私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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327話 対魔王軍作戦開始の前日でございます!

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「今日がこうしてのんびりできる最後の日ですね」
「ああ、そうだね」


 明日は魔王がいるであろう地下拠点まで突入する。ここまで万端の準備をしてきた。だからこそ、こうやって土壇場で心を休めるような時間ができたの。王様の提案なんだけれどね。
 今、私はガーベラさんと二人っきり。彼の屋敷の一室で並んで座って語り合っている。


「でもいいの? 俺より家族である双子達と過ごした方が……」
「いいんです。明日からの主役は貴方。貴方が明日から存分に戦えるよう、精神的なケアに私が必要だと判断したまでです。……ほ、ほんとに私で心が休まりますか?」
「フッ……。自慢気に言ってからすぐ不安になるんだね。でもその通りだよアイリス。俺にとってアイリスは一番大事な人だからね」


 よかった。よかったけど、そのイケメンフェイスでそう言われるとクラクラしそうになる。まぁ、恋人同士ですから。これくらいの惚気はバチが当たらないでしょう。
 

「それにアイリスが来てくれなかったら今日は一人で過ごすつもりだった。本当にありがとう」
「それなら良かったです。お二人のことは心配なさらず。寂しがるといけないので昨日の時点でとびきり甘えておきましたから」
「アイリスの方が甘えたんだね」
「私が、妹ですからね」


 一緒にお風呂に入ったり、一緒にお昼寝したり……私が思いつく限りの甘えを二人には提供した。本当に年齢的にも妹になった気分で。二人はノリノリで私のことを可愛がってくれた、
 私もずいぶん甘え上手になったものね、人の温もりにたくさん触れてきたからかしら。前世ではこんなに人に甘えたりなんてしなかったような気がする。


「今日はガーベラさんに甘えますよ。彼女として」
「あはは、それは嬉しいな」
「して欲しいことがあったらなんでも言ってくださいね」
「うん」


 明日に迫った本番。ガーベラさんは内心、どんな気持ちなのかしら。勇者が毎回無事では済まないという流れの対処方法とか考えてあるのかな。それに対して緊張や恐怖を抱いていないのかな。
 ……あ、でもガーベラさんにらあの特技化してしまうほどの勘の良さがあるか。ほぼ未来が見えると言っても過言ではないものなのだから、もう結果が分かってたりして。
 ナイトさんがガーベラさんの未来予知は、私やケルくんの光魔法に対する特技のような特別なものだと言っていた。だからかなり先まで読めていても不思議じゃない。ちょっと聞いてみようかな。


「ところでガーベラさん、貴方のあの勘から派生した特技で、この戦いの結果って分かったりしませんか?」
「あー、この特技、強力だけど結果はわからないんだ。例えば、今日、アイリスがご馳走を作ってくれようとしてくれること、そのご馳走に使う食材までは分かってるんだけど、どんなメニューになるかはわからない」


 むむ、今日は私が丹精込めて料理を作ろうとしてること、バレてたか。ガーベラさんに今後も隠し事は出来なさそうね。まあ私が隠すことなんて何もないけど。


「なるほど、そうでしたか。ではその原理で行くなら、私達がそれぞれどの幹部と戦うことになるか……などならばもうわかるのでしょうか?」
「それも残念だけど、二十四時間以上離れてることはわからないみたいなんだ」
「改めて聞くとなかなか難しい力ですね」
「でも一回一回の戦闘でなら役に立つよ」


 たしかに、ガーベラさんは八人ほど、他の国から応募を見てやってきたSランクの冒険者と戦って全戦全勝、ほぼ負い傷なしという結果を残している。非常に興味があったので時間があった時、だいたい試合の半分ほどに立ち会ったけれどガーベラさんの強さは圧倒的だった。
 今のガーベラさんなら、ほんと、おじいさん以外にだったら勝てるかも。仮に私と戦っても……。どうだろ?


「だからこそ、能力を使いこなせてるガーベラさんは凄いです。やはり気になりますね、私とどちらが強いか。何やかんや、暇がある時も恋人らしく過ごすことを優先してしまい今日まで一度も手合わせしてきませんでしたが」
「……ここで一回、お互い本気でやってみる?」
「こうなること分かってましたか?」
「どうだろうね」


 本当に戦うことになってしまった。恋人同士で本気で戦う。とても久しぶりね。何でだろう、ガーベラさんと戦うのってなぜだか少しワクワクするの。私の中で勝手にあの人のことをライバルだとも認識していたのかもしれない。いつからかはわからないけど。

 私達は戦うための服装に着替えた。ガーベラさんは全身をアーティファクトで身を包み、私はメタモルアームを装備するだけ。このお屋敷の地下にも、ターコイズ家のお屋敷と同じ修復される部屋がある。私と彼はここで戦うことにした。


「ルールはさ、あの日と同じでいいよね?」
「ええ、構いません。どちらかが降参したら終わりです」
「……どうしたの、アイリス。試合前なのに俺に近づいてきたりして」


 私はそう尋ねてくるガーベラさんをよそに、無言で抱きつき、ちょっと背伸びをして彼より足りない身長を補いつつキスをした。それから定位置に戻る。


「ふっふっふ、これでガーベラさんの心が揺すぶられて少しは戦いにくくなるでしょう」
「……予想してたよ。そもそもアイリス、俺がこのくらいで動揺したら少なからず幻滅するでしょ?」
「いえ、幻滅とまではいきませんが、評価はたしかに下がりますね。私は武人として性別関係なく手加減なしに振る舞う貴方も大好きですから」
「……ありがとう。愛してるよ、アイリス」
「ううっ……!」


 ぐ……今のに勝ち負けないはずなんだけど、なぜか負けた気がする。でも私達の間柄こそのやりとりっぽくて良かったかも。
 とにかく、最初から飛ばさなきゃ。今のガーベラさんは敵に回したら今まで私が戦った誰よりも強い事になる。魔王軍幹部よりも、騎士団長達よりも。


「も、もう始めますよ!」
「うん、始めよう」
「いきます。フェルオール、フェルオール、フェルオール、フェルオール、フェルオール、フェルオール!」


 私はメタモルアームを杖型にし、自分自身に最大の補助魔法を出来る限り重ね掛けした。これだけで実際の数値上はすでに、ゴーレムでもない、女であるこの体でも全てにおいて彼を超しているはず。


「フェルオール。……じゃあ行くよ」
「っ!」


 ガーベラさんも普通の人ができる限界である一回だけ補助魔法を自分にかけてから、距離がある私に向かって槍を突き出した。槍からは光弾が放たれる。
 私は素早くメタモルアームをカタナ状にし、その光弾を真っ二つに斬った。私からは光魔法の魔法陣を大量に_____。


「まあ、アイリスはどちらかと言えば魔法使いだから、そうくるよね」
「さすがですね……」


 完全に取り囲んだはずなのに、ガーベラさんは私が光弾を斬っているその一瞬の隙にアーティファクトの槍を別の場所へ投げており、そこへ瞬間移動して回避した。
 ……悔しいことに、私がペリドットさんに教わって魔法陣から魔法を発現するまでのタイムを大幅短縮することに成功したにもかかわらず、こうしてガーベラさんには難なく回避されてしまった。やはり、未来予知と瞬間移動の相性が良すぎる。


「……アイリスの魔法による火力が高すぎる攻撃は耐えられても三発までだからね、用心しなくちゃ」
「そうですね、ならばこれはどうでしょう」


 私は魔流創気により魔力でできた腕を複数生成。魔法を発動できる媒体を増やした。私はいくら魔法を撃っても魔力が尽きることはない。特に光魔法と回復魔法なら実質無限に撃てる。
 私自身に回復魔法をかけつつ、この部屋を覆うほど巨大な光魔法を連発する。そうすればいつかガーベラさんに当たるはず。


「なるほど、そうくるか。是非止めさせてもらわないと」
「その距離からじゃ私は止められませんよ!」
「そんなことないよ」
「きゃっ!?」


 私の鳩尾目掛けて地面から岩がせり上がってきた。私が攻めばかりに集中することをよんで、あらかじめ唱えておいたのね。
 ぐ……人間態だからいまの一撃は一瞬だけど効いた。おかげで回復魔法しかまともに発動せず、光魔法は諦めるしかなくなった。


「はぁはぁ……やはりやりますね」
「うん。勇者だからね」
「でも私も負けませんよ……いきます」
「次は近接戦か。いいよ、来な」





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