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私は昔のことをよく覚えている。
私を可愛い可愛いと褒めたたえる両親、その両親をおだてる使用人たち、そして懐疑的な目を私に向けるお姉ちゃん。
可愛さならお姉ちゃんも負けていないのに……いや、お姉ちゃんのほうが整った顔立ちをしているのに、どうして皆はお姉ちゃんを褒めないのだろうか。
まだ六歳の私にはそれがよく分からなかった。
それからお姉ちゃんのことが気になり始めて、気づいたら夢中になっていた。
普通の妹は姉に対してこんな感情は抱かないらしい……でも、私はこの気持ちを恥じたりはしなかった。
たとえそれが家族愛を超えた……愛情だったとしても。
私はお姉ちゃんの全部が欲しかった。
服やアクセサリー、初恋の人まで全部。
お姉ちゃんの初恋の人と恋人になった時は、一瞬だけ高揚感に包まれた。
しかしすぐに罪悪感と嫌悪感に包まれた。
彼と付き合って少しして、私は別れを告げた。
たくさん練習した嘘泣きを披露しながら。
あぁ、どうしたらお姉ちゃんは私のものになるのだろう。
私はいつもそんなことばかり考えていた。
しかし、そんなこと誰も気づかない。
私が可憐で普通の恋をする女の子だと思い込んでいる。
本当は、姉に恋する惨めな女だというのに。
歳をとると考えが変わるというのは本当だった。
そう書かれた本を読んだ時はそんなことあるのかなと疑問に思っていたが、実際に体験してみると、本当なのだと理解することができた。
お姉ちゃんのことは相変わらずに好きだったが、お姉ちゃんを手に入れたい気持ちよりも、守りたい気持ちの方が大きいことに気が付いた。
お姉ちゃんが悪い男に騙されてしまわないように、たくさんの男を知る必要があった。
もちろん体を許すことは出来なかったが、所作や言葉から、その人を知ることは簡単だった。
ミラーもその一人で、私の中で唯一の及第点だったので、お姉ちゃんの婚約者になるように仕向けた。
お姉ちゃんを守るために柔術も学んだ。
教えてくれた先生は厳しい人だったけど、半年頑張ったら、その先生よりもうまくなった。
これも愛のちからだと思ったら、とても嬉しくなった。
お姉ちゃんは順調にミラーと仲を深めて、遂に結婚をした。
少し悔しい気持ちはあったけど、彼ならお姉ちゃんをずっと幸せにしてあげられるのは分かっていた。
女で妹の私じゃ無理なことも……彼ならしてあげられる。
しかし一年が経って、二人の仲が心配になってきた。
離婚してしまったらどうしよう……他の女に取られてしまわないだろうか……そんなことばかり考えるようになり、私は居ても立っても居られなかった。
お姉ちゃんに忠告をして、警戒心を植え付けた。
これで安心……そう思った矢先に、ロットが最低な人間であることが判明した。
しかもお姉ちゃんに手を出そうとしたから、思い切り蹴ってやった。
お姉ちゃんとミラーの事に構いすぎて、人間観察のスキルが衰えていたようだ。
練習台の男友達とは定期的に会っていたけど、いつも同じ人だからあまり練習になっていなかったのかもしれない。
皆は私が浮気をしていると勘違いしているみたいだけどね。
お姉ちゃんは私にとっての最愛の人だった。
そして、いつまで経っても、私を悩ませる世話の焼ける人。
きっとお姉ちゃんは私がいなくなったら、何もできなくなってしまうだろう。
そうであって欲しい。
お姉ちゃんを好きだという気持ちを伝えることはしないことに決めている。
きっとお姉ちゃんは困ってしまうし、私も演技じゃない涙を流してしまうだろうから。
臆病な自分が時々嫌いになるけど、お姉ちゃんはそんな私を望んでないと思うから、明るく振る舞っている。
それでも疲れてしまう時は、秘かに持っているお姉ちゃんの写真集を見て癒される。
世界でたった一つしかない、私の宝物だ。
あぁ……お姉ちゃん、早く会いたいな。
私はいつも祈りながら眠りにつく。
眠っている時だけは、私は自由になる。
頭の中でとても他言できないような想像をたくさんする。
もちろんお姉ちゃんがその中にいる。
私たちは笑い合っていて、いつまでもいつまでも、幸せに暮らす。
「お姉ちゃん、大好きだよ」
早く明日が来ないかな。
私を可愛い可愛いと褒めたたえる両親、その両親をおだてる使用人たち、そして懐疑的な目を私に向けるお姉ちゃん。
可愛さならお姉ちゃんも負けていないのに……いや、お姉ちゃんのほうが整った顔立ちをしているのに、どうして皆はお姉ちゃんを褒めないのだろうか。
まだ六歳の私にはそれがよく分からなかった。
それからお姉ちゃんのことが気になり始めて、気づいたら夢中になっていた。
普通の妹は姉に対してこんな感情は抱かないらしい……でも、私はこの気持ちを恥じたりはしなかった。
たとえそれが家族愛を超えた……愛情だったとしても。
私はお姉ちゃんの全部が欲しかった。
服やアクセサリー、初恋の人まで全部。
お姉ちゃんの初恋の人と恋人になった時は、一瞬だけ高揚感に包まれた。
しかしすぐに罪悪感と嫌悪感に包まれた。
彼と付き合って少しして、私は別れを告げた。
たくさん練習した嘘泣きを披露しながら。
あぁ、どうしたらお姉ちゃんは私のものになるのだろう。
私はいつもそんなことばかり考えていた。
しかし、そんなこと誰も気づかない。
私が可憐で普通の恋をする女の子だと思い込んでいる。
本当は、姉に恋する惨めな女だというのに。
歳をとると考えが変わるというのは本当だった。
そう書かれた本を読んだ時はそんなことあるのかなと疑問に思っていたが、実際に体験してみると、本当なのだと理解することができた。
お姉ちゃんのことは相変わらずに好きだったが、お姉ちゃんを手に入れたい気持ちよりも、守りたい気持ちの方が大きいことに気が付いた。
お姉ちゃんが悪い男に騙されてしまわないように、たくさんの男を知る必要があった。
もちろん体を許すことは出来なかったが、所作や言葉から、その人を知ることは簡単だった。
ミラーもその一人で、私の中で唯一の及第点だったので、お姉ちゃんの婚約者になるように仕向けた。
お姉ちゃんを守るために柔術も学んだ。
教えてくれた先生は厳しい人だったけど、半年頑張ったら、その先生よりもうまくなった。
これも愛のちからだと思ったら、とても嬉しくなった。
お姉ちゃんは順調にミラーと仲を深めて、遂に結婚をした。
少し悔しい気持ちはあったけど、彼ならお姉ちゃんをずっと幸せにしてあげられるのは分かっていた。
女で妹の私じゃ無理なことも……彼ならしてあげられる。
しかし一年が経って、二人の仲が心配になってきた。
離婚してしまったらどうしよう……他の女に取られてしまわないだろうか……そんなことばかり考えるようになり、私は居ても立っても居られなかった。
お姉ちゃんに忠告をして、警戒心を植え付けた。
これで安心……そう思った矢先に、ロットが最低な人間であることが判明した。
しかもお姉ちゃんに手を出そうとしたから、思い切り蹴ってやった。
お姉ちゃんとミラーの事に構いすぎて、人間観察のスキルが衰えていたようだ。
練習台の男友達とは定期的に会っていたけど、いつも同じ人だからあまり練習になっていなかったのかもしれない。
皆は私が浮気をしていると勘違いしているみたいだけどね。
お姉ちゃんは私にとっての最愛の人だった。
そして、いつまで経っても、私を悩ませる世話の焼ける人。
きっとお姉ちゃんは私がいなくなったら、何もできなくなってしまうだろう。
そうであって欲しい。
お姉ちゃんを好きだという気持ちを伝えることはしないことに決めている。
きっとお姉ちゃんは困ってしまうし、私も演技じゃない涙を流してしまうだろうから。
臆病な自分が時々嫌いになるけど、お姉ちゃんはそんな私を望んでないと思うから、明るく振る舞っている。
それでも疲れてしまう時は、秘かに持っているお姉ちゃんの写真集を見て癒される。
世界でたった一つしかない、私の宝物だ。
あぁ……お姉ちゃん、早く会いたいな。
私はいつも祈りながら眠りにつく。
眠っている時だけは、私は自由になる。
頭の中でとても他言できないような想像をたくさんする。
もちろんお姉ちゃんがその中にいる。
私たちは笑い合っていて、いつまでもいつまでも、幸せに暮らす。
「お姉ちゃん、大好きだよ」
早く明日が来ないかな。
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