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呑まれた五線譜
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「学園祭……?」
「あぁ、なんだ冰澄知らなかったのか?」
「知らなかったです、そっか、もうそんな時期」
「おう」
明人先輩とお昼を食べながら、季節の流れを感じた。
どうやら、もう学園祭の時期らしく、そういえばクラスが賑わっていたのに疑問を持っていた。
学園祭と言われれば納得だ。
その次の時間には模擬店の取り決めが行われた。クラス委員長のゴリ押しで俺たちのクラスは無事ケモミミカフェなるものを獲得したのだ。
どういう経緯でそこにたどり着いたかはもう置いとくとして、俺は今目の前に出された紙切れ3枚を見て、うむと悩んでいた。
「あれ、冰澄さん珍しく悩み事ですか?」
「はい……あ、片桐さん、再来週の土曜日っておひまですか?」
「いつも通りです、あ、どこか行きたいとかそういう系は一旦組長通してもらわんと無理なんですけど…」
「あ、いえ、違うんです学校なんですけど、片桐さんもしよかったら来てくださいね、学園祭なんです」
マンションのエレベーターのボタンを押した片桐さんに学園祭の招待券を差し出す。他に誘う人などいないし、梅さんと楓さんは誓先輩が誘うらしい。他校に別段仲のいい友人などいないので誘う人がいなくて困っていた。
「うち結構お金持ってるんで豪華ですよ!いつものお礼と言ったらまだまだ足りないような気もしますけど…」
「いいんすか?」
「もちろんです」
「……ありがたく受け取ります。あ、組長には渡すんすか?」
「政宗さんは、忙しいかなぁって」
片桐さんに笑ってごまかした。
本当は、あんまりでしゃばっちゃったいけないなと単純に思ったのだ。
来て欲しいとは思う、こんな行事に親しい人を呼ぶなんてなかったから。
というのは上辺だけで、本当は寂しいのだ。
俺を訪ねてやってくる人はいなかった。
羨ましかった、他校の友人や、恋人や、兄弟や、両親が来て、たのしそうに話す人たちが、
羨ましかった。
「組長は、冰澄さんのことなら時間なんていくらでも割くとおもいますよ。」
「いえ…、いいです。恥ずかしいし」
「もしかして軽音部で歌うんすか!?」
「はい、そんな良いものじゃないですけど」
学園祭での軽音部はなかなかの華だ。
誓先輩や明人先輩のかっこよさや、技術の高さは有名で他校から、わざわざ招待券を買ってくる人もいる。
「俺一度でいいから冰澄さんの歌ってるの聞きたかったんすよ~」
「本当に趣味ですから期待しないでくださいね!」
鞄をソファに置きながら笑う。シロが足元まで来て「撫でろ」と目で言った。
わしゃわしゃとシロを撫でてから外を見る少し日が傾いていたが、シロの散歩にはいい時間帯だった。
「片桐さーん!」
「はい、どうかしたんすか?」
キッチンから出てきた片桐さんにシロの散歩には行く旨を伝えれば、二つ返事で頷いた。
「高梨さん、いつもありがとうございます」
「いえいえ、冰澄さんのお願いだから!」
シロの散歩にいつもついてきてくれる高梨さん。身長197センチ、体つきも男らしくて、それに加え金色の短髪、整った顔立ち細長い目、どこをどう見てもイケメンの類に入る方が、俺の横を歩いている。
「どう、学校は?特待制度、組長が解除したそうで」
「そう、ですね。時間ができた気がします。」
「それはよかった」
高梨さんは、目を細めて微笑んだ。
特待生でなくなった、というのは俺には大きな変化を与えた。まず、テストの上位にいなくてもよくなった。でもまだ慣れで上位にいなければという概念は取れない。
それと気分が悪くなった時とか、少しだけ…保健室に行きやすくなったこととか。
「あ、高梨さんもぜひ学園祭来てください」
「学園祭かぁ…いいねぇ、若いって感じがする。行こうかな。西乃芽山学園って言ったらここらで有名なお金持ち学校だし」
「毎年すごいんです。楽しめると思うのでぜひ!」
家に帰ってから高梨さんに招待券を渡した。
ちなみに招待券は一枚2人までなので、
…淡い期待を抱いて北谷さんに最後の一枚を渡そうと思った。
「あぁ、なんだ冰澄知らなかったのか?」
「知らなかったです、そっか、もうそんな時期」
「おう」
明人先輩とお昼を食べながら、季節の流れを感じた。
どうやら、もう学園祭の時期らしく、そういえばクラスが賑わっていたのに疑問を持っていた。
学園祭と言われれば納得だ。
その次の時間には模擬店の取り決めが行われた。クラス委員長のゴリ押しで俺たちのクラスは無事ケモミミカフェなるものを獲得したのだ。
どういう経緯でそこにたどり着いたかはもう置いとくとして、俺は今目の前に出された紙切れ3枚を見て、うむと悩んでいた。
「あれ、冰澄さん珍しく悩み事ですか?」
「はい……あ、片桐さん、再来週の土曜日っておひまですか?」
「いつも通りです、あ、どこか行きたいとかそういう系は一旦組長通してもらわんと無理なんですけど…」
「あ、いえ、違うんです学校なんですけど、片桐さんもしよかったら来てくださいね、学園祭なんです」
マンションのエレベーターのボタンを押した片桐さんに学園祭の招待券を差し出す。他に誘う人などいないし、梅さんと楓さんは誓先輩が誘うらしい。他校に別段仲のいい友人などいないので誘う人がいなくて困っていた。
「うち結構お金持ってるんで豪華ですよ!いつものお礼と言ったらまだまだ足りないような気もしますけど…」
「いいんすか?」
「もちろんです」
「……ありがたく受け取ります。あ、組長には渡すんすか?」
「政宗さんは、忙しいかなぁって」
片桐さんに笑ってごまかした。
本当は、あんまりでしゃばっちゃったいけないなと単純に思ったのだ。
来て欲しいとは思う、こんな行事に親しい人を呼ぶなんてなかったから。
というのは上辺だけで、本当は寂しいのだ。
俺を訪ねてやってくる人はいなかった。
羨ましかった、他校の友人や、恋人や、兄弟や、両親が来て、たのしそうに話す人たちが、
羨ましかった。
「組長は、冰澄さんのことなら時間なんていくらでも割くとおもいますよ。」
「いえ…、いいです。恥ずかしいし」
「もしかして軽音部で歌うんすか!?」
「はい、そんな良いものじゃないですけど」
学園祭での軽音部はなかなかの華だ。
誓先輩や明人先輩のかっこよさや、技術の高さは有名で他校から、わざわざ招待券を買ってくる人もいる。
「俺一度でいいから冰澄さんの歌ってるの聞きたかったんすよ~」
「本当に趣味ですから期待しないでくださいね!」
鞄をソファに置きながら笑う。シロが足元まで来て「撫でろ」と目で言った。
わしゃわしゃとシロを撫でてから外を見る少し日が傾いていたが、シロの散歩にはいい時間帯だった。
「片桐さーん!」
「はい、どうかしたんすか?」
キッチンから出てきた片桐さんにシロの散歩には行く旨を伝えれば、二つ返事で頷いた。
「高梨さん、いつもありがとうございます」
「いえいえ、冰澄さんのお願いだから!」
シロの散歩にいつもついてきてくれる高梨さん。身長197センチ、体つきも男らしくて、それに加え金色の短髪、整った顔立ち細長い目、どこをどう見てもイケメンの類に入る方が、俺の横を歩いている。
「どう、学校は?特待制度、組長が解除したそうで」
「そう、ですね。時間ができた気がします。」
「それはよかった」
高梨さんは、目を細めて微笑んだ。
特待生でなくなった、というのは俺には大きな変化を与えた。まず、テストの上位にいなくてもよくなった。でもまだ慣れで上位にいなければという概念は取れない。
それと気分が悪くなった時とか、少しだけ…保健室に行きやすくなったこととか。
「あ、高梨さんもぜひ学園祭来てください」
「学園祭かぁ…いいねぇ、若いって感じがする。行こうかな。西乃芽山学園って言ったらここらで有名なお金持ち学校だし」
「毎年すごいんです。楽しめると思うのでぜひ!」
家に帰ってから高梨さんに招待券を渡した。
ちなみに招待券は一枚2人までなので、
…淡い期待を抱いて北谷さんに最後の一枚を渡そうと思った。
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