出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁

文字の大きさ
26 / 26

エピローグ

しおりを挟む
「な、なんでお前がここにいる……」
「一応、元聖女なので助けに来ました」
「……そうか」

王子は、しんみりとした顔で頷いた。
なに納得してるんだ。

「お前がそんなに俺を好きだったとはな」
「は?」

なに、言ってんだ?

「だが、俺もようやくお前の愛に気づいた」
「は?」

王子がこちらに近づいてくる。
や、やめて…いやな予感しか、しない。

「俺もお前の愛にこたえよう」

ひぇ。
王子が私を抱きしめようとする恰好になる。

「リラは、お前のことなんて愛していないわ!!!!」

殿下が思いっきり王子を突き飛ばした。
突き飛ばされた王子は、漫画みたいにゴロゴロと転がっていき、ゴンっ!とすごい音を立てて、壁に頭をぶつけた。

「す、すごい音なってましたけど、大丈夫ですか?」
「リラっ!近づくなっ!汚れる!」
「……あーっ。完全に気絶してますね、これ」

兵士が、一応王子の様子を見てくれた。
おおきなたんこぶ以外、特に異常なしとのことなので、また軽く回復の祈りをかけてあげた。

「帰るっ!!!!!」

普段は、冷静沈着。完全無敵な帝国の殿下様という顔を完全に崩して、殿下は、駄々をこねる子どものような顔をすると、私の腕を強く引っ張った。
兵士が「やれやれ」という顔でついてくる。

なんというか、あっけない終わり方だった。
ここで劇的な終わり方を迎えてもしかたないので、まぁこれでいいのかもしれない。

一応、私たちが帝国に帰ろうとしたら、ひと悶着が起こりはした。

絶対帝国に帰るマンの殿下 VS 絶対私をここに残らせる気満々で、殺気立っている王、王子含め国民のバトルである。
数の暴力で、中々の立ち往生。
さて、どうしたものかなと悩んでいると、そこは天の助け。
いい加減、帰ってこいとしびれを切らした、殿下過激派もとい帝国の聖女率いる聖女軍団がこの国にドシドシとやってきたのである。

もう戦争もかくやという勢いに、さすがのこの国もまたもや折れた。
折れざるを得なかった。
さすがに国の規模が違いすぎる帝国を敵に回すのは、よろしくないと判断できる頭が残っていて、良かった。
それとも魔物との闘いに、さすがに疲れていたのかもしれない。
結局、私たちが帰れたのは、国の浄化を終えて一週間ほど経った頃だった。

この国は、帝国の所属となり、今はきちんとした聖女が国の浄化にあたっている。
そして、約束の交換っこの件について。

「……」

お互いに指輪を送りあっていた。
ご丁寧に指輪のサイズ、デザインまで決められた紙を渡され、用意された材料片手に私は冷や汗をかきながら作ることになった。帝国の殿下に送られる指輪とあって材料が、高価な宝石ばかり。国家予算並みの指輪が出来た。

「これで、お揃いだ」
「はぁ…」

自分の指にはめられた、普段つけるにしては過ぎたる指輪を見て、呆けた返事を返した。

「これで、私たちも婚約をしたということだ」
「はぁ…は、あ。え?」

にっこりと笑う殿下に、あ。これ一本とられたな。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません

おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。 ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。 さらっとハッピーエンド。 ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。

お義姉様ばかりずるいと義妹に婚約者を取られましたが、隣国で幸せに暮らしているのでどうぞご自由に。なので今更帰って来いと言われても困ります。

神崎 ルナ
恋愛
 フラン・サンシェルジュ侯爵令嬢は、義妹のローズに『お義姉様だけずるい』と何度も持ち物を取り上げられてきた。  ついにはアール王子との婚約も奪われてしまう。  フランは隣国へと出奔し、生計を立てることに。  一方その頃、アール王子達は――。 『おい、何でこんな簡単な書類整理ができないんだ?』 『お義姉様にできたことなら私にだってできますわ。もうしばらくお待ち下さい』  仕事をフランに押し付けていたため、書類が山のように溜まる王子の執務室では毎日のように言い合いがされていた。 『やはり、フランでないとダメだ』  ローズとの婚約はそのままに、フランをタダ働きさせるつもりのアール王子がフランを探しに行くが既にフランは隣国で新しい生活を手に入れていた。  その頃サンシェルジュ侯爵邸ではーー。 「見つけたぞっ!!」 「なっ、お前はっ!?」  冒険者風の男がローズと継母に迫っていた。

堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。

木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。 彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。 そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。 彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。 しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。 だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

処理中です...