私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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238話 久しぶりにお仕事するのでございます!

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【そろそろ肩慣らししたいんだゾ】


 翌日、ケル君が起き抜けにそう言いだしてきた。たしかに全く仕事にはいってないし、進化してからまともな敵と戦ってもいない。ケル君にとってはいい感じに戦える相手が欲しいところ。


「どうする? もう私たちBランクだから、Aランクの依頼受けられるけど……」
「たしかにAランクの亜種とか普通に倒せちゃうもんね。受けちゃう?」
「アイリスちゃんはどう思う?」


 ケル君のは修行目的。今更Bランクの依頼を受けてもなんの足しにもならないでしょう。実質的に私と近い強さを持ってるんだし。となるとここは多少の危険を冒してもAランクに挑むべきじゃないかしら。
 BランクがAランクの依頼を受けようとすると、大抵の場合は他のBランクかAランクと一緒に仕事をさせられることになるけど……別にそれでもいいんじゃないかしら。


「受けちゃいましょう。私達なら余裕で達成できますよ!」
「でもガーベラさんはいいの? Bランク以上のお仕事だから最低でも2日は会えなくなると思うよ」
「そこまで依存してませんって。デートの予定もありませんし構いませんよ。それに私達は冒険者なのです、恋愛を優先させてばかりじゃいけないんですよ」


 彼には何も言わずに長期依頼を受けることになるけど、書き置きでも残しておけば大丈夫かしらね。
 それにしても、あの人もそろそろ仕事受けないで大丈夫なのかな? 見ている限りでは大丈夫そうではあるのだけれど。


「じゃあ決まりだね!」
【やったゾ! 早く行くんだゾ!】
「それじゃあしゅっぱーつ!」


◆◆◆


「それでどの仕事受けようか」
【討伐系がいいんだゾ!】
「そうだね、採取より楽だしね」


 掲示板から仕事を選ぶ……これ自体久しぶり。こう考えると今までダンジョンに潜ったり魔王軍幹部を討伐したり、修行ばっかりであんまり仕事を受けてこなかった。
 それでよくBランクまで上がったものね。大方、魔王軍幹部討伐協力が大きいのでしょうけど。


「どうこれ、ギガントアークベアの討伐だって」
「魔法も何も使ってこない単純に馬鹿力な魔物だよね。いいんじゃないかな、力押しで解決しようとする魔物とぼく達は相性いいだろうし」
【単純でやりやすそうなんだゾ。オイラもこれがいいと思うんだゾ】


 私もそれで問題ないと思う。全員一致でギガントアークベアの討伐をすると決まった。募集用紙を受け付けのお姉さんのもとにまで持って行く。
 この受け付けのお姉さんとは、ちゃんとカウンター越しで仕事のことで話すより、夜のギルドでウェイターをしているところで雑談をする方が私個人では多いかもしれない。


「あ、アイリスさん! 依頼を受けるのですね」
「ええ、久しぶりに。ですから夜の方には数日間顔を出せないと思います」
「わかりました……ふふ、彼氏さんにそうお伝えしておきますねっ」


 ウインクしながらそう言ってくる。完全に遊ばれてるな。


「えー、アイリスちゃん受け付けのお姉さんと仲よさそうにしてるー」
「やっぱり夜にギルド行くから? ぼく達も参加しようかなぁ」
「ダメですよ、お二人にはまだ。睡眠もしっかり取らなければいけませんし……」
「アイリスさんのいう通り。可愛い二人が来たら男性達が騒ぐに決まってますから」
「そうなんですか? うーん、二人がそういうなら……ねぇ?」
「もうちょっと大人になってからにしようか」


 お姉さんは私に向かっても一度ウインクした。助かります、ありがとうございます。童顔なのに大人な対応に感謝。いや、対応と童顔なのは関係ないわね。


「それでこの依頼のことですが、Bランクの……あ、そっか、一応お二人ですね。お二人が受けるのはAランクの依頼です。もう一人かグループでBランクの方と組まなければなりません」
「募集してくれませんか?」
「ええ、もちろん」


 私はとりあえず魔物扱いだから、正規募集はこの二人ということになっている。お姉さんはもう一人、この仕事に協力してくれるBランクかAランクの冒険者の募集要項を掲示板に貼ってくれた。


「それでは協力者が見つかるまで………」
「あの、ちょっといいかしら?」
「はい、なんでしょう」
「この依頼協力ってアイリスちゃんとこの二人が貼ったものよね? 私、協力してもいいわよ」


 普段、夜に酒場でお酒を飲んでいる私の知り合いのBランク冒険者が貼った瞬間にそう言ってくれた。
 これは有り難い。


「そうですか! ではお願いして……ん?」
「どうしたの? アイリスちゃん」


 私はふと、このギルドの入り口が気になった。なにかが近づいているような気がする。数秒後、門が開かれ、そこからガーベラさんが現れた。


「あ、アイリスちゃんの彼氏のガーベラさんだ!」
「アイリスちゃん……予感でガーベラのやつを感じ取るなんて、流石ねぇ」
「ぐ、偶然ですよ!」


 受け付けのお姉さんも、知り合いも、ロモンちゃんもリンネちゃんも、4人してニヤニヤ笑ってる。
 そして知り合いはニヤニヤとした顔を続けたまま、貼られそうになったギガントアークベアの依頼書をヒラヒラと上に仰ぎ、ガーベラさんを呼び始めた。


「おーい、ガーベラ! ちょっとおいで」
「なに? ああ、アイリス!」


 少し嬉しそうな表情を浮かべながらこちらに向かってくるガーベラさん。やがて私の目の前にたどり着いた。


「お、おはようございます……」
「おはようアイリス。えっとなんで集まってるのかな?」
「ガーベラさん、実はね……」


 ロモンちゃんがガーベラさんに事を説明する。
 ガーベラさんはすぐに理解してくれ、逆に彼がここにいる理由を話し始めた。なんでも暇だから軽いクエストでも受けようと考えたらしい。


「ガーベラさ、ここ数日間予定あるの?」
「いや、アイリスとの約束もないし……」
「じゃあほらさ、これ譲るよ。ガーベラもBランクでしょう?」


 彼女はガーベラさんに自分が握っていた募集用紙を押しつけるように渡した。今度はリンネちゃんがさっきの続きを説明する。


「えっと、俺がついていってもいいの?」
「もちろん! アイリスちゃん喜ぶよ!」
「ね、アイリスちゃん!」
「え、ええ……そうですね」
「それにぼく達もガーベラさんと一緒にお仕事するのは初めてじゃないし、やりやすいよ」


 というわけで結局ガーベラさんが一緒に依頼を受けてくれることになった。正直、譲ってくれて有り難い。べ、別に数日間ガーベラさんと会えないのが結局寂しかったってわけではないですからね。
 知り合いはまだニヤニヤしながら私たちの元から去っていった。


「それじゃあよろしくお願いします」
「うん、よろしく」
「準備などは万端なのですか? 簡単なものしか受けるつもりはなかったのでしょう?」
「それは大丈夫。いつまた唐突に大型戦闘になってもいいよう、デート以外で外に出るときは大体この袋に一式揃えてるんだよ」


 そういってガーベラさんはスペーカウの袋を持ち上げる。安全確認も取れたところで正式に依頼を受け、私たちはその現場へと向かう馬車へと移動した。 
 数日間かかる依頼は久しぶり。
 でもガーベラさんもいるんだったらただの力馬鹿の魔物討伐じゃなく、もうちょっと難しいのも受けてよかったかもしれない。


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