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9話 村を見てまわるのでございます!
しおりを挟むロモンちゃんから聞きたいことは聞いたし、そろそろ村を見て回ろうかな?
【ロモン様、お話ありがとうございました。そろそろ私、この村を見て回ってみようと思います】
「うん、そうするといいよ。いってらっしゃい」
【はい、では行ってまいります】
私は二人に一礼し、外に出た。
何やら家の裏の方から、『ハッ! ャッ!』といったような、棒を振る音と女の子の気合がこもった声が聞こえた。
あの声は多分、リンネちゃんだろう。
少し顔を覗かせてみよう。
「えい! えい! やぁっ!」
そこには予想通り、二本の木を剣のように削ってある棒を、一生懸命に振り回しているリンネちゃんが居た。
そういえば剣士志望とか言ってたっけ。
鍛錬してるんだね、感心感心。
「あ、アイリスちゃん! 見てたの」
彼女が私に気づいたようだ。
スポーツブラのような布を一枚着た上半身に、短パンのようなものを履いた下半身、運動をする時の格好だ。
汗を流しているその姿もまた、お美しい。
【はい、中々の双剣の裁きでございますね。どなたから教わったのですか?】
リンネちゃんは腰に手を当てて答える。
「あ、うん、ぼく達のお父さんはこの国の城下町の方で城の騎士をお母さんと一緒にしててね、そのお父さんが帰ってきてる時に教えてもらってるの! ぼくの憧れの人なんだよ!」
キラキラとかがやかしてる目が眩しい。
城の騎士をしているってことは、この娘達の両親は出稼ぎに行ってるようなもんなのかな…。
寂しかったりしないのかな? いや、そうでもなさそうだね、おじいさん居るし。
私も暇なので、リンネちゃんの自己練にたまに付き合ってあげるのも悪くないかも、私のためにもなるし。
【リンネ様、よければ私がその練習をお手伝い致しますよ?】
「え! 本当?」
【ええ、お互いに良い特訓となるのではないでしょうか】
「やったあ! アイリスちゃんありがとう! 一人じゃイマイチ感覚がつかめなかったんだよね。ロモンを守るためにも、ぼくが強くならないと、大人の冒険者をぶっとばせるぐらいに!」
拳をギュッと握って何かを考えるように下を向き、リンネちゃんはそう言った。
確かに、妹を守るために一人で森の中に入ってくような人だもんなぁ。
【がんばりましょうね、リンネ様っ!】
「うん!」
あ、そうだそういえば私は村を見て回るために外に出たんだった。
付き合うって決めてからなのは悪いんだけど、先にそっち済ませちゃわないと。
申し訳ないけどね、また後で付き合ってあげるから。
【申し訳御座いません、リンネ様。私先にこの村を見て回りとうございます】
「ん、わかったよ! ぼくが案内してあげよう!すでに村のみんなにはアイリスちゃんのこといってあるんだよっ」
【ありがとうございます、恩にきります】
私はお得意の礼をした。
案内してもらえるんだったら、こんなにいいことはない。
「じゃあまずどこから行こうかな……」
【とりあえず、この村の長様のところに挨拶をば…】
「ん? この村の村長はおじいちゃんだよ! そういえば言い忘れてたね」
ウォルクおじいさんがこの村の村長だったのね…。
まあ、確かにそう言われればそんな気がしなくもないかな。
じゃあもう村長に挨拶はしなくていいとして、近いところから順にリンネちゃんには案内してもらうとしよう。
【おや、そうだったのですね。なら、ここから近い順から挨拶に行きたいです】
「オッケー! わかったよ。じゃあ近いところから順番に案内するね」
【ありがとうございます】
「じゃあ、ちょっと準備するから待っててよ」
そう言ってリンネちゃんは家の中に小走りで戻っていった。
リンネちゃんの準備が終わるまでの間、私は瞑想にふけることにする。
少しMPが足りなくなってきたんだ。
【行動ボーナス! MPが上がりやすくなった!】
お、やった。助かる。
大体MPが満タンになりかけた頃にリンネちゃんは戻ってきた。
汗を拭いて、黄色い服を一枚着たみたい。
薄い茶色の短パンはそのまま履いてるだけど。
「じゃあ行こうか! 一番近いのはまず、この村の鍛冶屋さんだよ、村人の鉄の扱いをほとんどやってくれてるの。こっち、ついてきて」
私はリンネちゃんの後ろをえっちらおっちらついていく、ものの数秒でその場所に着いた。
家の戸を叩く必要もなく、すでに誰かが外に出て、タオルのようなものを干していた。
その人物に駆け寄って、リンネちゃん紹介した。
「この村の鍛冶屋さんだよ!」
「お? おう、リンネちゃん、このトゥーンゴーレムがロモンちゃんの新しい仲魔のアイリスかい?」
「そうだよ!」
【お初にお目にかかります。私、トゥーンゴーレムのアイリスと申します。以後、お見知りおきを】
鍛冶屋さんはものすごく感心したような顔をしている。
私がしゃべるとみんなこの顔するのね。
「リンネちゃん、トゥーンゴーレムってこんなに頭よかったっけか?」
「ううん、どうやらこの子だけ特別みたいなの」
「へぇ、そうかい」
鍛冶屋さんは無精髭の生えている顎を軽く撫でながらそう言った。
「アイリス…メスか?」
「うん、女の子だよ」
「おうよ、アイリスちゃんよ、鉄物のことで困ったことがあったら俺にいいな! 安くしとくぜ。まぁ、ゴーレムが鉄物使うかわかんねぇけどな」
【承知しました】
私はとりあえず返事をしておいた。
鉄物は正直、私が使う機会は少ないだろう。私とリンネちゃんは鍛冶屋さんと別れ、次のとこに向かった。
「ここが縫い物屋さんだよ! みんなの服とか作ってもらってるの」
「あ~ら、リンネちゃん、さっきぶりね。この子がアイリスちゃんね?」
【お初お目にかかります、私、トゥーンゴーレムのアイリスと申します】
やはり、この人にも私が流暢に喋れることを驚かれた。
『縫い物のことなら私にね』と言った後、売れ残りだという、白いリボンを私にくれた。嬉しい。
そのリボンはリンネちゃんが私の左肩に結んでくれた。
次に向かった場所は、武器屋さん兼道具屋さんだった。
「おや、また来たのかいリンネちゃん。その子がアイリスだね?」
「そうなの!」
【お初にお目にかかります、トゥーンゴーレムのアイリスと申します】
「こりゃあ驚いた…(そうだ、アイリスは武器は持てるのかい? 普通のトゥーンゴーレムは扱えないが……それほど知能があったら…」
「どう?」
【扱えます、大丈夫です】
「へえ、そりゃすごい。じゃあ売れ残りだけどこれをあげよう」
【ありがとうございます】
少し今の私には大きい棍棒をもらった! 残念だけど、使えないかなー、大きさ的に。
それからは、農家の人達や、村人の人達にぐるっと村を一周して挨拶をした。
ここでわかったことは、ロモンちゃんとリンネちゃんは村の人全員から好かれてるということと、村の特産品は梨だということ。
中には心理的に見て、リンネちゃんに恋してるんだろうと予測できる若者もいた。
まぁ、リンネちゃんは気づいてなかったし、私も言う気はないけど。
ロモンちゃん達宅に戻ると、すでにウォルクおじいさんとガーナさんが戻ってきていた。
「おう、おかえり。村を見てきたのかい?」
【はい、この村の人たちはみんな良い人ですね】
「そうじゃろうて、この村は平和でのどかなんだよ」
おじいさんはナーガさんの頭を撫でながらそう言った。
おじいさんにリンネちゃんはあの冒険者達のことを聞いた。
「おじいちゃん、あいつらはどうだったの?」
「これこれ、若い女子が"あいつら"など言うのはよしておきなさい。あやつらはすでに城下町に罪人として送り返したわい」
「そう、よかった…。いい、ロモン。これからはあんな男達に襲われないように注意するんだよ!」
「うん、気をつけるよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんも気をつけてね?」
「わかってるよ」
【なんなら、私もついてますので】
私はそう、一言言っておいた。
私が居るからには、あのようなことは二度と起こらないだろう。
多分。
「じゃあ……そろそろ夕飯にするかのぉ」
おじいさんがそう言った。
「うん、じゃあそろそろ私、お夕飯つくるね。アイリスちゃんはどうするの?」
【私はご飯は食べなくても大丈夫です故、外で特訓してきます】
「あ、じゃあぼくの練習に付き合ってよ、ご飯できるまで」
【承知しました】
「じゃあご飯できたら呼ぶね」
私はゴブリンから奪った棍棒を手に取り、リンネちゃんと共に外に出て、家の裏に回った。
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