30 / 72
第5章 部長! その子はいったい?
6
しおりを挟む
「おっと」
そのとき、おぼつかない足取りで歩いていた男の子が部長の目の前で転んだ。
2歳ぐらいかな。一瞬、何が起こったのか分からないっていう顔をしたあと、突然、ぐわっと口を開けて、大泣きしはじめた。
すると部長は、すっとその子を抱きあげ、背中をさすってあやし始めた。
「ほら大丈夫だ。もう痛くないだろう」
男の子はすぐに泣き止み、安心しきった顔で部長に体を預けた。
わ、すごいな。部長。
わたしの顔も思わずほころぶ。
子供に好かれる人なんだ、部長。
なんか、こういう場面に触れると、わたしのなかの彼が、どんどん更新されていく。
そして、ごくごく自然に、ふわっとある考えが頭に浮かんできた。
こんな人と一緒に子供を育てられたら幸せだろうな……と。
えっ、何、考えた? 今。
はっとして、慌てて今の考えを打ち消した。
いやいやいや、ないって、それは。
そりゃ、最近、部長、ちょっとカッコいいかなとか思ったりはするけど。
第一、わたしなんかを相手にしてくれる人じゃないし。
いやいや、相手も何も、別に片想いしてるわけでも……
あー、考えれば考えるだけ、ドツボにハマりそう。
人知れずあたふたしていたら、香穂ちゃんが「楽しかったー」と言いながら戻ってきた。
「あれ、その子誰?」
香穂ちゃんが訊くと同時に、お母さんらしき人がやってきた。
「すみません。ちょっと目を離したらいなくなってしまって」
「いえ」
部長が母親の手に男の子を渡そうとすると、男の子はイヤイヤするように首を振る。
その様子を見ていた香穂ちゃんがポツっとつぶやいた。
「明もさあ、彰ちゃんに抱っこされんの、すっごい好きなんだよね」
「そうなんだ」
香穂ちゃんはわたしの手をひっぱり、見上げてきた。
すっかり打ち解けてくれたみたいだ。
「ねえ、花梨お姉さん。あっちの『お人形の町』行きたい」
「うん、一緒に遊ぼっか」
香穂ちゃんは嬉しそうに「うん」と頷いた。
そのとき、おぼつかない足取りで歩いていた男の子が部長の目の前で転んだ。
2歳ぐらいかな。一瞬、何が起こったのか分からないっていう顔をしたあと、突然、ぐわっと口を開けて、大泣きしはじめた。
すると部長は、すっとその子を抱きあげ、背中をさすってあやし始めた。
「ほら大丈夫だ。もう痛くないだろう」
男の子はすぐに泣き止み、安心しきった顔で部長に体を預けた。
わ、すごいな。部長。
わたしの顔も思わずほころぶ。
子供に好かれる人なんだ、部長。
なんか、こういう場面に触れると、わたしのなかの彼が、どんどん更新されていく。
そして、ごくごく自然に、ふわっとある考えが頭に浮かんできた。
こんな人と一緒に子供を育てられたら幸せだろうな……と。
えっ、何、考えた? 今。
はっとして、慌てて今の考えを打ち消した。
いやいやいや、ないって、それは。
そりゃ、最近、部長、ちょっとカッコいいかなとか思ったりはするけど。
第一、わたしなんかを相手にしてくれる人じゃないし。
いやいや、相手も何も、別に片想いしてるわけでも……
あー、考えれば考えるだけ、ドツボにハマりそう。
人知れずあたふたしていたら、香穂ちゃんが「楽しかったー」と言いながら戻ってきた。
「あれ、その子誰?」
香穂ちゃんが訊くと同時に、お母さんらしき人がやってきた。
「すみません。ちょっと目を離したらいなくなってしまって」
「いえ」
部長が母親の手に男の子を渡そうとすると、男の子はイヤイヤするように首を振る。
その様子を見ていた香穂ちゃんがポツっとつぶやいた。
「明もさあ、彰ちゃんに抱っこされんの、すっごい好きなんだよね」
「そうなんだ」
香穂ちゃんはわたしの手をひっぱり、見上げてきた。
すっかり打ち解けてくれたみたいだ。
「ねえ、花梨お姉さん。あっちの『お人形の町』行きたい」
「うん、一緒に遊ぼっか」
香穂ちゃんは嬉しそうに「うん」と頷いた。
13
あなたにおすすめの小説
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
運命には間に合いますか?
入海月子
恋愛
スペイン建築が大好きな設計士
大橋優那(おおはし ゆな) 28歳
×
せっかちな空間デザイナー
守谷翔真(もりや しょうま) 33歳
優那はスペイン建築を学ぶという夢が実現するというときに、空間デザイナーの翔真と出会った。
せっかちな彼は出会って二日目で優那を口説いてくる。
翔真に惹かれながらも、スペインに行くことが決まっている優那はその気持ちに応えられないときっぱり告げた。
それでも、翔真はあきらめてくれない。
毎日のように熱く口説かれて、優那は――
花も実も
白井はやて
恋愛
町で道場を営む武家の三男朝陽には最近、会うと心が暖かくなり癒される女性がいる。
跡取り問題で自宅に滞在したくない彼は癒しの彼女に会いたくて、彼女が家族と営む団子屋へ彼は足しげく熱心に通っているのだが、男と接客している様子を見ると謎の苛立ちを抱えていた。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
冷徹社長の「契約」シンデレラ~一夜の過ちから始まる溺愛ルート!? 嘘つきな私と不器用な御曹司のオフィスラブ~
藤森瑠璃香
恋愛
派遣社員の桜井美月は、ある夜、会社の懇親会で泥酔し、翌朝目覚めると隣には「氷の彫刻」と恐れられる若き社長・一条蓮がいた。まさかの一夜の過ち(実際には何もなかったが、美月は勘違い)に青ざめる美月に、蓮は「責任は取る。だがこれは恋愛ではない、契約だ」と、彼の抱えるある事情のため、期間限定で恋人のフリをするよう持ちかける。破格の報酬と蓮の真剣な様子に、美月は契約を受け入れる。
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
譲れない秘密の溺愛
恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる