どうしてこんな拍手喝采

ソラ

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8分の1の生き甲斐

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鼓膜を震わせる音は次第に言葉になり俺は目を見開いた。こちらに歩き出していた政宗さんと目があったが、俺はただひたすら鼓膜を震わせた言葉に恐怖を抱いた。

「波津真也が死んだ。」

ダリオさんの顔が耳から離れていく。それと同時に俺は自分の顔を両手で包み爪を立てた。

「あ……ぁ……ぇ?……し、ん…?」

ガリッと音を立てて自分の頬を傷つけた瞬間痛みが走った。

足の力が抜けて、地面に座り込んだ。

そして言葉の意味を理解した。

「し、…ん…だ。」

「そ、死んじゃったわけさ。無残だよ。あ遺体バラバラ殺人!その遺体の大きさ一ついくらだと思う?…直径10センチ!笑えるくらいバッラバラ!」

ダリオさんが腹を抱えて笑った。

「あは…あーはは…はは!ホント!どれだけ殺意があったのって感じだよね!Wonderful! It looks like a human body experiment!!」

「ダリオ!!!!冰澄に何を言った!!」

「おーおーマサムネ怒らないで!You should prepare a funeral.(お前は葬式の準備をすればいい)」

「この無能が…!冰澄、何を言われた」

政宗さんの腕が俺の腕を掴んだ。
そう、大人の手だ。大きくて、強くて、怖くて、それでも暖かくて、

優しかった叔父の手に似てるのだ。

冰澄、冰澄、って言って、あの人はたぶんずっと泣いてた。

あの人にとって俺は、大事な妹の息子っていうだけではなかったはずだ。どうしようもなく鬱陶しい過去を思い出させる鍵、それでも自分の甥。どうしようもない感情。


「波津真也の荷物を調べたらね、ものすごい量の手紙が出てきた。」


ダリオさんは部下から茶色い大きな封筒を受け取った。その封筒は心なしか膨れている。


「どうやら全部、君当てらしい。
一通目だけ読ませてもらったよ。ありふれた挨拶さ。

お元気ですか?体調はどうですか?やはりそちらは寒いですか?

こちらはもう桜が咲きました。速いです。もう春なんですね。


から始まる、最初の手紙さ。」

ダリオさんの手のひらから封筒が離れ、俺の目の前に落ちた。

「本当に、波津真也には踊らされたね。マサムネ。」

「……ダリオ、何を考えてる。一体何を知っている。」

「わぉマサムネも案外いろんなこと知ってそうだね。」

ダリオさんはそう言うと政宗さんに手紙を一通渡した。悪魔のような笑みを浮かべたダリオさんは、ゆっくりと目を伏せてから車に乗り込んだ。

「There is also gentle violence in this world.」

ダリオさんは窓から顔を出してそれだけ言うと、車の中に引っ込んでしまった。そのまま車はユックリと動き出し、俺たちの前から消えた。



目の前の封筒の中身がバラバラに落ちてしまっていた。

そう何百通と言う、手紙の中の

言葉たち。

「…波津真也にはもともと親の遺産で有り余るほど金はあった。俺たちに借りなくてもいいほどにはな。こっちの世界に片足突っ込んでたのは突っ込んでたが、どうやら種類が違う。」

政宗さんの大きな手が伸びて俺の体を止めた。

「その手紙に書かれていることはたぶん、罪悪感と警告だ。お前にはまだ見せたくはない。」

「……政宗さんは知ってるんですか」

「あぁ知ってる。波津真也のことなら…知ってる。」

散らばる手紙を政宗さんは一通ずつ拾い集めると、一つだけ俺に差し出した。
記されている日にちは、もう10年以上前のものだった。

「憶測だが……波津真也はわざと俺とお前を、逢わせようとしたんだ。」

政宗さんの手が、手紙を受け取った俺の手を強く握りしめた。まるでこの震えを止めるように。

強く握りしめた。
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