私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍

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175話 ケル君とトカゲでございます!

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【エッヘンナンダゾ!】


 ケル君がドヤ顔をしてる。
 ほんとに、自分でやれると言っただけのことは成し遂げちゃった。俊敏な動きで敵の攻撃を回避し、的確な魔法を撃ち込むという芸当をね。


【すごいよ! ケル!】


 ロモンちゃんは嬉しそうにケル君を抱き上げた。
 抱かれた本犬はちょっと苦しそうに足をバタバタさせている。今のうちに倒した魔物を回収しておこうかな。


【ゾー、モウスコシ テゴワクテモ ヤレルゾ!】
【そうだねっ。じゃあどんどん奥に進もうか】
【リョーカイ ナンダゾ!】


 ケル君は地面におろされ、私達は再び歩き始める。
 

「むっ…だんだん数が多くなってきたみたいだね」
「ええ、そうですね」


 そんなに時間も経たずに次のトカゲの小隊が現れる。
 Fランクの魔物5体のようね。
 ケル君は手を出すな、とでも言いたげにこちらを少しだけ振り向き、すぐさまその5体に向けて駆け出した。


【ゾゾゾ……! スゴロゴ! …シャイ、シャイ!】


 ケル君はヒュージリザード3匹とトゥーンリザードマン2匹の群れの真上にジャンプして範囲攻撃、それで取り逃がしたものをシャイで片付ける。
 ふむふむ、なかなか手並みが鮮やか。
 さっきの戦闘でさらにコツを掴んだのかしらね。


【ゾー! チョーシ ノッチャイ ソーナンダゾ!】
【調子に乗るのは良くないよ。冒険者は常に危険と隣あわせなんだからねっ】
【ワカッテルゾ。キヲツケルカラ、ダイジョーブナンダゾ、リンネ!】


 そう答えたケル君。
 ケル君の目標は私たちなのだから、そこに到達するまで反抗期とかみたいなのは来ないような気がするけどね。
 私達を目指してるといえば、ケル君の強さは今どのくらいなのかしら。
 レベルとか。


「あの、ケル君のレベルっていまどのくらいなのでしょうか」
「ん? ……えーっとね、10だね」
「なるほど、そうですか」


 トゥーンヘルドッグはゴーレムとは違いレベル15で進化する。その代わりにEランクをすっ飛ばして必ずDランクになるの。
 ……私も一応Eランクは飛ばしたけれど、それはあのリトルリペアゴーレムがそういう種族だったから。

 普通より1ランク高くなる『当たり』が中にはあるから。まあ、私はそれを当て続けてるある意味豪運よね。

 進化する際の『%』表記とは別の判定扱いで、亜種や超越種であるぶん良いものが選ばれやすなったり、その『ビューリザード』が『リビューリザード』となり易いといった系統のものが優先されるっていうシステムもあるんだけれども。


「じゃあ順当にいけばあと5レベルで進化かー」
「どうなるのでしょうね」
「ケルの幼さでこれだけ呪文をマスターするのは珍しいし、光と闇の魔法も覚えてるから新種になるかも! そうしたらまたおじいちゃんに見せに行かなきゃね」


 あるいみ魔物の新種を作り出すのは魔物使いの名誉だったりするの。もっともロモンちゃん、その偉業はすでに私で済ませてるんだけどね。


【……サンニン トモ ドウシタゾ? オトイレ デモ イキタイノカゾ?】
【いえ、違いますよ。ちょっと作戦会議をしていたんです】
【ナルホゾー】
【待たせてごめんね、じゃ、進もうか!】
【ゾ!】


 今度はケル君を先頭にして私達はさらに進む。
 Eランクの魔物が混じってたり、5~6匹の団体だったりの遭遇が多くなってきたけど、ケル君は難なく突破している。
 そんなのが4回ほど続いたある時、探知に段階が上がったような敵の反応が引っかかったの。
 

【ケル君、止まってください】
【……ゾー? アイリス ノ タンチ ハ オイラノヨリ ユウシュウダゾ! ナニカ ワカッタノカ ゾ?】
【ええ、この先Eランクの魔物が3体いますね】
【ゾー! ワカッタゾ、ガンバルンダゾ!】


 応援するつもりで言ったんじゃないのに。
 ケル君は少し鼻息を荒くしてそう返事をしたの。


【ケルー、今度こそ危ないかもよ?】
【マダ アイリスノ ホジョマホーノコウカ ノコッテルゾ! ダカラ アブナクナル コトハ ナイゾ!】
【そうかもしれないけど……】
【まあまあロモン、ケルは男の子なんだしさ挑戦させてみればいいよ! 一つランクが上の魔物を3体同時相手するだなんてアイリスちゃんも良くやってたし!】
【うん、お姉ちゃんの言う通りかも。ケル、頑張って!】


 お許しをもらえたケル君は嬉しそうに敵に突っ込んで行った。敵はどうやらビューリザード2体とトゥーンバシャリザード。
 3体同時に魔法を使ったりしてきそうなものだけど、ケル君はどうするのかしら。


【ゾーゾー、ゾーゾーゾーゾーゾー!】
「え、突っ込んでる?」
「敵の群れに…なにか作戦あるのかな?」


 ケル君は走りながらうまい具合に敵の魔法を回避する。
 魔流の気は身につけたままだから、青に流れる線がかっこいい。

 数秒してついに3匹のトカゲの目の前までケル君は接近したの。そこで今までで一番大きく、魔法を唱える。


【スシャイゴロゴ!】


 ケル君の口から放たれる白い放電は三匹のトカゲを襲う。混合魔法を実践でうまくできたみたいね。
 ……いや、実践でやらせるのはほぼ初めてみたいなものだけどよくできたわね。


【ム、マダ イキテルノ カゾ? ……スファイ!】


 先ほどの魔法で怯んだトカゲに容赦なく炎の渦が襲いかかる。探知から反応が消えたところを見ると、しっかりと倒せたみたいね。


「ケル、どんどん強くなってくね!」
「もしかしたら、戦闘の中で強くなって行くタイプだったのかもしれません」


 さっきの4つの団体と今のEランクの団体でレベルは最低1つ、多くて2つは上がってるでしょう。
 活躍が活躍だし、ボーナスもたくさんもらってると思う。だけど警戒は続けた方がいいわね。


【ケル君、もしかしたらDランクがそろそろ出るかもしれません。その時は引いてくださいね】
【……チョット カンガエ サセテホシイゾ】
【ちょっと考えさせて欲しいって……。まさか戦う気なの?】


 先に行こうとしたケル君はそのアイリスちゃんの言葉を聞くと、歩を進めるのをやめ、こちらにトテトテと戻ってきた。そしてつぶらな瞳で私たちを見上げるの。


【……アイリス ハ、Dランク ノ ゴブリン ヲ、イチ タイ イチ ドコロカ、タクサン タイ ヒトリ デ、タタカッタンダゾ】
【でもアイリスちゃんは…】
【ウン。アイリス ガ トクベツ ナノハ ワカッテルゾ。 デモ、オイラモ ヤルンダゾ…! ヤラセテホシインダゾ!】


 じーっと見てくる。
 とても真剣な眼差しで。
 ……男の子ってこんな犬でもこんなかっこいい目ができるのかしら。
 そう、ちょうど私を救いにきてくれたガバイナさんを彷彿とさせるような…。
 って、私はなんて今あの人を思い浮かべるの? 関係ないじゃない。


「……ど、どう思う? ロモン」
「アイリスちゃんが小さい頃に戦ったのは、大勢のゴブリンと、Eランクの亜種、Dランクの亜種のゴブリンだったよね。それに比べればただのDランクの魔物1匹は…倒せるかもしれない」
「それにあの頃の私は魔流の気を撃ち込んだり、徒手格闘だけで戦ってましたから。中級魔法とさらにその混合魔法まで扱えるケル君ならいけますよ!」


 それにあのころの私にはない高い回避性能と瞬発力もあるしね。防御力がすこし心許ないけれど、それは私の補助魔法で今現在守ってあげてるし。


「じゃあ……」
「うん、それじゃあDランクの普通種の、下位か中位の魔物が単体で現れた時もケルに戦わせてみようか。それ以上は進化してからだけどね」
「決まりですね」


 ロモンちゃんは未だにじっと私達の方を見るケル君に目を合わせるの。


【いいよ、ケル。Dランクの中位までの魔物で、普通種で、一匹だけが相手なら戦ってもいいよ】
【ゾッ……ワカッタゾ! アリガトナンダゾ!】


 気を取り直したかのように、ケルは身をくるりと翻し、先頭をその4本足で再び歩き始めた。



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