どうしてこんな拍手喝采

ソラ

文字の大きさ
25 / 47
華やぐ青春の香り

2

しおりを挟む
「冰澄~さっき見てたぞ迷子の子保護者見つかってよかったな」

「あ、佐藤。そっか2-Bってグラウンド出店だっけ。お疲れ。どう?売上」

「おお、冰澄のとこには負けるけどなかなか繁盛してるぜ。たくっよぉ冰澄と誓先輩と明人先輩がいる2-Aに勝てるわけねーよ。」

「ごめんハイスペックが多いんだ。俺は呼び込みくらいしかできないけど」

「何言ってんだお前見た瞬間女子はたちまちケモミミカフェだぜ。くそー西乃芽山軽音部の力半端ねぇな。」

佐藤は首にかけていたタオルで汗を拭きながらニカリと笑った。佐藤とは一年の頃一緒のクラスだった。

「なぁいっちょうちのクラスの宣伝してくれね?横の三年に客取られてんの」

たしかに横の三年の店に客の列がある。

佐藤は一緒のお願いと言いながら頼み込んでくる。仕方がないもう恥なんて捨てた。

「いいよ一回だけね。看板持って。」

「おう!!」

2-Bは確かお好み焼きだ。
俺は一度息をこぼしてからにっこりと笑った。

「2-Bお好み焼きやってまーす!もうそろそろ12時だからみなさんがっつりいってみませんか!校舎の中は甘いもの甘いものしかありませんよー!2-Bのお好み焼き絶品だからよかったら食べて行ってください!一枚で200円!ハーフは100円!お昼ご飯にもってこいですよ!」

「お好み焼きだって。」

「美味しそう。」

「おなかすいたしちょうどいいも」

「がっつり食いてぇわ。」

客がこっちに並んだのを見て俺は佐藤を振り返った。

「これでいい?看板ありがとう。」

「お前の声まじでよく通るよなさすが軽音部。」

「はいはい。俺もう行くよ?呼びこまなきゃ。」

「おう!!ありがとな!今度ジュースおごるわ!」

繁盛しだした2-Bに笑みをこぼしてから、屋台の列を抜けて、校門前のポスターやら呼び込みやらがいっぱいの場所まで来た。

「2-Aケモミミカフェ二階でやってまーす!オススメは、ケモミミカフェパンケーキと自称イケメンのウエイターです!」

「げっ2-Aの波津じゃん。」

「2-Dの後藤くん」

「お前と並んで呼び込みしたくねぇ…あ、2時からの軽音部見に行くからな。」

「ありがとう後藤くん。」

後藤くんはツンデレだという新しいことを知った。


12時をちょっと過ぎればさすが西乃芽山と思うほどの人が大量にやってきた。
近所の人にとっては夏祭り感覚なのだ。

「2-Aケモミミカフェやってますよー」

「あ!軽音部のボーカルの子だ」

「本当だー!2-Aね。行ってくるー!」

「ありがとうございます!」

たぶん走り回ってる先輩たちに謝ってから確実に人を入れていった。
不意に周りがざわついたのを感じて、みんなの視線が集まる受付を見た。

うわ……すごいイケメンだ。

長身のすごく顔の整った人がいる。

さすが西乃芽山、きっと在学生のお兄さんだろう。西乃芽山は無駄に美男美女が多いので有名だ。

「2-Aケモミミカフェやってまーす」

「ケモミミカフェ?珍しいのやってるんだね。」

「あ、こんにちわ!ケモミミカフェどうぞー…って言いたいところなんですけど今たぶん人が多いと思うので13時ごろに行ったらベストです!」

「ありがとう。それくらいに行ってみるよ。呼び込み大変だね。頑張って」

「ありがとうございます!」

ゆったりと微笑んでからイケメンさんは中へ入っていった。

後藤くんに水を買ってきてもらいそれを飲みつつ呼び込みをしている地さっきとは比じゃないくらい周りがざまついた。

「うわ、すげー。波津見てみろよイケメン集団。」

「え、なに?」

後藤くんの指差した方向受付を見てみるとすごい身長の高い集団。一人は、2メートル近く、金髪の短髪の人。
二人目は、いつも冷静で表情をあまり表には出さないインテリ系の人。
三人目は眩しく光るスキンヘッド。

そんな人たちにガードされるように歩いてくるボス感を隠しきれてない人。

「……なぁあの集団こっち来てねぇか?」

「後藤くん、休憩、休憩入ったら?」

「突然!?」

「とにかく!休憩入ったらいいと思う!俺は休憩入るから!!」

「待て波津!看板忘れてる!」

「ありがとう後藤くん!ケモミミカフェ来たら優遇するよう言っとくよ!」

「いやいらねーよ!」

後藤くんに背を向け、後藤くん曰くイケメン集団に駆けた。

「冰澄。」

「まさ、むねさん。みなさん…。」

「こんにちわ冰澄さん。ずいぶん珍しい格好だね。」

「似合ってるのがまたなんというか…。」

「社長、独占欲が機嫌に出てますよ。」

各々が好きな感想を述べる中政宗さんはじっと俺を見た。俺も政宗さんを見た。

今日の政宗さんはいつものブラックスーツではなく、黒のパンツに白のシャツ、この格好でも目立ってしまうのは、もう仕方がないことだろう。

1番目を引いてしまうのが、メガネといつもみたいに髪型がピッシリしてないところだ。

いつもは右側を掻き上げた髪型でピシッとなっている。

「政宗さん、今日はなんだか新鮮ですね。」

「ああ、いつものスーツだとさすがに目立つからな。」

「……かっこいい」

ポツリとこぼれた言葉に数秒自分でも気づかなかったが、すぐに気づいて口を両手で覆った。

「なんでもないです!」

俺の言葉に政宗さんたちはすこし笑みをこぼした。

「冰澄、本当は今すぐにでも連れて帰りたい」

「だ、だめですよ。2時からライブなんです!」

「そうか軽音部だったな。その格好では出るなよ。」

「出ません!」

不意に政宗さんがふっと笑った。

本当に不意打ちだった。

「冰澄、顔が赤いな。」

「暑いんですよ、暑いんです!」

「そうか?」

「暑いの!」

俺は看板で顔を隠しつつ、歩き出す。政宗さんは俺の横に並んで、屋台の賑わいを見つつ、俺の頭についている耳を触った。

「ため息が出るほど似合うな。」

「ありがとうございます。結構好評ですよ。」

「…だろうな。」

「?。あ、そういえば楓さんたちもきてますよ」

「進んで会いに行くほどのやつでもない。」

真顔でそんなこと言うものだから苦笑しか出なかった。
校舎の入り口付近までくれば、めっきり人は多くなってくるはずなのにまるで大名行列のごとく俺たちの周りにはほとんどいなかった。

「あー冰澄~。さっきはさんきゅー!」

「あ、佐藤!売上上がった?」

「めっちゃ上がった!マジでありがとう!今度ジュースどころか昼飯おごるわ!」

「一番高い定食ね。」

「ぐっ…!ああわかった!あ、今から休憩だろ?ナンパ気をつけろよー」

佐藤はまだなにか言おうとした。けれどその先はあまり言って欲しくない。

横に政宗さんがいる。

「お前さっきもナンパされてたろ?迷子の前!男にナンパされてんの初めて見たけど女にも気をつけろよ!」

「佐藤のバカ!!」

「突然傷ついた!!」

佐藤に舌を出してから政宗さんの腕を引いて校舎に入った。

「冰澄、冰澄、そんなに引っ張るな。」

「あ!すみません…!」

「いい。……それよりさっきの」

「え?さっきの?何かありました?」


「冰澄さんが頑張ってるね話をそらそうと。」

「高梨さんさすがに怒られるっすよ。」

「やはり学園祭にはナンパがつきものですね。」

「うるさいです!」

折角話をそらそうとしたのに、こういう時に限ってこの人たち俺の味方してくれない。

「ナンパされたのか?」

「ちょ、ちょっとだけ声かけられたくらいですよ。」

「男にか」

「ええっと、はい、まぁ……んぐ!」

言い訳しようと口を開いた瞬間政宗さんにキスされた。政宗さんはしれっとした顔でため息をこぼした。

「早めに来るべきだったな。」

「な、な、何やってるんですか!見られたらどうするんですか!」

「困ることはないだろう?」

「ありますよ…」

政宗さんは意地悪そうに笑うだけだ。この人は本当に読めない。
何してもかっこいいから憎めないし怒れない。




「政宗さんはどこか行きたいところあります?」

ズボンのポケットからパンフレットを取り出しながら聞いてみる。すると後ろで北谷さんたちが一斉に吹き出した。

「社長にそんなこと言うの冰澄さんくらいだねー」

「わ、笑いすぎですよ。…そういえば今日はみなさん政宗さんのこと"社長"って呼ぶんですね?」

「さすがにいつもの呼び方だとばれますから。」

北谷さんは笑いながら答えた。

笑われたことにちょっとむっとしつつ俺はパンフレットを見ながら歩き出した。

「冰澄が行きたいところでいい。」

「俺のでいいんですか?」

政宗さんの顔を見上げながら聞けばふにゃりと政宗さんが笑った。

う…っわー……。

「ああ、お前の好きなところでいい。」

「あ、あ、ありがとうございます」

「?」

突然崩れたように笑うものだから、つい失礼だけどなんだか可愛いなんて思ってしまった。

今日はなんだかいろんなことを知れる。

政宗さんがくしゃりと笑うとちょっと可愛いこととか。

俺は上機嫌でパンフレットの地図を見た。

「あ、お化け屋敷ありますよ。去年はなかったんですよ。」

「行くか?」

「そうですね折角だし行こうかな」

「片桐が嫌がるな。」

「え!?片桐さんおばけ苦手なんですか?」

「社長!バラすのやめてくれませんか!」

「本当なんだ!」

「昔社長室に幽霊がいるだのお祓いだのほざいたことがあった。」

「片桐さん…!」

俺は耐えきれず大声を出して笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

不器用に惹かれる

タッター
BL
月影暖季は人見知りだ。そのせいで高校に入って二年続けて友達作りに失敗した。 といってもまだ二年生になって一ヶ月しか経っていないが、悲観が止まらない。 それは一年まともに誰とも喋らなかったせいで人見知りが悪化したから。また、一年の時に起こったある出来事がダメ押しとなって見事にこじらせたから。 怖い。それでも友達が欲しい……。 どうするどうすると焦っていれば、なぜか苦手な男が声をかけてくるようになった。 文武両道にいつも微笑みを浮かべていて、物腰も声色も優しい見た目も爽やかイケメンな王子様みたいな男、夜宮。クラスは別だ。 一年生の頃、同じクラスだった時にはほとんど喋らず、あの日以降は一言も喋ったことがなかったのにどうして急に二年になってお昼を誘ってくるようになったのか。 それだけじゃない。月影君月影君と月影攻撃が止まない。 にこにことした笑顔になんとか愛想笑いを返し続けるも、どこか夜宮の様子がおかしいことに気づいていく。 そうして夜宮を知れば知るほどーー

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

500円の願い事

すもも
BL
気づくと扉の前に立っていた、何の変哲のない扉なのに何故かとても惹かれて中に入ると、そこにはあったのは不思議なカフェ。 「願い事をひとつ、書いてください」 そう言われて書いた願い事は ―素敵な恋人が出来ますように― 目を覚ましたその日から、少しずつ変わっていく日常。 不思議な出来事と、恋のはじまりを描く、現代ファンタジーBL。 この作品は別のサイトにも収録しています。

素直になれなくて、ごめんね

舞々
BL
――こんなのただの罰ゲームだ。だから、好きになったほうが負け。 友人との、くだらない賭けに負けた俺が受けた罰ゲームは……大嫌いな転校生、武内章人に告白すること。 上手くいくはずなんてないと思っていたのに、「付き合うからには大切にする」とOKをもらってしまった。 罰ゲームと知らない章人は、俺をとても大切にしてくれる。 ……でも、本当のことなんて言えない。 俺は優しい章人にどんどん惹かれていった。

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

処理中です...