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第5章 最高に幸せで切ない休日
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「離陸許可が下りた。さあ、飛ぶよ」
ヘリはゆっくり地上を離れていく。
しばらくのあいだ、ヘリは低い高度でポート内を進み、それからぐんぐん上昇し始めた。
ヘッドセットをしていても、バラバラというプロペラ音がうるさいほどだ。
このヘリの正面は足元のほうまでガラス張りになっているので、文字通り、東京の街並みが一望できる。
「どう、気分は」
ヘッドフォンを通して、芹澤さんの声が聞こえてきた。
「すごいです! 鳥になったみたい」
どんどんと遠ざかってゆく都会の光景。
レインボー・ブリッジもスカイツリーもぐんぐん小さくなっていく。
「空はいいだろう。ストレスなんて一気に吹っ飛ぶよ」
「ほんと。どんどん元気が沸いてくるみたい」
そして、密集する建物の合間に、あちらこちらで淡いピンクに色づいた桜が咲き誇っている。
「あの辺が隅田川沿いの桜。これから上野や千鳥ヶ淵、新宿御苑……東京中の桜の名所、全部見られるよ」
「こんな贅沢なお花見、生まれてはじめてです」
「喜んでもらえた?」
「もちろん! これで喜ばなかった、ばちが当たっちゃう」
芹澤さんの笑い声がヘッドフォンから直接耳に飛び込んでくる。
彼の声も、この最高の気分をさらに盛り立てる原動力のひとつ。
「ほら、あそこがサニーヒルズだ」
高層のオフィス棟が陽をあびて、まるでそれ自体が光を放っているようだ。
こうして上空から眺めると、改めて、今の自分の境遇が奇跡に思えてくる。
あの都会のオアシスみたいな場所で、芹澤さんと一緒に暮らしている、そのことに。
ちらっと横に目をやる。
彼の、芸術的な角度の鼻筋が目に入る。
わたしの視線に気づいて、彼も微笑みかえしてくれる。
これほど心が浮き立つ場面には、夢のなかでさえ遭遇したことない。
ヘリはゆっくり地上を離れていく。
しばらくのあいだ、ヘリは低い高度でポート内を進み、それからぐんぐん上昇し始めた。
ヘッドセットをしていても、バラバラというプロペラ音がうるさいほどだ。
このヘリの正面は足元のほうまでガラス張りになっているので、文字通り、東京の街並みが一望できる。
「どう、気分は」
ヘッドフォンを通して、芹澤さんの声が聞こえてきた。
「すごいです! 鳥になったみたい」
どんどんと遠ざかってゆく都会の光景。
レインボー・ブリッジもスカイツリーもぐんぐん小さくなっていく。
「空はいいだろう。ストレスなんて一気に吹っ飛ぶよ」
「ほんと。どんどん元気が沸いてくるみたい」
そして、密集する建物の合間に、あちらこちらで淡いピンクに色づいた桜が咲き誇っている。
「あの辺が隅田川沿いの桜。これから上野や千鳥ヶ淵、新宿御苑……東京中の桜の名所、全部見られるよ」
「こんな贅沢なお花見、生まれてはじめてです」
「喜んでもらえた?」
「もちろん! これで喜ばなかった、ばちが当たっちゃう」
芹澤さんの笑い声がヘッドフォンから直接耳に飛び込んでくる。
彼の声も、この最高の気分をさらに盛り立てる原動力のひとつ。
「ほら、あそこがサニーヒルズだ」
高層のオフィス棟が陽をあびて、まるでそれ自体が光を放っているようだ。
こうして上空から眺めると、改めて、今の自分の境遇が奇跡に思えてくる。
あの都会のオアシスみたいな場所で、芹澤さんと一緒に暮らしている、そのことに。
ちらっと横に目をやる。
彼の、芸術的な角度の鼻筋が目に入る。
わたしの視線に気づいて、彼も微笑みかえしてくれる。
これほど心が浮き立つ場面には、夢のなかでさえ遭遇したことない。
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