《書籍化》転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか

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82 おばあちゃんの思い

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サーヤたちの大切なものを守ってくれた人がいた。

『おばあちゃん以外にも優しい人がいたんですね』
 『良かった』

その事に皆ほっとすると共に、サーヤのためにそこまでしてくれたことに感謝する。

〖ええ。本当ね。ただ、処分しようか迷ったものがあると…それがもし、誰の説明もなくサーヤの手に渡ってしまったら、悔やんでも悔やみきれないと、涙ながらに訴えたそうよ〗

『そうか、それが』
『証拠ですね』
アルコンとギンが重々しく呟くと、ジーニ様も頷く。

〖そう。もし、将来、母親と再び対峙した時に備えて残していたらしいの。写真や、診断書とかね。つい目を背けてしまうほどむごい姿だったらしいわ。おばあちゃんのその時の手記も残っていたそうよ〗

手記に向けたジーニ様の目には、複雑な色が混ざっていた。
サーヤに起こったことへの怒りや悲しみ。
サーヤを守ろうとしてくれたおばあちゃんと、お隣のおじさんへの感謝と無念、それに母親への怒り。
何よりサーヤを守れなかった自分への怒りと後悔…

『それは、確かにまだ見せる物ではないですね。ただ、この先サーヤの記憶が戻ってしまった時のことを思えば、処分せず保管した方がいいかもしれないですな』ぐうう⋯
ギンが唸りながら言う。

〖そうなのよ。主神も処分しようかと思ったらしいのだけど 、一緒に残された手記を見てやめたそうよ。おばあちゃんの強い思いが書かれているのですって〗
ジーニ様は感情が漏れないように淡々と応える。

『ジーニ様、それを見せてもらっても?』
アルコンが頼むと

〖…おばあちゃんの、手記だけなら。他は見ない方がいいと思うわ〗
ジーニ様の声は深く沈み眉間にシワがよる。いくら感情が漏れないように我慢しようとも、耐えられない物がそこにある。握り潰したいほどに。

『分かりました。お願いします』
震えるジーニ様の手から手記を受け取り、皆にも見えるように開く。

    その手記には所々涙で滲んだ跡があった。異世界の文字だが、神の力で皆にも読めるようになっている。アルコン様が代表して読み上げ始める。


  「今日、たった一人の孫の居場所がようやく分かった。愛する息子の大切な忘れ形見。
    調べた住所を訪ねると、何日も留守なのか郵便受けは郵便物で溢れ返っていた。だが、嫌な予感がしてドアに耳を当て、中の音に必死に耳を澄ますと部屋の中から小さな物音がした。
    私は交番に駆け込み、警官二人と共に部屋に入った。
そこにいたのは間もなく2歳になるはずの孫だった。だが、その姿は到底言葉で表すことは出来なかった。慌てて駆け寄ったが、二歳とは思えない小さな体に浮き上がった骨、身体中アザだらけ、やけどもしていて辛うじて息をしているようだった。
救急車を呼んでくれた警官が、
『これはあまりにも酷い。今のうちにご自身でも証拠写真を取った方がいい』
と、助言をくれた。言い逃れできないようにと。
『孫についていないと』
と言うと、もう一人の警官が見ているからと。
警官も協力してくれて、孫と部屋の様子を写真に収めた。病院でも写真やレントゲン、診断書など母親に握りつぶされないよう手配してくれた。ありがたい。
駆けつけてくれた児童相談所の人と一緒に、医者から容態を聞くと、きちんと食事もしていないのは明らかで、体重も一歳児程もない。暴力も受けているため非常に危ない状況だ。助かったとしても、障害が出るだろうと言われた。この先どうするか考えて欲しいと。
決まっている。この子は息子が残した唯一の孫。私が守る。障害があると言うなら人並みに生活できるように育てよう。
    警察から母親は、戻ってきたら警察がいることに気づき、男と逃げたと謝られた。
いつか母親が舞い戻って来るかもしれない。集められる証拠は集めておきたい。戦えるように。
    この子には楽しい思い出が残るようにしてあげたい。明るく健康な子に。私ができる精一杯以上のことをしなくては。これから忙しくなる。
でも何より、神様。いらっしゃるならこの子の命を助けてください。どうか、どうか」

そこには、おばあちゃんの強い思いと決意、そして、切なる願いが綴られていた。
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