私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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88話 新たな被害でございますか…?

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 森の中、武装した兵士たちがサナトスファビドを探していた。


「…もう探し続けて1週間か」


 この部隊の誰かがそう言う。


「グライド団長の娘さんはどうなったんだっけか?」
「聞いてなかったのか? 無事に全治したって連絡が来てただろ。団長さん、飛び跳ねて喜んでたの見ただろ、お前も」
「ああ…なんか飛び跳ねてたのはそれか…めでてーなそりゃ」


 うまい部隊編成、そしてグライドという単独でSランクの魔物と渡り合える強力な個人が居ること、そして呪毒に侵されたとしても回復方法があるという安心感のおかげで、相手は魔王の元幹部であるという情報も届いてはいるが、彼らはそれほど大きな疲労は感じずに散策を続けている。
 
 しかし、一向にみつからない。

 城からサナトスファビドの情報が届き、アイリスが残していった人相描きもあるため、案外、簡単に見つかるかもしれないと思っていた者は多いが、そう、うまくはいかなかった。

 大探知でも引っかからない、というのが大きい。
 もはや別の場所に移動してしまったと考え始めている者も少なくない。

 それでも、今はとにかくサナトスファビドを探すことを進めていたのだ。


「こんだけ見つからなきゃ、団長の娘さん達が見たのは幻なんじゃないかって思っちまうよなぁ」
「それはないけどな」
「な。あんだけ被害者が居るんだからな」


 ただ、散策をして歩いているのが暇だったのか、この部隊の1人の隊員がつぶやき出した。


「あー。男ばっかで何時間も散策はきついな…」
「な、モンゾニ村には女の子の隊員がわんさか居るのに…」
「おい、お前。何か男臭くない話をしろ」
「え、オレですか?」


 一番後ろに居た隊員が、真ん中にいる若手の隊員に話を振った。戸惑いながらも、彼は話を始める。


「そ、そうですね…。あ、あの俺、この騒動が一段落したら、結婚しようかなーって」
「マジかよ、お前!」


 その部隊の隊員ら、隊長を任されていた男を除いて全員が反応する。


「相手は誰だよ」
「冒険者です。僧侶で…」
「うわぁ…。俺なんてもう30過ぎたのに結婚の「ケ」の字もねーよ! お前も禿げ始めれば良いんだ…」
「顔は、顔は可愛いのか!?」
「ええ、かなり」


 そんなので騒がしくなり始めたので、隊長は後ろを振り向き、注意することにした。


「おい、お前ら、うるさ」


 ぱたり、と、振り向きざまに、先ほどまで嬉々として結婚をするという話をしていた若い隊員が倒れるのが見えた。


「う…うぁぁぁぁぁぁッ」


 誰かが喚く。
 隊長は何が起こったのか全くもって理解ができなかった。

 目に映るのは、おおきな蛇と、先ほどまで楽しそうに話をしていた隊員達がのたうちまわっている光景。 

 それを最後に、彼は、あまりの激痛に気を失った____


◆◆◆


【チイッ…おとこしかいないのか】


 ポツリと、ギフトという名のサナトスファビドは呟いた。アイリスとの戦いでは思ったより体力を消耗した彼は、それを自分への口実に、しばらく人狩りを休んでいた。

 何をするでもなく森の中を徘徊していたところ、数人の人間が見えたのでとりあえず襲ってみたのだ。


【にしてもサイキン、まったく少女をみかけない。3カに1カイはみつけてたんだがな】


 苦しみ、のたうちまわっている鎧を着た10人にも満たない者達をサナトスファビドはもう一度見た。


【苦しみがないよりまだマシとおもって、おとこどもを襲ったが…やはり、少女じゃなきゃな……。そろそろ、あのゴーレムといた娘のいっぽうは死んでるはず。…あいつがジバクしたところにでも行ってみるか、明日にでも。……あの少女がまた来ているかもしれない】


 そう独り言をしながら、ズルズルとサナトスファビドはどこかへ去って行く。
 その後ろ姿を見ながら、苦しみながらも倒れている男の一人が手に持ってる何かに向かって、話して居るのに気付かずに。


◆◆◆


「それっ! おお、できたよー!」


 ロモンちゃんは私に魔法陣を見せつけてくる。
 これでロモンちゃんは『スシャドラ』を覚えたはずね。


「ぼくもできたよ」


 と、ロモンちゃんに対抗するようにリンネちゃんも私に黒紫色の魔法陣を見せてくる。リンネちゃんも覚えられたみたい。
 
 ここ5日間、お屋敷でお父さん達から連絡が来ないか、ずっと待ってたんだけど、一向に来ないから闇魔法の練習をしてたの。
 『シャド』を覚えられた時点で、すいすいと次の段階に進んでいくから、すでに、他の属性の魔法と同じぐらいまでの段階を扱えるようになってる。

 お母さんに頼んで、お城の図書室で闇魔法に関する文献が書かれている本を数冊借りてきて貰ったりして、それらも使って訓練したおかげかな。……はっきりとした習得方法は無いけど、性質とかは研究されてたからね。

 まあ…まだ、他の魔法と合わせてみたりは試してない。
 明日あたりにやってみようかと思う。


「ふう…やっとここまできたか」
「ねー。へへ、これで使える魔法が大幅に増えたねー」
【はい】

 
 私達は地下室から上に上がって、リビングに戻る。
 ベスさんが迎えてくれた。


【クァ…。ドウダイ? ヤミマホウハオボエラレタカイ?】
【うん、バッチリ!】
【ええ、すでにリシャドムとスシャドラまで習得致しました】


 幼体化しているベスさんの、1つだけの首が、驚いて目をクリクリさせて私達の方を見る。


【ソリャア…。スゴイネ、ヤミマホウッテシュウトクシニクインダヨネ?】
【ほら、アイリスちゃんは極至種だし】
【恐縮です】


 そんな感じで談笑していた時、この屋敷の入り口の戸が開けられた。
 その開け方でお母さんが帰ってきたとわかった二人は嬉々として玄関までとんでいった。


「「お母さん、おかえりなさい!」」


 私も玄関までいく。
 お母さんはひどく慌ててる様子だった。


「はぁ…はぁ…みんな!」
「今日はもうお仕事終わりなの?」
「違うわ! サナトスファビドの毒にやられた兵士が出たから、アイリスちゃん…お願い…」


 なんだ、突然だなぁ…。
 でも、この1週間近く、待機してた甲斐があったね。
 そろそろお仕事に行ってもいいんじゃないかって、私達、相談してたりしたんだけど。行かなくてよかった。


【わかりました、すぐ向かいます。…ロモンちゃんは?】
「ロモンは行って。リンネはお留守番してもらえる?」

 
 お留守番してろと言われたリンネちゃんは少しムッとしたが、自分が呪毒に侵されたことを思い出したのかすぐに顔を引きつらせ、こう答えた。


「お母さんの言う通り、ぼくは待ってるよ。また、やられちゃったりしたくないし」
「じゃあ…ロモンとアイリスちゃん…お願い。城に馬車か用意されてるから…! それと、アイリスちゃん、ロモンのこと…お願いね」
【はい】


 私とロモンちゃんは、スペーカウの袋を持って、急いで城の馬車の停留所まで向かい、馬車に乗り込んだ。
 本当なら、モンゾニ村へのワープを使えば良いんだろうけど、あれはお城に勤めてる人しか使えないから……。

 ともかく、私達は再び、モンゾニ村へと急いだ。
 

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