どうしてこんな拍手喝采

ソラ

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そこからスタート

7(片桐side)

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初めて冰澄さんにあった時の印象はえらく落ち着いた子供だった。
波津と血縁など微塵も信じる気にはなれなかった。

女だと思ったら男で、整った顔立ちを見て驚いた。組長がそれを気に入って囲うと言い始めた時はそれはそれはもう天変地異だ。

冰澄さんのお世話をしているうちになんとなく…

冰澄さんが他の人とは違うのがわかった。


「こんなのが面白いんですね」


まず最初の言葉はそれだった。ぼんやりとテレビのお笑い番組を見る冰澄さんが笑みの一つも浮かべない無表情でつぶやいた。その瞳はガラス玉のようでまったく動いていなかった。


「欲しいものはありません」


2日目はそんな言葉だった。
何か欲しいものがあるかと組長が聞いた時、テレビを見つめていたあの目になったのだ。ガラス玉、反射しかしない。
これには組長も気付いたようでそのあとは不信そうに彼を見ていた。

けど彼が、一時だけ年頃の表情を見せる時がある。

「あ、冰澄さん、チューニングですか?」

ギターを一音ずつ確かめていた冰澄さんに尋ねれば笑みが帰ってきた。

これが彼の年頃の表情だ。

「そのギターかっこいいっすよね、ずっと思ってたんですけど」

「そうですよね!俺もこれに惚れちゃって!バイト無我夢中でして、先輩にちょっと安くしてもらったんです」

「先輩ってこの前一緒に学校出てきた?」

「はい、身長が大きい方の先輩です」

「あーあの子ね、おっきいよなぁ…」

薄っすらと大きい身長の高校生を思い出した。

軽音部と言われるとなんだか青春だなとしみじみ思う。

「どういった音楽を扱うんですか?ロックとか」

「ロックの…うーん、薄い感じですかね。そんな激しいロックじゃないですよ」

「冰澄さんがロックでバンバンやってんの想像つきませんしね」

「それが一番ですよね」

冰澄さんは満面の笑みで、チューニングを終えると確かめるように弾き始めた。
ゆっくりのリズムはロックとは遠い。

ギターを弾くときは柔らかな表情が浮かんでいる。綺麗だと言える表情だ。
いつか、この表情が組長の前で自然といつも浮かんでいればそれは、素晴らしいことだと思う。

「……冰澄」

「おかえりなさい政宗さん」

まるで昔からあった形のように、冰澄さんは組長に暖かい笑みを浮かべた。

「練習か?」

「はい、一ヶ月間サボりましたから」

「真面目だな」

くしゃりと冰澄さんの頭を組長が撫でたので俺は北谷とともに部屋を出る。


「……今日もゆったりとしてた」

「何がだ?」

「冰澄さん、あれほどゆったりしてるのは冰澄さんが初めてだ」

「……?」

北谷が首をかしげた。
当たり前だ。これはきっと冰澄さんのそばにずっといる俺だから気付けたのだから。
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