51 / 59
51
しおりを挟む
アーサーは思わず、といった様子でベッドから抜け出そうとして、腹部が痛んだのか、手でおさえていた。
「あ、いたた……」
「だ、大丈夫?」
「うん……えへへ。だって、すっごく嬉しいんだもの」
「それは良かった。だけど怪我人なんだから、なるべく大人しくね」
「分かってるよ」
アーサーは、よほどうれしいのか興奮しているようで、落ち着きがない。そわそわと病室を見たり私の顔を見たりと大忙しだ。その様子はまるで散歩に行きたがっているポメラニアンみたいだ。早く、早くと急かしている。
「早く学校に行きたいなぁ」
「じゃあ早く治すためにも安静にしてないとね」
「分かってるよ」
ニコニコとしていたアーサーが突然、なにか思い出したらしい。「あっ!」と大きな声を出すものだから、何事かと思っていると、
「そうだ!彼にアリシアと僕が付き合ったこと言っておいてね!絶対だよ!」
「彼?」
「ルドルフだよ!彼も君のことが好きだからね!僕がいない間に浮気しちゃだめだよ」
「ああ。うん」
最近、ルドルフとはちょっと気まずいから、あんまり話したくないんだよなぁ。そんな考えが表情に出ていたんだろう。アーサーが「どうしたの?まさかアリシア……ルドルフのほうが好きなんてこと言わないよね?」と心配そうに聞くので、私はその言葉に首を横に振った。
私がルドルフのことが好きだったら、最初に告白断ってるって。
「違う違う。ちょっと今、ルドルフと気まずくって」
「そうなの?じゃあ、ちょうどいいや」
「まぁ、会ったら言っとくよ」
「うん」
それから、しばらく私とアーサーはとりとめのない話をした。授業内容がどれくらい進んだかとか、最近面白かった本は何かとか。病院にずっといたら暇だろうから、今度おすすめの本を貸すことを約束した後、そろそろ時間なのでと看護師さんが声をかけてきたので、私はお暇することにした。
「じゃあまた来てね」
「うん。お大事に」
そういって私が部屋を出て行こうとすると、「そういえばさぁ」とアーサーが声をかけてきたので、振り向いた。
「アリシアってここに来て、何か思ったことない?」
「思ったこと?」
その言葉に首を傾げた。
ここって、この病室ってこと?
「どういうこと?」
「既視感とかない?」
「既視感?」
私は持病もないし、大きい病気をしたことがないので、アーサーが入院しているこの病院ほど大きな病院にお世話になることはない。
「特にないけど……」
私の言葉にアーサーが無言で私を見つめてくるので、何か変なことを言ってしまったか不安になる。
「どうしたの?」
「ううん。別になにも。じゃあ、またねアリシア」
「うん。お大事にね」
アーサーの様子は、少し変だったけど、それ以上突っ込めるような空気ではなかったので、大人しく退室した。
そうして、病院を後にして学校の寮に戻る帰り道、私は気が重かった。明日からのことを考えると、憂鬱でしかたない。ミアとか、ルドルフとか。
「明日、休みたいなぁ」
「あ、いたた……」
「だ、大丈夫?」
「うん……えへへ。だって、すっごく嬉しいんだもの」
「それは良かった。だけど怪我人なんだから、なるべく大人しくね」
「分かってるよ」
アーサーは、よほどうれしいのか興奮しているようで、落ち着きがない。そわそわと病室を見たり私の顔を見たりと大忙しだ。その様子はまるで散歩に行きたがっているポメラニアンみたいだ。早く、早くと急かしている。
「早く学校に行きたいなぁ」
「じゃあ早く治すためにも安静にしてないとね」
「分かってるよ」
ニコニコとしていたアーサーが突然、なにか思い出したらしい。「あっ!」と大きな声を出すものだから、何事かと思っていると、
「そうだ!彼にアリシアと僕が付き合ったこと言っておいてね!絶対だよ!」
「彼?」
「ルドルフだよ!彼も君のことが好きだからね!僕がいない間に浮気しちゃだめだよ」
「ああ。うん」
最近、ルドルフとはちょっと気まずいから、あんまり話したくないんだよなぁ。そんな考えが表情に出ていたんだろう。アーサーが「どうしたの?まさかアリシア……ルドルフのほうが好きなんてこと言わないよね?」と心配そうに聞くので、私はその言葉に首を横に振った。
私がルドルフのことが好きだったら、最初に告白断ってるって。
「違う違う。ちょっと今、ルドルフと気まずくって」
「そうなの?じゃあ、ちょうどいいや」
「まぁ、会ったら言っとくよ」
「うん」
それから、しばらく私とアーサーはとりとめのない話をした。授業内容がどれくらい進んだかとか、最近面白かった本は何かとか。病院にずっといたら暇だろうから、今度おすすめの本を貸すことを約束した後、そろそろ時間なのでと看護師さんが声をかけてきたので、私はお暇することにした。
「じゃあまた来てね」
「うん。お大事に」
そういって私が部屋を出て行こうとすると、「そういえばさぁ」とアーサーが声をかけてきたので、振り向いた。
「アリシアってここに来て、何か思ったことない?」
「思ったこと?」
その言葉に首を傾げた。
ここって、この病室ってこと?
「どういうこと?」
「既視感とかない?」
「既視感?」
私は持病もないし、大きい病気をしたことがないので、アーサーが入院しているこの病院ほど大きな病院にお世話になることはない。
「特にないけど……」
私の言葉にアーサーが無言で私を見つめてくるので、何か変なことを言ってしまったか不安になる。
「どうしたの?」
「ううん。別になにも。じゃあ、またねアリシア」
「うん。お大事にね」
アーサーの様子は、少し変だったけど、それ以上突っ込めるような空気ではなかったので、大人しく退室した。
そうして、病院を後にして学校の寮に戻る帰り道、私は気が重かった。明日からのことを考えると、憂鬱でしかたない。ミアとか、ルドルフとか。
「明日、休みたいなぁ」
415
あなたにおすすめの小説
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました
柚木ゆず
恋愛
「あら!? もしかして貴方、アリアン!?」
かつてわたしは孤児院で暮らしていて、姉妹のように育ったソリーヌという大切な人がいました。そんなソリーヌは突然孤児院を去ってしまい行方が分からなくなっていたのですが、街に買い物に出かけた際に9年ぶりの再会を果たしたのでした。
もう会えないと思っていた人に出会えて、わたしは本当に嬉しかったのですが――。現状を聞かれたため「とても幸せに暮らしています」と伝えると、ソリーヌは激しく怒りだしてしまったのでした。
地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!
日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」
学園のアイドル、マルスからの突然の告白。
憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。
「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」
親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。
「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」
初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました
柚木ゆず
恋愛
「俺の前で声を出すな!!」
マトート子爵令嬢シャルリーの婚約者であるレロッズ伯爵令息エタンには、隣国に嫁いでしまった初恋の人がいました。
シャルリーの声はその女性とそっくりで、聞いていると恋人になれなかったその人のことを思い出してしまう――。そんな理由でエタンは立場を利用してマトート家に圧力をかけ、自分の前はもちろんのこと不自然にならないよう人前で声を出すことさえも禁じてしまったのです。
自分の都合で好き放題するエタン、そんな彼はまだ知りません。
その傍若無人な振る舞いと自己中心的な性格が、あまりにも大きな災難をもたらしてしまうことを。
※11月18日、本編完結。時期は未定ではありますが、シャルリーのその後などの番外編の投稿を予定しております。
※体調の影響により一時的に、最新作以外の感想欄を閉じさせていただいております。
「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です
希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」
卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。
「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」
私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?
柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。
わたしには、妹なんていないのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる