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第44話 岩宿ダンジョン第二階層、砂漠
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【岩宿ダンジョン・第二階層】
風が唸る。
岩宿ダンジョン、第二階層。そこは一面の砂漠だった。乾いた熱気が地面を這い、視界の端に陽炎が揺れている。天井の亀裂からは人工の光が差し込み、昼間のような明るさを保っていたが、乾燥した空気は容赦なく喉を渇かせた。
「思ってたより……ずいぶん暑いね……」
エリーゼ=アルセリアが額の汗をぬぐいながら苦笑した。桃色の髪が陽光に揺れ、金の右腕と銀の左足が燦然と輝いている。だが、その足取りは一切乱れない。さすがは剣聖、前世で剣道三段だっただけのことはある。
「装備の調整、もっとしっかりやっておくべきだったでござる……」
青い髪に眼鏡の神官、ダリルは首元のローブを指でつまみ、汗まみれの襟元を不快げに引っ張る。彼の背には回復と支援を主とした祈りの杖。その姿はまさしく後衛支援の要だったが、本人の表情は常に陰気で沈んでいる。
「水分管理を怠ると、集中力に影響が出る。ボクとしては、こういう環境での長期戦は避けたいところだね」
金髪をなびかせるナルシスト、アリスターは手鏡をひと撫でしながら、すぐに右手を魔法の杖へと戻す。テオドリック王国の元王子である彼は、実戦経験より礼儀作法に精通していたが、追放の冤罪により今ではすっかり戦場慣れしてきていた。
「オレは問題ねぇ! 筋肉にはこのくらいの暑さ、丁度いいストレッチだ!」
最後に笑い飛ばしたのは、黒髪の筋肉男、マスキュラー。剣士でありながら武器すら使わず素手でモンスターを殴り倒す豪傑だ。
「さて、地図によればこの先に“砂蛇の巣”ってのがあるらしいね。銀の牙が最後に目撃されたのもそこだ」
アリスターがダンジョンの地図を広げて指を走らせる。情報屋“ヴェルトから提供された地図は、敵の出現ポイントや罠の配置まで記されており、慣れていない者でも容易に探索できる。
「とはいえ、過信は禁物でござるよ。地図と現実は必ずしも一致しない……!」
「うん、そうだね。でも、焦らなければきっと助けられるよ!」
エリーゼの笑顔に、マスキュラーが拳を握る。
「おうよ! 困ってる奴がいるなら行くしかねぇだろ!」
そして――事件は起きた。
地図に載っていない砂嵐が、彼らの進路を阻んだのだ。
「これは……! 視界が!」
「くっ、魔法で風を分散させる! 《エア・ディスペル》!」
アリスターの詠唱により風が裂け、視界が戻る。その先に――銀の牙の一人、重装戦士の男が倒れていた。
「おい! 生きてるか!」
マスキュラーが駆け寄り、ダリルがすぐさま治癒魔法を施す。
「《癒しの光よ、傷を封ぜよ……ヒーリング・レイ》!」
柔らかな光が男の体を包み、ひときわ大きな息が漏れる。
「……助かった……あんたたちは……?」
「わたしたちはギルドの依頼で来たの。銀の牙、あなたたちを助けに!」
「他の仲間は?」
「東の砂丘地帯に向かったまま、戻らねぇ……たぶん、砂蛇に……」
男が語った情報を元に、エリーゼたちは進路を東へと定める。
砂を蹴立て、四人は再び走り出した。
そして――岩壁に囲まれた谷のような地形にたどり着いたときだった。
「……いた! あれは!」
巨大な砂蛇が、倒れたままの銀の牙の女戦士を呑み込もうとしていた。
「止めなきゃ!」
エリーゼが前に出ると、右腕が金色のオーラを纏う。
「《剣閃・金龍乱舞》!」
金の斬撃が砂蛇を裂き、その隙を突いてマスキュラーが突撃する。
「うおおおっ! 筋肉――ラリアットッ!!」
信じられない一撃により、砂蛇は体を半回転させながら地面に叩きつけられた。
「ボクも一発。《雷撃・連鎖球》!」
アリスターの魔法が蛇を麻痺させ、その間にダリルが女戦士を引きずり出す。
「無事でござる……! 浅い傷ばかり、今なら助かる……!」
そして、決着の一撃。
エリーゼとマスキュラーが同時に突撃し、金の剣と拳が砂蛇の頭を粉砕する。
静寂が訪れた。
「よし……もう1人救助完了。あとは令嬢かな」
アリスターが手鏡をのぞきながら、ふっと微笑む。
女戦士も目を覚まし、震える手で礼を述べた。
「ありがとう……あなたたち、名前は……?」
「わたしたちは、スプレーマム。困ってる人を見過ごさない、最近結成されたばかりの最強パーティよ」
エリーゼの言葉に、仲間たちが静かに頷く。
再び歩き出す。傷を癒えぬまま、それでも前へ。
冤罪で追われた者たちが、今――誰かを救っていた。
風が唸る。
岩宿ダンジョン、第二階層。そこは一面の砂漠だった。乾いた熱気が地面を這い、視界の端に陽炎が揺れている。天井の亀裂からは人工の光が差し込み、昼間のような明るさを保っていたが、乾燥した空気は容赦なく喉を渇かせた。
「思ってたより……ずいぶん暑いね……」
エリーゼ=アルセリアが額の汗をぬぐいながら苦笑した。桃色の髪が陽光に揺れ、金の右腕と銀の左足が燦然と輝いている。だが、その足取りは一切乱れない。さすがは剣聖、前世で剣道三段だっただけのことはある。
「装備の調整、もっとしっかりやっておくべきだったでござる……」
青い髪に眼鏡の神官、ダリルは首元のローブを指でつまみ、汗まみれの襟元を不快げに引っ張る。彼の背には回復と支援を主とした祈りの杖。その姿はまさしく後衛支援の要だったが、本人の表情は常に陰気で沈んでいる。
「水分管理を怠ると、集中力に影響が出る。ボクとしては、こういう環境での長期戦は避けたいところだね」
金髪をなびかせるナルシスト、アリスターは手鏡をひと撫でしながら、すぐに右手を魔法の杖へと戻す。テオドリック王国の元王子である彼は、実戦経験より礼儀作法に精通していたが、追放の冤罪により今ではすっかり戦場慣れしてきていた。
「オレは問題ねぇ! 筋肉にはこのくらいの暑さ、丁度いいストレッチだ!」
最後に笑い飛ばしたのは、黒髪の筋肉男、マスキュラー。剣士でありながら武器すら使わず素手でモンスターを殴り倒す豪傑だ。
「さて、地図によればこの先に“砂蛇の巣”ってのがあるらしいね。銀の牙が最後に目撃されたのもそこだ」
アリスターがダンジョンの地図を広げて指を走らせる。情報屋“ヴェルトから提供された地図は、敵の出現ポイントや罠の配置まで記されており、慣れていない者でも容易に探索できる。
「とはいえ、過信は禁物でござるよ。地図と現実は必ずしも一致しない……!」
「うん、そうだね。でも、焦らなければきっと助けられるよ!」
エリーゼの笑顔に、マスキュラーが拳を握る。
「おうよ! 困ってる奴がいるなら行くしかねぇだろ!」
そして――事件は起きた。
地図に載っていない砂嵐が、彼らの進路を阻んだのだ。
「これは……! 視界が!」
「くっ、魔法で風を分散させる! 《エア・ディスペル》!」
アリスターの詠唱により風が裂け、視界が戻る。その先に――銀の牙の一人、重装戦士の男が倒れていた。
「おい! 生きてるか!」
マスキュラーが駆け寄り、ダリルがすぐさま治癒魔法を施す。
「《癒しの光よ、傷を封ぜよ……ヒーリング・レイ》!」
柔らかな光が男の体を包み、ひときわ大きな息が漏れる。
「……助かった……あんたたちは……?」
「わたしたちはギルドの依頼で来たの。銀の牙、あなたたちを助けに!」
「他の仲間は?」
「東の砂丘地帯に向かったまま、戻らねぇ……たぶん、砂蛇に……」
男が語った情報を元に、エリーゼたちは進路を東へと定める。
砂を蹴立て、四人は再び走り出した。
そして――岩壁に囲まれた谷のような地形にたどり着いたときだった。
「……いた! あれは!」
巨大な砂蛇が、倒れたままの銀の牙の女戦士を呑み込もうとしていた。
「止めなきゃ!」
エリーゼが前に出ると、右腕が金色のオーラを纏う。
「《剣閃・金龍乱舞》!」
金の斬撃が砂蛇を裂き、その隙を突いてマスキュラーが突撃する。
「うおおおっ! 筋肉――ラリアットッ!!」
信じられない一撃により、砂蛇は体を半回転させながら地面に叩きつけられた。
「ボクも一発。《雷撃・連鎖球》!」
アリスターの魔法が蛇を麻痺させ、その間にダリルが女戦士を引きずり出す。
「無事でござる……! 浅い傷ばかり、今なら助かる……!」
そして、決着の一撃。
エリーゼとマスキュラーが同時に突撃し、金の剣と拳が砂蛇の頭を粉砕する。
静寂が訪れた。
「よし……もう1人救助完了。あとは令嬢かな」
アリスターが手鏡をのぞきながら、ふっと微笑む。
女戦士も目を覚まし、震える手で礼を述べた。
「ありがとう……あなたたち、名前は……?」
「わたしたちは、スプレーマム。困ってる人を見過ごさない、最近結成されたばかりの最強パーティよ」
エリーゼの言葉に、仲間たちが静かに頷く。
再び歩き出す。傷を癒えぬまま、それでも前へ。
冤罪で追われた者たちが、今――誰かを救っていた。
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