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第1章 怪しげな依頼
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「どうぞ」
30分ほどしてやってきた男を目にしたとたん、OKしたことを後悔した。
(やっぱ、とんでもなく危ない仕事じゃないの、これって)
にこりともせず、黒の高級国産車の後部ドアのそばに立っていたのは、真っ黒な髪を七三分けのオールバックにした長身の男性。
すっとナイフを入れたような切れ長の目はするどく、鼻筋が通り、唇も薄い。
はっきり言って、昔のヤクザ映画とかVシネマなんかに出てきそうなご面相。
酒井さーん。マジで反社会勢力とかじゃないよねー。
不安を覚えたわたしは、車の扉に手をかけたまま、未練がましく事務所のほうに顔を向けた。
酒井さんは、窓から顔をのぞかせて、例のニコニコ顔で手を振っている。
もう、せめて面接ぐらい一緒に来てくれればいいのに。
後で文句言ってやらなきゃ。
車が発進してから、おそるおそる声をかけてみた。
「あの……あなたがご依頼主ですか?」
男は前を向いたまま、バックミラーごしにわたしに視線を向けた。
「いえ、違います。わたしは依頼した人物の秘書をしている者で、湊と申します」
「なんでわたしなんかに話が来たのかしら?」
「さあ。私はただお迎えに上がるようにと命じられただけですので」
そっけなくそう言うと、もう話は終わりというように目線をそらした。
もうー、やっぱ怖いよー。
今からでも、ドア開けて飛び降りようかな。
でも、こんな往来の激しい場所じゃ、後続車に轢かれるのがオチだろう。
「どうぞ」
30分ほどしてやってきた男を目にしたとたん、OKしたことを後悔した。
(やっぱ、とんでもなく危ない仕事じゃないの、これって)
にこりともせず、黒の高級国産車の後部ドアのそばに立っていたのは、真っ黒な髪を七三分けのオールバックにした長身の男性。
すっとナイフを入れたような切れ長の目はするどく、鼻筋が通り、唇も薄い。
はっきり言って、昔のヤクザ映画とかVシネマなんかに出てきそうなご面相。
酒井さーん。マジで反社会勢力とかじゃないよねー。
不安を覚えたわたしは、車の扉に手をかけたまま、未練がましく事務所のほうに顔を向けた。
酒井さんは、窓から顔をのぞかせて、例のニコニコ顔で手を振っている。
もう、せめて面接ぐらい一緒に来てくれればいいのに。
後で文句言ってやらなきゃ。
車が発進してから、おそるおそる声をかけてみた。
「あの……あなたがご依頼主ですか?」
男は前を向いたまま、バックミラーごしにわたしに視線を向けた。
「いえ、違います。わたしは依頼した人物の秘書をしている者で、湊と申します」
「なんでわたしなんかに話が来たのかしら?」
「さあ。私はただお迎えに上がるようにと命じられただけですので」
そっけなくそう言うと、もう話は終わりというように目線をそらした。
もうー、やっぱ怖いよー。
今からでも、ドア開けて飛び降りようかな。
でも、こんな往来の激しい場所じゃ、後続車に轢かれるのがオチだろう。
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