婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス

文字の大きさ
89 / 179

第89話 エリーゼ、金龍の力、解放ッ!!

しおりを挟む
【白炎の儀式】――偽りの聖火、真実の咆哮

朝焼けが聖都を照らし始める頃、マケドニア聖教国の聖堂中央では、年に一度の「白炎の儀式」が始まろうとしていた。

荘厳な聖歌が大聖堂に響き渡る中、白装束の司祭たちが整列し、中心には、天蓋つきの高座に腰掛けた大司教リュシアンの姿があった。

その頭上には、まばゆい白炎を宿した“神の燭台”が据えられていた。だが、その炎が純粋なる神意などではないと、すでに我らは知っている。その燭台に向けて生贄たちが3名ほど連行させれていた。彼らの魂を燭台に捧げるために。そして、その中に、ダリルの姿もあった。

――偽りの聖火。人々を惑わすために作られた、魔術結界による幻想。

そして今、その結界が崩壊の時を迎えようとしていた。

* * *

「スプレーマム、咲け」

アリスターの声が共鳴晶を通じて流れた、その瞬間だった。

地下回廊――エリーゼが第一結界の魔力核に向けて、強化された右拳を叩き込んだ。

「金龍の力、解放ッ!!」

轟音と共に閃光が走り、崩れ落ちる結界柱。青白く光る魔術回路が断裂し、振動が周囲の石壁を軋ませる。

結界の一角が崩れたことを確認したアリスターは、次に中央塔の魔力遮断層へと詠唱を打ち込む。

「<虚構を裂け、真実の眼>――エクス・ヴィジオ」

空間が歪み、塔の最上部に浮かぶ魔法陣が崩壊を始める。

その直後――

「うおおおおおおおッッ!!」

咆哮と共に聖堂外壁が爆ぜた。マスキュラが仕掛けた火薬玉が炸裂し、控室側の一角が激しく炎を上げる。警備兵たちは一斉に騒然となり、儀式の進行は混乱を極めた。

「敵襲!? いや、中からの爆発だ!」
「大司教を守れ、結界は!? ……破られているッ!?」

その隙を縫って、最後の役者が動いた。

祭壇裏、聖灰の間。

ヴェルトは隠し扉を通って壇上へと現れ、懐から取り出した小箱を高く掲げた。中には、クラリスが残した最後の“告発の記録”――魔術式で記された聖教国の不正の証があった。

「仮面の案内人ヴェルト ここに宣言する!」

魔術拡声を込めた叫びが、聖堂全体に響き渡る。

「リュシアン=バレスト大司教は、神の名を騙り、人々を惑わせる“魔族の共犯者”にして、数多の聖女を処刑した――偽りの聖徒なりッ!!」

会場が静まり返った。

リュシアンの表情が、初めて凍りつく。

「なに……を……?」

「証拠はここにある! クラリス殿の残した聖記録により、聖教国上層部と魔族との癒着が――明らかにされているッ!」

アリスターの魔術がそれを拡散する。空中に展開された光の映像に、クラリスが最後に語った言葉が映し出された。

『……私は神を否定しません。ただし、その名のもとに人を裁く“人”は、裁かれねばならない。私が消えようとも、どうか……真実を見てください』

――沈黙。そして、ざわめき。動揺。混乱。

「嘘だ……聖女クラリス様が……処刑されたのは、彼女が魔族だったからでは……?」

「神の教えではなかったのか……いや、誰かが作った“神の姿”を信じ込まされていただけでは……」

「沈黙ッ!!」

リュシアンが吠える。

「こやつの言葉に惑わされるな! これは冒涜! 反逆の徒だッ!」

その時には、まばゆい白炎を宿した“神の燭台”の前に仮面の案内人ヴェルトが移動していた。

「なら奇跡が起こるかどうか、見てみやがれ」

ヴェルトは、白炎を宿した“神の燭台に向けてクラリスの帳面を投げ入れた。それは一瞬で燃え広がり、そして、奇跡が起こった。

天空から神の燭台に向けて降り注ぐ一筋の神聖な光だった。

眩い輝きが天蓋を突き抜け、瓦礫に覆われた祭壇の中央に降り注ぐ。

「これは……なんだ?」
ヴェルトが眉をひそめる。

「魔術ではない……精霊でもない。もっと根源的な……」
アリスターが呟いた。

そのとき、黄金に染まる光の柱の中から、ふわりと人影が現れた。

ふわりと風が吹いた。

それは、淡い桃色の髪。優しい眼差し。そして、白い儀式衣に身を包んだ――クラリスだった。

「おお……クラリス、あんた……」
ヴェルトの仮面の奥からも、低く震える息が漏れた。

「……ありがとう。みなさん」

幽体のクラリスは、微笑みながら四人の冒険者の前に降り立つ。声は風のように優しく、だが確かな響きを持っていた。

「わたしの声を、信じてくれて……無実を証明してくれて……本当に、ありがとう」

エリーゼの目に涙が浮かぶ。
「クラリスさん……わたし、あなたのこと、知らなかったけど……でも、あなたの思いが、ずっと……!」

クラリスは頷く。そして、祭壇に置かれていた聖灰へと手を伸ばすと、そこからひとつの光球が生まれるとその光は、リュシアンへと飛んだ行き、彼の周りを包んでから消えた。

「リュシアン、あなたの防御結界は失われました」

「いまだ!」
エリーゼが疾駆し、神速の一閃を叩き込む。

 リュシアンが吹き飛び、膝をつく。

 その顔に浮かぶは、怯えか、憤怒か、それとも狂気か。

 「――だが、残念だったな」

 不気味な笑みを残し、彼が呟いた瞬間。

 聖灰殿の扉が爆ぜ飛ぶように開く。

 重々しい足音。響く金属音。

 現れたのは、一人の女騎士。銀の鎧、赤きマント。鋼の眼差しがスプレーマムを射抜く。

 「侵入者を排除する……聖教国マケドニア騎士団、団長――マセロナ・グレイヴ、推参!」

 その背後には、神殿騎士たちが整列していた。

 リュシアンが笑う。「さあ、反逆者ども。ここからが――お前たちの地獄だ」

 空気がぴんと張り詰める。

 再び、戦いの幕が上がる。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。

向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。 幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。 最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです! 勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。 だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!? ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...