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連載
ある日のガーガー日記 番外編
しおりを挟む今日も元気にお仕事だ!がーがー。
私たちは鴨。正確には合鴨。前の世界で合鴨農法という、自然にも人にも優しい方法で米を作るため、ご主人に飼われていた。
美味しいご飯は食べ放題。運動も安全に出来、かわいい友達も遊びに来る。素晴らしい環境だった。だったのだ。
そして、今は
「がーがーしゃんちゃち~!おあようごじゃいましゅ!きょうも、おちゅとめ、ごくりょうしゃまでしゅ!」ビシッ
田んぼの畔からビシっと敬礼している小さい友だち。
一度は離れ離れになってしまったが、新しい世界でまたかわいい友達、サーヤたちと暮らしている。ご主人も一緒だ。このご主人、若返りすぎて、子供たちなど
『だれこれ!?』
『ご主人が消えちゃったよ~!』
『ぼくたちも消されちゃう!?』
『逃げろ~!』
『『『『わ~っ』』』』
などと、大騒ぎだった。正直、ちょっと迷惑だったぞ。
「がーがーしゃんちゃち~!みちぇ~♪」
ん?なんだ?お~今日のその姿は!
「きぬしゃんが、ちゅっくってくれちゃにょ~♪」
くるっと一回りして楽しそうに見せてくれるサーヤは、白いTシャツに真っ赤なオーバーオールとかいうやつに、長靴。首からはタオルをかけ、大きな麦わら帽子を被っていた。オーバーオールの胸元には、ひよこだろうか?小鳥の形のポケットがついている。
『似合ってるぞ』
「えへへ~♪」
なんだかお尻が大きくて赤いひよこのようにも見えるがな。
『あら。ばかね。そのおしりが可愛いんじゃない』
『色も目立っていいじゃない』
『そうだな。青いデニムだと目立たない』
仲間たちの言う通り。そうなのだ。この世界、栄養がいいのか、稲があっという間に育つのだ。しかも、青々と、しかも、デカい。
『たしかに、目立った方がいいな』
だが、色が目立っても
「きょうは、さーやも、おてちゅだい!がんばりゅよ!」ふんっ
ない力こぶを作って張り切っているが、サーヤより稲がでかいんだが…大丈夫か?
『オイラたちも手伝うんだな』
『サーヤちゃんには、必ず誰かが一緒にいるんだな』
『わたちもいるだよ』
何やらサーヤと色違いのカッコをしているモグラがサーヤのお守りをしてくれるようだ。 この間も手伝ってくれた兄弟だな。それなら安心か。
『あら。かわいいわね』
『カラフルなおしりがぷりぷりね』
『後ろ姿がそっくりだな』
これは、作ったやつ、狙ったな。
「ぽぽちゃん、たんぽぽいりょ、つくしちゃん、あおいりょ、なずなちゃん、ぴんく♪みんにゃ、かわい♪」
そうだな。たしかにかわいいな。
『サーヤもみんなも、かわいいわよ』
「えへへ~♪かわい?」くるんっ♪
『そ、そんな、かわいいだなんて』くねくね
『ちょっとはずかしいだよ』てれてれ
『わたちはみんなおそろい、うれしいだよ』くるんっ♪
「さーやみょ、おしょろい、うれち♪」くるんっ♪
うん。かわいいな。
『それで、サーヤは何を手伝ってくれるの?』
「う?ざっしょう、とりゅ!」ふんすっ
またまた、ない力こぶを作って鼻息荒くしてるな。だが
『お~それはありがたいな』
『でも、大変よ?』
『大丈夫?』
そう。サーヤには大変なはずだが
「うに?」こてん
ん?分からないようだな。これはもしや
『ご主人から聞いてないのか?』
『ここの雑草は手強いぞ』
『普通に生えてるのもいるけどね?逃げるのよ』
「ほえ?」
やはり聞いてないのか。
そうなのだ。この世界、まさかの草が泳いで逃げるのだ。
『しかも、それが活きがいいからか、おいしいのよ』
『だから、見てみろ』
「うにゅ?」
そう、少し離れたところでは
『まて~』
『まて~』
『そっち行ったぞ~』
『あっ!また逃げた~』
シュバババババババッ
「ふおぉっ!」
チビたちが逃げる雑草を追いかけている。けっこうなスピードが出ているな。
『あんな感じだな』
『サーヤ、無理してあれを追いかけることないからね』
『あれは私たちに任せて』
『サーヤは普通のを頼む』
「あい!」ビシッ
うん。まあ、大丈夫だろう⋯
『それじゃ、はじめるか』
「お~!」
『『『がんばるんだな』』』
それからみんなしばらく、もくもくと雑草を食べた。
サーヤたちはきゃーきゃーいいながら雑草を抜いては戻ってきた子供たちに食べさせている。
その時、
「うにゅ?」
サーヤがたまたま掴んだ雑草が…
「うきゃ~あぁぁ!ぶぶぶっ」ズザザザザッ
サーヤに掴まれたまま逃げたっ。サーヤを引きずりながら
『『『わあーっサーヤちゃ~んっ』』』ばしゃばしゃっ
『サーヤ!手を離せ~っ!』バシャバシャっ
もぐらの兄弟とご主人が叫ぶが、パニック状態のサーヤは離せずに水の中を引きずられている。みんな慌てて追いかけるが追いつけない。
「うぶぶぶぶっ」ズザザザザッ
『サーヤーっ』
周りからも騒ぎを聞き付けたのか色々集まってきた。
〖きゃーっサーヤ!?〗
『あれは…青葉!月草!千草!薄花!あれを止めて!』
結葉様が青葉さんたちに指示を出すと
『『『『はい!その草!止まれ~っ!』』』』
その瞬間、ピタッ!と停止した雑草。だが、サーヤは急に止まれない!ピタッと止まられた反動で勢いがついた体は一回転して今度はポーンと空中へ!
「うきゃああああっ」ぽーん
『サーヤーっ』
『『『サーヤちゃ~んっ』』』
ご主人と、もぐらたちが叫ぶが、サーヤは手の届かぬ空中に!
すると、最近来たエルンスト様とかいう神が何かを投げた!
ぷよんっ!ぷよよん!投げられたのは銀色のスライムことアル!アルはその体を広げサーヤを包み込んだ!ぽよん。そのまま落ちるところをドラゴンの翼を広げた男が受け止め地上へ。アルコン様とか言ったか。助かった。
みんなでサーヤの所へ急ぐと、何が起こったのかイマイチ分かっていないサーヤが泥だらけの顔で呆然としていた。手にはしっかり原因となった水草を握っている。
『サーヤっ大丈夫か?』
『『『サーヤちゃんっ』』』
ご主人とモグラの兄弟が名前を呼ぶと
「ほえ?」
と、間抜けな声を出すサーヤ。まったく肝が冷えたぞ。
『サーヤ、それが逃げる雑草だぞ』
「うに?」
やっと、手に握っているものに気がついたようだ。
『まったく!そんなもん離せ!危ないだろが!』
「あい。ごめしゃい」
まったく、ちゃんと懲りてくれればいいが。
『それで、これはなんだったんだ?』
ご主人がサーヤから受け取って鑑定すると
『すいすい…葛?』
「くじゅ?…みじゅまんじゅう?」
ん?
『しかも、高級葛?』
「こーきゅーみじゅまんじゅう?」じゅるり。
サーヤ口元が⋯
『地上に生える葛より高級。ただし、大変珍しく見つけるのは困難?』
ご主人の目が光って⋯
鑑定というのはそんなことまで分かるのか?
「がーがーしゃん?」
なんだ?サーヤが迫ってきたぞ?
『これ、よくあるのか?』
ん?ご主人までどうしたというのだ?
『それはたまに見るな』
『そうね。逃げる雑草は何種類かいるけど』
『そのツルっぽいのは時々ね』
みんなで伝えるがなんだ?ご主人の顔が⋯
『そうか、たまに…』
「ちゃまに…」
な、なんだ?
『「ふふ、ふふふ」』
こ、怖いぞ
『さあ、サーヤ行こうか』
「あい!みじゅまんじゅうのちゃめに!」
は?行く?水まんじゅう?
『『『『え~!!』』』』バタバタっ
『『『待つんだな~!』』』
〖サーヤはダメでしょう!〗
まったくだ!今酷い目にあったばかりだろうに
『「ちっ」』
『チッ』ではない。まったくこの二人は何を考えているんだ⋯世話がやける主人と友達を持つと苦労する⋯はぁ。
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