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そこからスタート
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「ひーすみ!これ、あげる」
誓先輩に渡されたのは、高い所の苺大福。
一個、800円。俺の大好きなものだ。
「わ!ありがとうございます!!」
「いーえ。どーいたしまして」
「誓……」
「はいはい明人のもあるから!」
明人先輩も貰って幸せそうな顔をしている。
今度お返しに何か持ってこよう。
「じゃ、そろそろ解散にしますか」
「ん」
「はい、お疲れ様でした」
ちょうど、18:30だ。
先輩たちと部室を出た。
外はもう暗い。冬の冷たい風に体を震わせた。門の前に見慣れぬ車があって。その車に寄りかかってタバコを吸うのは片桐さんではない。高身長で、綺麗な黒髪がなびいている。彼は俺を見つけると煙草を携帯灰皿で消した。
「……誰だあれ」
「なーんか、…ヤクザって感じするんだけど」
誓先輩の言葉に冷や汗をかいた。明人先輩は警戒しながらも近づいていく。俺たちが門を出るのと同時に、政宗さんが小さく笑った。
「冰澄」
政宗さんが名前を呼んだことに驚いたのは明人先輩と誓先輩だった。二度ほど俺たちを交互に見ると、「は?」とこぼした。
「……誰だ?」
政宗さんが顔をしかめて不機嫌そうに言った。
「あ、こちら、部活の先輩の誓先輩と明人先輩です。」
「ああ、先輩か…。冰澄、乗れ、帰るぞ。」
「はい……片桐さんは?」
「なんだ片桐のほうがいいのか?」
俺の髪をひと束すくいながら小さく苦笑をこぼした政宗さんに「ち、違います」と首を振った。
「メールは片桐さんだったので……」
「仕事が早めに終わってな。」
仕事といってもものすごい量なんだろうな。
あった時から若干疲れた様子だった。それは今も変わらない。
「あのぉ…冰澄、この方は?」
「どういう関係だ?」
先輩たちが、政宗さんを警戒しながら俺を引っ張った。
「あ、政宗さんは、俺の…」
「恋人だ。以上。」
「え!政宗さん?わっ!」
車の中に押し込まれる。
外から「冰澄ー!」と俺を呼ぶ先輩の声を通り過ぎ車は動き出した。
あっという間に学校が見えなくて俺は呆然と政宗さんを見た。
「軽音部だろ?」
「はい、知ってたんですね。」
「ああ、お前のことはなんでも知ってる」
政宗さんはふっと笑った。
その表情はすごく綺麗でなんだか照れる。
俺はこんな人の隣にいるんだと思うたび自分が劣化して仕方がない。
「政宗さん、綺麗って言われません?」
「……どうした急に。」
「あ、いえ、純粋に綺麗だなって」
政宗さんはきょとんとした。かわいいなって思ってしまった。
「お世辞じゃねぇのは初めてだな。」
小さなリップ音を立たせながら軽く俺にキスをした政宗さんは天然タラシさんなのか本気で悩ましい。
「組長、北谷から折り返し連絡されましたか?」
「めんどくせぇ」
「えぇー……北谷が怒ると厄介なんす、お願いしますよ」
「ちっ……」
舌打ちをしつつもスマホを取り出した政宗さんは電話を掛けた。
政宗さんの横顔を見ていると、カリスマ性というものがわかった気がした。威厳のある面持ちで、誰も近づけさせない空気。でもずっと見ていたい、ついていきたいと思える何かがそこにはあるのだ。
疎外感に似た何かが俺の中に生まれた。
この人の周りには強い人ばっかりだ。自分のしたいことをし、好きな人についていく、人間としては普通の行動だ。
だから、疎外感が生まれる。
「……俺と真反対か」
面白いほど勝手に溢れた言葉は、事実以外の何物でもないから、笑ってしまう。
政宗さんを横目で見れば俺のつぶやきに気づいてない様子だった。
だから何も思わず、車の外を見つめた。
誓先輩に渡されたのは、高い所の苺大福。
一個、800円。俺の大好きなものだ。
「わ!ありがとうございます!!」
「いーえ。どーいたしまして」
「誓……」
「はいはい明人のもあるから!」
明人先輩も貰って幸せそうな顔をしている。
今度お返しに何か持ってこよう。
「じゃ、そろそろ解散にしますか」
「ん」
「はい、お疲れ様でした」
ちょうど、18:30だ。
先輩たちと部室を出た。
外はもう暗い。冬の冷たい風に体を震わせた。門の前に見慣れぬ車があって。その車に寄りかかってタバコを吸うのは片桐さんではない。高身長で、綺麗な黒髪がなびいている。彼は俺を見つけると煙草を携帯灰皿で消した。
「……誰だあれ」
「なーんか、…ヤクザって感じするんだけど」
誓先輩の言葉に冷や汗をかいた。明人先輩は警戒しながらも近づいていく。俺たちが門を出るのと同時に、政宗さんが小さく笑った。
「冰澄」
政宗さんが名前を呼んだことに驚いたのは明人先輩と誓先輩だった。二度ほど俺たちを交互に見ると、「は?」とこぼした。
「……誰だ?」
政宗さんが顔をしかめて不機嫌そうに言った。
「あ、こちら、部活の先輩の誓先輩と明人先輩です。」
「ああ、先輩か…。冰澄、乗れ、帰るぞ。」
「はい……片桐さんは?」
「なんだ片桐のほうがいいのか?」
俺の髪をひと束すくいながら小さく苦笑をこぼした政宗さんに「ち、違います」と首を振った。
「メールは片桐さんだったので……」
「仕事が早めに終わってな。」
仕事といってもものすごい量なんだろうな。
あった時から若干疲れた様子だった。それは今も変わらない。
「あのぉ…冰澄、この方は?」
「どういう関係だ?」
先輩たちが、政宗さんを警戒しながら俺を引っ張った。
「あ、政宗さんは、俺の…」
「恋人だ。以上。」
「え!政宗さん?わっ!」
車の中に押し込まれる。
外から「冰澄ー!」と俺を呼ぶ先輩の声を通り過ぎ車は動き出した。
あっという間に学校が見えなくて俺は呆然と政宗さんを見た。
「軽音部だろ?」
「はい、知ってたんですね。」
「ああ、お前のことはなんでも知ってる」
政宗さんはふっと笑った。
その表情はすごく綺麗でなんだか照れる。
俺はこんな人の隣にいるんだと思うたび自分が劣化して仕方がない。
「政宗さん、綺麗って言われません?」
「……どうした急に。」
「あ、いえ、純粋に綺麗だなって」
政宗さんはきょとんとした。かわいいなって思ってしまった。
「お世辞じゃねぇのは初めてだな。」
小さなリップ音を立たせながら軽く俺にキスをした政宗さんは天然タラシさんなのか本気で悩ましい。
「組長、北谷から折り返し連絡されましたか?」
「めんどくせぇ」
「えぇー……北谷が怒ると厄介なんす、お願いしますよ」
「ちっ……」
舌打ちをしつつもスマホを取り出した政宗さんは電話を掛けた。
政宗さんの横顔を見ていると、カリスマ性というものがわかった気がした。威厳のある面持ちで、誰も近づけさせない空気。でもずっと見ていたい、ついていきたいと思える何かがそこにはあるのだ。
疎外感に似た何かが俺の中に生まれた。
この人の周りには強い人ばっかりだ。自分のしたいことをし、好きな人についていく、人間としては普通の行動だ。
だから、疎外感が生まれる。
「……俺と真反対か」
面白いほど勝手に溢れた言葉は、事実以外の何物でもないから、笑ってしまう。
政宗さんを横目で見れば俺のつぶやきに気づいてない様子だった。
だから何も思わず、車の外を見つめた。
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