私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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350話 呼び出しを待つのでございます!

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「……落ち着いた?」
「はい、取り乱してしまい申し訳ありませんでした」


 ガーベラさんにハグをされたままかなりの時間が経ち、なんとか平静を取り戻すことができた。彼は再び私の頭に手を置くと、諭すように話し始める。


「大丈夫、俺はアイリスの前からいなくならないから」
「本当ですか? か、帰りたいという気持ちはないのですか?」
「ないね。……正直言って、今の俺は勇者になったその日より記憶が戻っている。あの日にも俺はアイリスの前からいなくならないと言ったよね。例え元の世界に帰れるのだとしても、俺の気持ちはあの日から変わらない」


 たしかにガーベラさんはあの日にも、私の前から居なくならないと約束し、今日と同じように泣きだした私をなだめてくれた。
 でもあれから色々事情は変わったはず。さらに記憶が戻ったのなら尚更。それでも帰れるなら帰りたい、なんて答えは出さず……彼はやっぱりこの世界に残り続けることを選んだ。これがずっと彼の答えなんだ。


「私は……情けないですね。魔王を倒してもガーベラさんの考えていることは変わらないのに、一人で何度も同じ内容で泣き喚いて」
「アイリスが俺と離れたくないって言ってるんだ。俺はすごく嬉しいけどね! 舞い上がりそうだよ」


 そう言って彼は笑った。間違いなく心の底から喜んでくれている。今更だけどこの人はなんでこんなに私のことを好いてくれるのだろうか。たまにわからなくなる。私が彼を好きな理由は、もう説明できるのに。


「ふう。……ホットミルクでも飲んだら寝ようか。このままじゃ眠れなくなりそうだ」
「そうですね、それがいいかもしれません」


 ガーベラさんが私の隣から離れ、台所に立った。ずっと抱きしめられていたため身体に彼の温もりがまだ残っている。とはいえ実物がいなくなったため、私の惚気た脳は少しずつ冷静さを取り戻してきた。

 労いの言葉はかけたし、魔王を倒してからのガーベラさんの心境も訊くことができた。あと気になっていることは一つ、勇者としての能力でこの先のことが分からないか問わなければ。それを聞いておかなければぐっすり眠れそうにない。


「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。ところでガーベラさん」
「ん?」
「未来を見る能力でこの先のことはわからないのですか? せめてナイトさんの言っていた、元の世界へ導かれる日がいつかがわかれば、多少は対策が楽になるのですが」
「いや……それがわからないんだ。俺も完全に使いこなせているわけじゃないしね、この能力」
「そうですか。それなら仕方ありませんね」


 何でもかんでも未来予測できるわけじゃないってことかしら。それとも、何かが邪魔してるとか……? ううん、考えすぎね。今までだって四六時中予測してたわけじゃないし。
 
 
「でも使いこなせなくていいと思ってるよ。未来がわかりすぎるとつまらないから」
「その通りですね」


 それからミルクを飲み終えた私達は、やっと寝支度をした。寝室は同じ。だから潜り込もうと思えばガーベラさんのベッドに潜り込み、添い寝を仕掛けることもできる。
 しかしお互い眠れなくなるので、疲労が溜まってるこんな日にそんなことするつもりはない……。


「寝る前に一つだけいいかな?」
「はい、何でしょう。そんな改まって」
「……好きだ」
「……!」
「うん。それだけ。おやすみ」
「……っ。はい、おやすみなさい」


 私も。私も、ガーベラさんのことが……。


◆◆◆



 __________5日後。



 今日もガーベラさんは私の隣にちゃんと居る。居るけれど、一瞬でも目を離しちゃったら居なくなるような気がする。
 一日が過ぎていくごとに、私の胸の奥はきつく締められていく。彼が居て当たり前、そんな日常が送れるようになることを毎時間米分毎秒、願うしかない。


「……アイリスちゃん、大丈夫?」
「あ……はい、大丈夫です」
「そうは見えないけどなぁ」


 ナイトさんは魔王を倒してから早くて三日後、遅くて一週間で勇者が呼び出されると言っていた。今日で既に五日目。三日過ぎとなった一昨日から私は心配で心配でほとんど眠れていない。
 と言っても、ゴーレムになれば寝なくていいので実際こうして疲れているのは精神的な疲労によるものなのだけど。


【とにかく、もうそろそろの可能性が高いゾ】
「そうだね!」


 ガーベラさんを引き止めるために準備をしているのは私だけじゃない。ロモンちゃんもリンネちゃんも、お父さんもお母さんもおじいさんも何かしら対処できるよう備えてくれている。主に戦闘準備だけど。

 王様も他の騎士団長さん達やナイトさんと共に、魔王がいた場所の監視を続けてくれている。魔王のいた場所がガーベラさんの帰るきっかけとなる場所でもあるらしいため、もしかしたらガーベラさんが呼び出されるより先に王様がその場所の異変に気がついてくれるかもしれない。


「それでガーベラさん自体はなにも感じないの? こう……ビビビってくる感じの」
「ないんだよね。相変わらず未来予測もできなくて」
「ってことは本当に唐突に知らせが来るって感じなのかなぁ」


 ロモンちゃんがそう呟いた瞬間、ガーベラさんが眉を潜めた。


「どうされましたか?」
「……きた」
【ビビビってきたのかゾ?】
「……行かなきゃ。行かなければ……」


 彼は唐突に勢いよく立ち上がると、フラフラと風に任せているような足取りで今居るお母さん達の屋敷の玄関へと向かっていった。


「ついに来たみたいだね」
「ナイトさんの言ってた通り、逆らえないみたいだね」
【とにかく皆に伝えつつ、ガーベラの跡を追うゾ! モタモタしていられないんだゾ!】


 リンネちゃんが王様に始まったことを伝えに一瞬でその場から居なくなり、ロモンちゃんは広い範囲に念話を飛ばして事情を知っている人を集める。ケルくんはロモンちゃんのお手伝い。
 ……そして、私は慌ててガーベラさんの手を握った。


「……アイリス」
「心配いりません。私たちがついています。絶対にこの手を離しませんから」
「……ああ」


 ガーベラさんは再び、フラフラと歩き始めた。私の手を握ったまま。





#####

先週はおやすみしてしまい申し訳ありませんでした。
今週もですが、全然話の内容が思いつかなくて……。

次の投稿は10/5の予定です!


追記:すいません、また予定通りいきませんでした。書いてはいるので明日(今日)になります。
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