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呑まれた五線譜
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(北谷side)
「お疲れ様でした」
マンションの部屋の前で組長が入るまで頭を下げた。今日の組長の機嫌はすこぶる良い。それはなぜかと問われると、単に仕事が早々に切り上げられたからである。
その裏にあるのは冰澄さんと過ごす時間が増えたということである。
「お疲れー北谷ぃ、てことではい」
「……高梨さん」
軽い口調で部屋から出てきた高梨さんは俺には手紙を差し出した。
「これは?」
受け取りながら手紙の裏を見る。丁寧な字で"北谷さん"へ、と書いてあった。
それは綺麗なもので、裏の世界のやつが書いたものではない。
つまりは、"彼"からなのだ。
「冰澄さんからですか?」
「おう。」
高梨さんはタバコに火をつけながらにやにやと気色の悪い笑みを浮かべた。
「何か?」
「いや、……冰澄さんは内気っていうかなんていうかだね」
冰澄さんからの手紙を開ければ、何かの招待状とメモが入っていた。
それを読んで、ああ、本当に内気で、かわいそうで、寂しい方だったのだと思わされる。
「もちろん連れて行きますとも」
メモへの言葉に返事は帰ってはこない。
"北谷さんへ
学園祭の招待券です。よければ息抜きにどうぞ。
政宗さんにも伝えていただければ幸いです。"
高校生とは思えないほど大人びた文章にすこし胸の奥が痛んだ。この人は甘えることもできないのだ。だから頼ることもできない。
内気でかわいそうで寂しい子。
「お役に立てるなら本望ですよ」
目を細めてメモを見つめた。
「……北谷ぃ、お前、人間らしくなったね」
俺は驚く高梨さんを鼻で笑い飛ばし、メモと招待券を袋へ戻した。
「俺はもともと人間らしいでしょう?」
「ほざけ。」
高梨さんは、また気色の悪い笑みを浮かべてから俺に背を向けた。
もう一度手の中の封筒を見る。
組長のことだからきっと冰澄さんのことに関しては、すべて把握しているはずだ。
だから俺から言う必要は全くない。
つまり冰澄さんが言う必要もどこにもない。
それでも組長が自分から言わないのは、冰澄さんから言って欲しいから、何かを欲して欲しいからだ。
「……冰澄さんは手強いですよ」
だって冰澄さんの裏には相当大きな穴があるのだから。
「お疲れ様でした」
マンションの部屋の前で組長が入るまで頭を下げた。今日の組長の機嫌はすこぶる良い。それはなぜかと問われると、単に仕事が早々に切り上げられたからである。
その裏にあるのは冰澄さんと過ごす時間が増えたということである。
「お疲れー北谷ぃ、てことではい」
「……高梨さん」
軽い口調で部屋から出てきた高梨さんは俺には手紙を差し出した。
「これは?」
受け取りながら手紙の裏を見る。丁寧な字で"北谷さん"へ、と書いてあった。
それは綺麗なもので、裏の世界のやつが書いたものではない。
つまりは、"彼"からなのだ。
「冰澄さんからですか?」
「おう。」
高梨さんはタバコに火をつけながらにやにやと気色の悪い笑みを浮かべた。
「何か?」
「いや、……冰澄さんは内気っていうかなんていうかだね」
冰澄さんからの手紙を開ければ、何かの招待状とメモが入っていた。
それを読んで、ああ、本当に内気で、かわいそうで、寂しい方だったのだと思わされる。
「もちろん連れて行きますとも」
メモへの言葉に返事は帰ってはこない。
"北谷さんへ
学園祭の招待券です。よければ息抜きにどうぞ。
政宗さんにも伝えていただければ幸いです。"
高校生とは思えないほど大人びた文章にすこし胸の奥が痛んだ。この人は甘えることもできないのだ。だから頼ることもできない。
内気でかわいそうで寂しい子。
「お役に立てるなら本望ですよ」
目を細めてメモを見つめた。
「……北谷ぃ、お前、人間らしくなったね」
俺は驚く高梨さんを鼻で笑い飛ばし、メモと招待券を袋へ戻した。
「俺はもともと人間らしいでしょう?」
「ほざけ。」
高梨さんは、また気色の悪い笑みを浮かべてから俺に背を向けた。
もう一度手の中の封筒を見る。
組長のことだからきっと冰澄さんのことに関しては、すべて把握しているはずだ。
だから俺から言う必要は全くない。
つまり冰澄さんが言う必要もどこにもない。
それでも組長が自分から言わないのは、冰澄さんから言って欲しいから、何かを欲して欲しいからだ。
「……冰澄さんは手強いですよ」
だって冰澄さんの裏には相当大きな穴があるのだから。
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