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第6章 甘い計略
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説明を受けてもまだ、狐につままれたような気分だ。
だって……
当時の宗太はものすごく太った子で「跳び箱飛べない」、「前転後転できない」、「逆上がりできない」とにかく体操教室一できない子だった。
そう、今のイケメンキャラからはほど遠い、完全ないじられキャラだった。
で、そのころのわたしは、今よりもさらに融通が効かない、正義感の塊みたいな子供で、年上のいじめっ子たちに平気で食ってかかっていく、宗太の唯一の味方だった。
あるとき、いじめっ子が宗太の靴を隠したまま、帰ってしまったことがあった。
宗太は困り果てて、ただロッカーをウロウロしているだけ。
見るに見かねて、わたしも一緒に探した。
結局、靴はすぐに男子更衣室のゴミ箱から見つかったけれど、宗太は泣きじゃくって、もう体操なんてやめる、と言い出した。
ベソをかく宗太にわたしは
「ねえ、体操教室、辞めちゃ駄目だよ。このままばかにされたままなんて、悔しいじゃん。わたしも一緒に手伝うから、今日からこっそり、逆上がりの練習して、あいつらを見返してやろうよ」
その日からしばらく、教室が終わるとふたりで公園に行って、逆上がりの練習をした。
そうだ。思い出した。
宗太がはじめて逆上がりができた日、ごほうびだよって言って、あのイチゴミルクのキャンディをあげたんだ。
「最初にあった日、車のなかでキャンディを渡しただろう? そのとき気づくかなって思ったんだけどね」
「そんなこと、すっかり忘れてました。それに思い出したとしても、結びつきませんよ。あのころの宗太と今の宗太さん、まるっきり別人だから」
けれどある日宗太は急に教室に来なくなった。
結局、わたしたちが一緒に通っていたのは、ほんの3カ月ほどだった。
「父が亡くなって、祖父の家で暮らすようになったんだ。それから芹澤家にふさわしい男になるように猛特訓を受けさせられた。食べ放題だったお菓子は一切禁止。勉強も体操もマンツーマンのスパルタ指導でね。あっという間に30キロやせたんだ」
「そうだったんですね。でもそれなら、どうして最初から名乗ってくれなかったんですか」
話してくれていれば、あんなにうじうじ悩むこともなかったのに。
だって……
当時の宗太はものすごく太った子で「跳び箱飛べない」、「前転後転できない」、「逆上がりできない」とにかく体操教室一できない子だった。
そう、今のイケメンキャラからはほど遠い、完全ないじられキャラだった。
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あるとき、いじめっ子が宗太の靴を隠したまま、帰ってしまったことがあった。
宗太は困り果てて、ただロッカーをウロウロしているだけ。
見るに見かねて、わたしも一緒に探した。
結局、靴はすぐに男子更衣室のゴミ箱から見つかったけれど、宗太は泣きじゃくって、もう体操なんてやめる、と言い出した。
ベソをかく宗太にわたしは
「ねえ、体操教室、辞めちゃ駄目だよ。このままばかにされたままなんて、悔しいじゃん。わたしも一緒に手伝うから、今日からこっそり、逆上がりの練習して、あいつらを見返してやろうよ」
その日からしばらく、教室が終わるとふたりで公園に行って、逆上がりの練習をした。
そうだ。思い出した。
宗太がはじめて逆上がりができた日、ごほうびだよって言って、あのイチゴミルクのキャンディをあげたんだ。
「最初にあった日、車のなかでキャンディを渡しただろう? そのとき気づくかなって思ったんだけどね」
「そんなこと、すっかり忘れてました。それに思い出したとしても、結びつきませんよ。あのころの宗太と今の宗太さん、まるっきり別人だから」
けれどある日宗太は急に教室に来なくなった。
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話してくれていれば、あんなにうじうじ悩むこともなかったのに。
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