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第158話 マスキュラ―、ダリルからの話、内心、ムカッ!
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昼下がりの訓練場。日差しが高く、肌に当たる光が心地よい。木剣を振るった後、俺――マスキュラーは、汗をぬぐって腰を下ろした。
そこへ、ぼさぼさの青髪と気弱そうな眼鏡姿の男が、やけにおとなしく歩いてきた。
「……よぉ、マスキュラー殿。少し、話せるか」
声の主は、スプレーマムの仲間、ダリル=ベルトレイン。最近何かと思いつめた顔をしていたが、今もその表情は浮かない。
「おう、いいぜ。どうせ休憩するつもりだったしな。悩みごとってやつか?」
「……うむ。あの、その……拙者、昨日……告白されたのだ」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。だが、数秒後に脳内で意味が繋がり、俺は吹き出した。
「な、なにぃ!? 自慢かよ、おい!」
「ち、違う! 自慢などでは……いや、そう聞こえるのは理解しているが……しかし、あの、相手が……ルシア殿なのだ」
ルシア、アリスターの妹。王家の誇り高き令嬢。品があって、気さくで、優しくて……正直、俺も初対面のときは見惚れたくらいだ。
「……まじかよ」
俺が目を丸くすると、ダリルは目を伏せた。
「拙者も、最初は信じられなかった。しかし、あれは……真剣な眼差しだった。冗談でも同情でもない。ルシア殿は、心から拙者に……」
「お前も……まんざらじゃないんだな」
言いながら、俺は気づいていた。こいつの頬が、うっすら赤いことに。
「……好きだ。好きになってしまったのだ、拙者は」
吐き出すような声だった。胸の奥にずっと押し込んでいた想いを、ようやく口にできたというような。
「じゃあ、答えは決まりじゃねぇか。ルシア嬢もお前が好きで、お前もそうだ。両想いってやつだ。おめでと――」
「だめだ」
「……は?」
「こんな自分では、彼女を幸せにはできない。拙者は過去に縛られていて……いまだに聖教国で犯した『誤解』すら背負いきれていない。王家の妹君に相応しい男ではないのだ」
静かだった。風の音すら消えたような沈黙のあと、俺は、拳をぎゅっと握った。
「……おい、ダリル。お前、それ本気で言ってんのか?」
「……本気だ。好きというだけで、彼女を巻き込むわけにはいかない」
「馬鹿野郎」
俺は、真正面からそう言った。
「お前はな……すげえ奴だよ。どんなに打ちのめされても、立ち上がって、人のために祈って、助けて……。誰かの幸せを願えるやつが、最低の男なわけあるか」
ダリルは、ぽかんとしていた。
「ルシア嬢が惚れたのは、そういうお前なんだよ。過去も、弱さも、全部含めて。それを否定するのは、ルシア嬢の気持ちを否定するのと同じだ」
しばらくの沈黙。そして、ダリルは絞るように言った。
「それでも……拙者は……彼女の幸せを、願いたい。自分ではない誰かと結ばれる未来の方が、彼女のためになるのなら……拙者は、その背を、押す」
「……恋ってのはよ、めんどくせえな」
俺は、空を仰いで笑った。
「俺も……恋をしてる。言ってねえけど、たぶんバレてる気もする」
「……」
「でもな、俺も同じなんだ。好きだからこそ、あの子には笑っててほしい。それが俺じゃなくてもいい……そう思ってる。いや、思い込もうとしてるだけかもな」
風が、通り抜けた。
「……ダリル。お前が決めた道なら、俺は応援する。だけど一つだけ言わせろ」
「……何を?」
「自分を過小評価すんな。お前は、誰よりも、誠実で、強い男だ。……自分を好きになれとは言わねえ。でも、お前を好きな人の想いだけは、否定すんなよ」
ダリルは、瞳を伏せて、小さく頷いた。
「……ありがとう。マスキュラー殿」
「ったく、殿はやめろっての」
二人で、苦笑した。
俺たちは、まだ迷ってる。答えなんて出ない。
だけど、この想いだけは、きっと嘘じゃないんだ。
そこへ、ぼさぼさの青髪と気弱そうな眼鏡姿の男が、やけにおとなしく歩いてきた。
「……よぉ、マスキュラー殿。少し、話せるか」
声の主は、スプレーマムの仲間、ダリル=ベルトレイン。最近何かと思いつめた顔をしていたが、今もその表情は浮かない。
「おう、いいぜ。どうせ休憩するつもりだったしな。悩みごとってやつか?」
「……うむ。あの、その……拙者、昨日……告白されたのだ」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。だが、数秒後に脳内で意味が繋がり、俺は吹き出した。
「な、なにぃ!? 自慢かよ、おい!」
「ち、違う! 自慢などでは……いや、そう聞こえるのは理解しているが……しかし、あの、相手が……ルシア殿なのだ」
ルシア、アリスターの妹。王家の誇り高き令嬢。品があって、気さくで、優しくて……正直、俺も初対面のときは見惚れたくらいだ。
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俺が目を丸くすると、ダリルは目を伏せた。
「拙者も、最初は信じられなかった。しかし、あれは……真剣な眼差しだった。冗談でも同情でもない。ルシア殿は、心から拙者に……」
「お前も……まんざらじゃないんだな」
言いながら、俺は気づいていた。こいつの頬が、うっすら赤いことに。
「……好きだ。好きになってしまったのだ、拙者は」
吐き出すような声だった。胸の奥にずっと押し込んでいた想いを、ようやく口にできたというような。
「じゃあ、答えは決まりじゃねぇか。ルシア嬢もお前が好きで、お前もそうだ。両想いってやつだ。おめでと――」
「だめだ」
「……は?」
「こんな自分では、彼女を幸せにはできない。拙者は過去に縛られていて……いまだに聖教国で犯した『誤解』すら背負いきれていない。王家の妹君に相応しい男ではないのだ」
静かだった。風の音すら消えたような沈黙のあと、俺は、拳をぎゅっと握った。
「……おい、ダリル。お前、それ本気で言ってんのか?」
「……本気だ。好きというだけで、彼女を巻き込むわけにはいかない」
「馬鹿野郎」
俺は、真正面からそう言った。
「お前はな……すげえ奴だよ。どんなに打ちのめされても、立ち上がって、人のために祈って、助けて……。誰かの幸せを願えるやつが、最低の男なわけあるか」
ダリルは、ぽかんとしていた。
「ルシア嬢が惚れたのは、そういうお前なんだよ。過去も、弱さも、全部含めて。それを否定するのは、ルシア嬢の気持ちを否定するのと同じだ」
しばらくの沈黙。そして、ダリルは絞るように言った。
「それでも……拙者は……彼女の幸せを、願いたい。自分ではない誰かと結ばれる未来の方が、彼女のためになるのなら……拙者は、その背を、押す」
「……恋ってのはよ、めんどくせえな」
俺は、空を仰いで笑った。
「俺も……恋をしてる。言ってねえけど、たぶんバレてる気もする」
「……」
「でもな、俺も同じなんだ。好きだからこそ、あの子には笑っててほしい。それが俺じゃなくてもいい……そう思ってる。いや、思い込もうとしてるだけかもな」
風が、通り抜けた。
「……ダリル。お前が決めた道なら、俺は応援する。だけど一つだけ言わせろ」
「……何を?」
「自分を過小評価すんな。お前は、誰よりも、誠実で、強い男だ。……自分を好きになれとは言わねえ。でも、お前を好きな人の想いだけは、否定すんなよ」
ダリルは、瞳を伏せて、小さく頷いた。
「……ありがとう。マスキュラー殿」
「ったく、殿はやめろっての」
二人で、苦笑した。
俺たちは、まだ迷ってる。答えなんて出ない。
だけど、この想いだけは、きっと嘘じゃないんだ。
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