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第一章
8 (主人公以外視点) 公爵家と執事
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「正式に婚約者になったのだ、よろしく頼むぞサフラン」
「えぇ。宜しくお願いしますわ」
ついに公爵家と正式な婚約が結ばれ、貴族達にも発表されたのでサフランは喜んでいた。
リリーナとの婚約破棄の理由は、伯爵家と公爵家の証言が偶然にも一致してしまい、貴族達からはリリーナが悪いということになってしまったのである。
だからこそ、スムーズに二人の婚約が進んだ。
「早速だがサフラン、君に頼みたいことがあるのだが聞いてくれるか?」
「あら! 私もザグローム様に頼みたいことがありましてー」
二人はそれぞれ持っていた書類を手に持ち、ほぼ同時にこう言った。
「俺の国務を任せたいのだ」
「私の仕事をやってほしいんですわ」
「「え!?」」
お互いが言葉に詰まっていた。
「お前の妹リリーナは、俺の命じた国務を簡単にこなしていたのだぞ。ならばサフランとて容易にできるんじゃないのか!?」
「何をおっしゃいますの? ザグローム様こそ、リリーナから多種多様な教育を受けたと聞いていました。ならば私の仕事も簡単にこなせるのでは?」
二人とも、相手が優秀な人間であると勘違いをしていたのだ。
「も……もちろん俺は優秀だぞ。だがな、俺はとてつもなく忙しい。だから婚約相手に仕事を任せるというのが当然の成り行きなのだよ」
「わ……私とてリリーナに劣らないくらいの知識を持っていますわよー。ですが……やはり頼れる王子様の手助けが欲しいのですわ」
お互いに困った表情をしている。
無理もない。
どうにかして、自身には出来ない仕事を相手に押し付けたいために必死なのだ。
「ま……まさかサフラン……お前、実は出来ないから頼んでいるわけじゃないだろうな!?」
「ほへ……そんなまさか! そういうザグローム様こそ、リリーナの教育が分からなくて私に助けを求めているのでは?」
「なんだと!?」
「なによ!」
しばらく口論が続き、やがて不毛だと察し黙った。
「いいか、誰にも言うな。実は国務が出来ない。リリーナに任せていたし、それまでは使用人にこっそりやらせていたのだ」
「……そうでしたか。私も実はリリーナに全部任せて、私がやったということにしていました。……おあいこですね……」
「そのようだな」
二人は喧嘩を経て、お互いの隠していたことを白状したことで仲良くなってしまった。
「この際今回の仕事は二人で協力してやるということでどうだ?」
「そうですね。二人でならきっとできるはずですわ」
「そうだ。一+一=二になる。腹立たしいが、リリーナの力が二だとすれば、俺たちが協力すればあいつに匹敵するという計算だ」
「さすがザグローム様ですわ! あなたとは今後も良い関係を築いていけると確信しました。ちゃっちゃと済ませちゃいましょう!」
「だな」
ザグロームの部屋へ移動し、それぞれの仕事を順番に片付けようとした。
「……何故だ! 協力しているのに全く進まないではないか!」
協力したところで、お互いに無知ではどうすることもできないのである。
「ねぇザグローム様……リリーナに任せた仕事ってどれくらいで片付けていましたか?」
「ん? 遅くとも翌日には完全に終わらせていたが」
サフランは前回行った仕事の処理のことを思い出していた。
「この作業ってどちらも目を通して、判断したのち承認か不承認のどちらかにハンコを押すだけの作業ですよね? リリーナとはいえそんなに早くできるとは思えなかったんですよ」
「つまり……どういうことだ?」
「リリーナは片っ端から承認にハンコを押してただけだと思うんですよ。だってこれって最終決断の書類でしょう? ならばほとんど決まっているようなものじゃないですか」
「……言われてみればそうかもしれん! リリーナのやつ、何も確認しないでやっていたということか!」
「承認にハンコを押すだけなら簡単ですものー。だから、こんなの全部承認に押しちゃえば良いんですわ!」
ザグロームは笑みを浮かべてサフランの肩に手を添えた。
「素晴らしいぞサフラン。流石長女だ。ではこんな作業とっとと終わらせてくれ。後は任せる」
「いえ……そこは運命共同体のようなものですから。一緒にやりましょう……」
「俺は忙し──」
「お互いに秘密を喋った仲ですよね?」
「ぐ……」
書類の山にひたすらハンコを押していき、その日のうちに全てを終わらせた。
そして承認だけにしか押されていない書類は王宮へ送られるのだった。
♢
「そろそろ頃合いですな。お待ちくだされ……リリーナ様」
執事のルルガムが、急に伯爵家から姿を消した。
彼は王宮の国王の元へと向かっていくのだった。
「えぇ。宜しくお願いしますわ」
ついに公爵家と正式な婚約が結ばれ、貴族達にも発表されたのでサフランは喜んでいた。
リリーナとの婚約破棄の理由は、伯爵家と公爵家の証言が偶然にも一致してしまい、貴族達からはリリーナが悪いということになってしまったのである。
だからこそ、スムーズに二人の婚約が進んだ。
「早速だがサフラン、君に頼みたいことがあるのだが聞いてくれるか?」
「あら! 私もザグローム様に頼みたいことがありましてー」
二人はそれぞれ持っていた書類を手に持ち、ほぼ同時にこう言った。
「俺の国務を任せたいのだ」
「私の仕事をやってほしいんですわ」
「「え!?」」
お互いが言葉に詰まっていた。
「お前の妹リリーナは、俺の命じた国務を簡単にこなしていたのだぞ。ならばサフランとて容易にできるんじゃないのか!?」
「何をおっしゃいますの? ザグローム様こそ、リリーナから多種多様な教育を受けたと聞いていました。ならば私の仕事も簡単にこなせるのでは?」
二人とも、相手が優秀な人間であると勘違いをしていたのだ。
「も……もちろん俺は優秀だぞ。だがな、俺はとてつもなく忙しい。だから婚約相手に仕事を任せるというのが当然の成り行きなのだよ」
「わ……私とてリリーナに劣らないくらいの知識を持っていますわよー。ですが……やはり頼れる王子様の手助けが欲しいのですわ」
お互いに困った表情をしている。
無理もない。
どうにかして、自身には出来ない仕事を相手に押し付けたいために必死なのだ。
「ま……まさかサフラン……お前、実は出来ないから頼んでいるわけじゃないだろうな!?」
「ほへ……そんなまさか! そういうザグローム様こそ、リリーナの教育が分からなくて私に助けを求めているのでは?」
「なんだと!?」
「なによ!」
しばらく口論が続き、やがて不毛だと察し黙った。
「いいか、誰にも言うな。実は国務が出来ない。リリーナに任せていたし、それまでは使用人にこっそりやらせていたのだ」
「……そうでしたか。私も実はリリーナに全部任せて、私がやったということにしていました。……おあいこですね……」
「そのようだな」
二人は喧嘩を経て、お互いの隠していたことを白状したことで仲良くなってしまった。
「この際今回の仕事は二人で協力してやるということでどうだ?」
「そうですね。二人でならきっとできるはずですわ」
「そうだ。一+一=二になる。腹立たしいが、リリーナの力が二だとすれば、俺たちが協力すればあいつに匹敵するという計算だ」
「さすがザグローム様ですわ! あなたとは今後も良い関係を築いていけると確信しました。ちゃっちゃと済ませちゃいましょう!」
「だな」
ザグロームの部屋へ移動し、それぞれの仕事を順番に片付けようとした。
「……何故だ! 協力しているのに全く進まないではないか!」
協力したところで、お互いに無知ではどうすることもできないのである。
「ねぇザグローム様……リリーナに任せた仕事ってどれくらいで片付けていましたか?」
「ん? 遅くとも翌日には完全に終わらせていたが」
サフランは前回行った仕事の処理のことを思い出していた。
「この作業ってどちらも目を通して、判断したのち承認か不承認のどちらかにハンコを押すだけの作業ですよね? リリーナとはいえそんなに早くできるとは思えなかったんですよ」
「つまり……どういうことだ?」
「リリーナは片っ端から承認にハンコを押してただけだと思うんですよ。だってこれって最終決断の書類でしょう? ならばほとんど決まっているようなものじゃないですか」
「……言われてみればそうかもしれん! リリーナのやつ、何も確認しないでやっていたということか!」
「承認にハンコを押すだけなら簡単ですものー。だから、こんなの全部承認に押しちゃえば良いんですわ!」
ザグロームは笑みを浮かべてサフランの肩に手を添えた。
「素晴らしいぞサフラン。流石長女だ。ではこんな作業とっとと終わらせてくれ。後は任せる」
「いえ……そこは運命共同体のようなものですから。一緒にやりましょう……」
「俺は忙し──」
「お互いに秘密を喋った仲ですよね?」
「ぐ……」
書類の山にひたすらハンコを押していき、その日のうちに全てを終わらせた。
そして承認だけにしか押されていない書類は王宮へ送られるのだった。
♢
「そろそろ頃合いですな。お待ちくだされ……リリーナ様」
執事のルルガムが、急に伯爵家から姿を消した。
彼は王宮の国王の元へと向かっていくのだった。
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