。
「エリーゼ、弱点は頭部と眼球の周辺! 硬質鱗が薄い!」
「了解! じゃあ――全力でいく!」
エリーゼは剣を収め、構えを変えた。彼女が選んだのは、前世で培った“面打ち”の構え。
「剣道三段、全開モード!」
冗談めいた口調の裏に、本気の気配が満ちる。金龍の右腕が黄金の光を帯び、フェンリルの左足に雷のような気が満ちる。
一瞬――。
大地を踏み砕くような跳躍。重力を無視したような滞空。そして、鋭く落ちる斬撃。
「――破空閃《はくうせん》ッ!」
エリーゼの刃が、バジリスクの頭部に突き刺さった。
黄金の閃光と共に、鱗が砕け、濁った双眸が潰される。断末魔のような咆哮とともに、バジリスクはのたうち回り、地をえぐりながら崩れ落ちた。
……勝負は、決まった。
「ふぅ……終わった?」
エリーゼが地に着地し、息を吐く。右腕の金光は薄れ、左足の力も次第に沈静化していく。
「いやはや、さすがはフェンリル様と金龍様の加護を受けし剣聖。ボクの魔法がなければちょっとは危なかったけどね?」
「はいはい、アリスターもすっごく頼りになったよ。石化してたら死んでたし」
アリスターは得意げに胸を張り、エリーゼはくすくすと笑った。
バジリスクを収納した後、二人は森を抜け、再び獣人の村へと戻る。
討伐したバジリスクの体をドンと、村の中央にある集会所に出すと、村人たちは歓声を上げ、村長は何度も頭を下げて礼を述べた。
「これで狩りも再開できます。本当に……ありがとうございました」
「お礼なんていいさ。ただ、泊まるときはちゃんと歓迎してくれればそれで」
アリスターが軽口を叩くと、村人たちの笑いが広がった。
夜、星空の下。焚き火の明かりに照らされた二人の影が、静かに揺れていた。
「ねぇアリスター。……バジリスクとの戦い、ちょっと懐かしい感じがした」
「前世の記憶?」
「うん。剣道の試合みたいだった。集中して、一瞬で決めるあの感覚。……わたし、やっぱり剣を振るうのが好きだなって、思った」
アリスターはしばらく黙っていたが、やがてふっと笑った。
「なら、ボクは魔法を使うのが好きだな。誰かのために、力を貸すのも悪くない」
焚き火の火が、パチパチと音を立てた。
こうして、ひとつの事件は幕を閉じた。
だが、彼らの旅はまだ続く。マケドニア聖教国へと向かう、その道の先には、さらなる真実と闇が待っていることを――この時の二人はまだ、知る由もなかった。
【エリーゼ=アルセリア】
レベル:20
HP:321
MP:162
攻撃:402【177+剣225】
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