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第100話 5人の結婚式 わたし、なんだか、夢みたい
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白い鐘の音が、静かに教会の天蓋を揺らした。
マケドニアの空は晴れ渡り、澄んだ青の中に雲ひとつなかった。朝露に濡れた石畳が、陽光を受けてきらめいている。教会の庭先には簡素ながらも丁寧に飾られた白花とリボンが揺れ、信徒たちが距離を置いて見守るなか、式は静かに始まろうとしていた。
祭壇の前に立つのは、青髪に眼鏡をかけた神官――ダリル=ベルトレイン。厳かな面持ちで手を組み、神へ祈りを捧げている。その背後、木製の長椅子には、マスキュラーが緊張した面持ちで座っていた。筋骨隆々な体に、普段見せないほどきちんとした礼装。彼の隣には、薄く微笑む仮面の案内人――ヴェルトが静かに佇んでいた。
そして扉が静かに開いた。
先に姿を現したのは、金の髪を光に照らしながら歩く青年、アリスター。胸元に紅のブローチを添えた正装は彼の気品を際立たせ、どこか誇らしげに歩を進める姿は、自らを「ボク」と称する彼らしい華やかさがあった。だがその目は、真っ直ぐに前を見据えていた。
アリスターの立つ位置に合わせて、祭壇の左右が整えられた。
そして、もう一つの扉が開く。
光の中から現れたのは、桃色の髪を編み上げ、聖女のドレスを纏った少女――エリーゼだった。純白に包まれたその姿は、ただの“剣聖”ではなく、清らかさと凛とした美しさを纏った、ひとりの“花嫁”だった。
「……わたし、なんだか、夢みたい」
エリーゼはそう呟くと、ゆっくりとバージンロードを歩き出す。その足元を支えるのは、かつて聖女アイリスが用意した、誰にも着られなかった祝福の衣。その布地が、今日という日の光を受けて、静かに揺れていた。
マスキュラーは、まばたきもせずその姿を見つめていた。拳を握り、胸の奥がじんわりと温かく、そして切なくなるのを感じていた。
「……似合ってるぜ、エリーゼ」
誰にも届かぬ声で、そう呟いた。
やがてエリーゼはアリスターのもとにたどり着き、二人は静かに並び立つ。
ダリルは一歩前に出て、ゆっくりと口を開いた。
「ここに集いし者たちよ。神の御前において、二人の結びを見守り、祝福しよう。――アリスター・グランベリオ、汝はこの者を生涯の伴侶とすることを誓うか?」
アリスターはいつもの軽口を封じ、深く頷いた。
「ボクの魔法に最初に心を寄せてくれたこの人に、すべてを誓うよ。彼女が剣を捨てたくなったときは、ボクが代わりに闘う。彼女が笑いたいときは、誰よりもふさわしい言葉を贈る。だから……誓う。ずっと、一緒に」
次に、ダリルはエリーゼに問うた。
「エリーゼ=アルセリア。汝はこの者を、生涯の伴侶とすることを誓うか?」
エリーゼは、微笑んでアリスターを見つめた。
「うん。わたし、あなたに救われた。この世界に来て、何度も挫けそうになった。でも、あなたがそばにいてくれたから、わたしは剣を振り続けられた。これからは……あなたの隣で、生きていきたい」
ダリルは、軽く頷くと、聖書を閉じた。
「ならば、神の名において、この結びを祝福する。汝ら、ここに夫婦となることを宣言する」
祝福の鐘が鳴った。
白鳩が舞い、花びらが舞い落ちる中、アリスターはエリーゼの手を取って、そっと口づけを落とした。教会に集まった人々から、小さな歓声と拍手が起こる。
マスキュラーは、それを見届けた瞬間、そっと視線を落とした。
その横顔を、ヴェルトは仮面越しに見つめていた。
「……それでいいのか」
低く、囁くような声。
「……あいつが幸せなら、それでいい」
マスキュラーは答えた。自分に言い聞かせるように。
「俺の気持ちは、きっと誰にも届かねぇ。でも、それでいい。こうして、見守れる場所にいられるんだ。それが、オレにとっての……答えだ」
ヴェルトは、何も言わなかった。ただ、静かに肩を叩いた。
式の後、アリスターとエリーゼは仲間たちに囲まれ、小さな祝宴が開かれた。持ち寄った料理に、手作りのワイン。マスキュラーの焼いた鹿肉が大人気で、エリーゼは「これが一番おいしい!」と笑っていた。
その笑顔を見て、マスキュラーはまた心の奥で呟いた。
(そうだ、それでいい。……俺は、あいつの“剣”でいられるなら)
日が落ち、祝宴の終わりが近づいた頃、ヴェルトがふと口を開いた。
「……まるで、夢のようだな」
「そうですね」と、ダリルが微笑んで応えた。
「けれど、これは現実です。皆が歩いてきた現実の先に、ようやく辿り着いた、一つの祝福です」
アリスターとエリーゼは、手を取り合ってその中央にいた。
“家族”とは違う、“仲間”とも少し違う、“絆”の形。
それが確かに、今日、結ばれた。
マケドニアの空は晴れ渡り、澄んだ青の中に雲ひとつなかった。朝露に濡れた石畳が、陽光を受けてきらめいている。教会の庭先には簡素ながらも丁寧に飾られた白花とリボンが揺れ、信徒たちが距離を置いて見守るなか、式は静かに始まろうとしていた。
祭壇の前に立つのは、青髪に眼鏡をかけた神官――ダリル=ベルトレイン。厳かな面持ちで手を組み、神へ祈りを捧げている。その背後、木製の長椅子には、マスキュラーが緊張した面持ちで座っていた。筋骨隆々な体に、普段見せないほどきちんとした礼装。彼の隣には、薄く微笑む仮面の案内人――ヴェルトが静かに佇んでいた。
そして扉が静かに開いた。
先に姿を現したのは、金の髪を光に照らしながら歩く青年、アリスター。胸元に紅のブローチを添えた正装は彼の気品を際立たせ、どこか誇らしげに歩を進める姿は、自らを「ボク」と称する彼らしい華やかさがあった。だがその目は、真っ直ぐに前を見据えていた。
アリスターの立つ位置に合わせて、祭壇の左右が整えられた。
そして、もう一つの扉が開く。
光の中から現れたのは、桃色の髪を編み上げ、聖女のドレスを纏った少女――エリーゼだった。純白に包まれたその姿は、ただの“剣聖”ではなく、清らかさと凛とした美しさを纏った、ひとりの“花嫁”だった。
「……わたし、なんだか、夢みたい」
エリーゼはそう呟くと、ゆっくりとバージンロードを歩き出す。その足元を支えるのは、かつて聖女アイリスが用意した、誰にも着られなかった祝福の衣。その布地が、今日という日の光を受けて、静かに揺れていた。
マスキュラーは、まばたきもせずその姿を見つめていた。拳を握り、胸の奥がじんわりと温かく、そして切なくなるのを感じていた。
「……似合ってるぜ、エリーゼ」
誰にも届かぬ声で、そう呟いた。
やがてエリーゼはアリスターのもとにたどり着き、二人は静かに並び立つ。
ダリルは一歩前に出て、ゆっくりと口を開いた。
「ここに集いし者たちよ。神の御前において、二人の結びを見守り、祝福しよう。――アリスター・グランベリオ、汝はこの者を生涯の伴侶とすることを誓うか?」
アリスターはいつもの軽口を封じ、深く頷いた。
「ボクの魔法に最初に心を寄せてくれたこの人に、すべてを誓うよ。彼女が剣を捨てたくなったときは、ボクが代わりに闘う。彼女が笑いたいときは、誰よりもふさわしい言葉を贈る。だから……誓う。ずっと、一緒に」
次に、ダリルはエリーゼに問うた。
「エリーゼ=アルセリア。汝はこの者を、生涯の伴侶とすることを誓うか?」
エリーゼは、微笑んでアリスターを見つめた。
「うん。わたし、あなたに救われた。この世界に来て、何度も挫けそうになった。でも、あなたがそばにいてくれたから、わたしは剣を振り続けられた。これからは……あなたの隣で、生きていきたい」
ダリルは、軽く頷くと、聖書を閉じた。
「ならば、神の名において、この結びを祝福する。汝ら、ここに夫婦となることを宣言する」
祝福の鐘が鳴った。
白鳩が舞い、花びらが舞い落ちる中、アリスターはエリーゼの手を取って、そっと口づけを落とした。教会に集まった人々から、小さな歓声と拍手が起こる。
マスキュラーは、それを見届けた瞬間、そっと視線を落とした。
その横顔を、ヴェルトは仮面越しに見つめていた。
「……それでいいのか」
低く、囁くような声。
「……あいつが幸せなら、それでいい」
マスキュラーは答えた。自分に言い聞かせるように。
「俺の気持ちは、きっと誰にも届かねぇ。でも、それでいい。こうして、見守れる場所にいられるんだ。それが、オレにとっての……答えだ」
ヴェルトは、何も言わなかった。ただ、静かに肩を叩いた。
式の後、アリスターとエリーゼは仲間たちに囲まれ、小さな祝宴が開かれた。持ち寄った料理に、手作りのワイン。マスキュラーの焼いた鹿肉が大人気で、エリーゼは「これが一番おいしい!」と笑っていた。
その笑顔を見て、マスキュラーはまた心の奥で呟いた。
(そうだ、それでいい。……俺は、あいつの“剣”でいられるなら)
日が落ち、祝宴の終わりが近づいた頃、ヴェルトがふと口を開いた。
「……まるで、夢のようだな」
「そうですね」と、ダリルが微笑んで応えた。
「けれど、これは現実です。皆が歩いてきた現実の先に、ようやく辿り着いた、一つの祝福です」
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それが確かに、今日、結ばれた。
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