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第1章「遺跡を臨む地」
第4話「咲いた咲いた、赤白黄色」
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少年にできた事は、ただ涙を両目から溢れさせる事だけ。
――これで、終わり? 一巻の終わり?
一世一代の反抗だった。
せめて一太刀、領主に浴びせるつもりだったはず。
だが現実は、精々、衛兵の膝を刺したくらいで、領主が用意した未来を変える事はできなかった。
――涙が……。
自然と溢れ出る涙は、それでも諦めきれない悔し涙か。
――涙が、止まらないよ……。
重臣の前へ投げ出される少年を衛兵が押さえつけ、斧が振り上げられる。処刑に精剣は使われない。
だが振り下ろされる直前、短い、しかし大きなざわめきが起きた。
「誰だ!」
重臣が怒鳴る先にある姿は、悠々と歩いてくるフミ。
――フミさん……。
「私がいった通りだ。最後まで諦めるな」
自分を見上げてくる少年の顔に、フミが微笑みを向ける。
「よく頑張った。感動しましたよ」
その姿にざわめきは少しずつ大きくなっていった。
「一人で、何をするつもりだ?」
声をあげたのは、村人の側から。
その堂々とした佇まいから感じる気配を形容するとしたら、高貴しかない。
浮かび上がる単語は剣士。
フミがプロミネンスの剣士が前へ出た瞬間、声は全て消えた。
あらゆる期待、希望が膨れあがる中、放たれたものは――、
「この間は、大変なご無礼を」
プロミネンスを持つ剣士が跪いた瞬間、全て崩れ去った。
「あの場をお納めになるため、このメダルを捨てるなんて、さすがは器が違いすぎます」
何を言っているのか理解できた者は、少なくとも領民たちの中にはいない。
剣士が差し出すのは、フミが昨夜、場を収めるために差し出したメダル。
そのメダルに意匠されている紋章は――、
「このメダルの文様……遺跡のシンボルとは……」
遺跡のそこかしこに掲げられている。
「お帰りなさいませ。ご帰還を、皆、首を長くしてお待ちしておりました」
即ち――、
「領主様!」
絶望が、全てを塗りつぶす。
「嘘だ……フミさん……、嘘だ……」
声を震わせる少年を見下ろし、フミは――、
「いっただろう? 最後まで諦めるな、と」
動作も声も、嫌にゆっくりしているフミの顔にあるのは、笑みなどではない。
「その方が、もっともっと深く絶望する!」
茶番だ、喜劇だ、猿芝居だと、フミは声高にいった。
「私はお前たちに、希望と絶望を同時に与えるために旅をしてきた」
完璧な演技だっただろうと自画自賛するため、真っ赤な口を開く。
「そう――その旅の中で知った。精剣には、テーブルがある」
遺跡を指差す。
「テーブルがあり、天井がある。特別な時間帯に、大量のコインを消費し、その後にメダルを使えば、必ず最上級の精剣が現れる」
精剣のシステムを解き明かしたのだ、と宣言した。
「そして人の身体は、自分の中へ入ってこようとする異物を排除しようという意識が働く。生きていようと思うならば当然の事だ。その抵抗は精剣の格を落とす事もわかった。即ち――生きていたくないと思っている女が必要だ」
その全てが今、揃うのだといった所で、フミは高笑いを発した。
「絶望した女たち、私が手に入れたメダルと、コイン。全ての舞台は整った!」
遺跡に登ったフミは、くるりと剣士と女たちを振り向き、
「さぁ、顕現の儀式を始めよう!」
フミが手にしていたコインをばらまく。
いや、ばらまこうとした。
コインは遺跡の中へと消えず、ひらりと宙を舞った男の手に収まっていた。
「何者だ!」
フミが声を荒らげた相手は、赤を基調として黒を配置したタバードに袖を通し、黒のトラウザースと赤いブーツというコントラストの衣装を身に着けていた。
赤いグローブに包まれた手で羽帽子の鍔を跳ね上げると、そこには見知った顔がある。
――これで、終わり? 一巻の終わり?
一世一代の反抗だった。
せめて一太刀、領主に浴びせるつもりだったはず。
だが現実は、精々、衛兵の膝を刺したくらいで、領主が用意した未来を変える事はできなかった。
――涙が……。
自然と溢れ出る涙は、それでも諦めきれない悔し涙か。
――涙が、止まらないよ……。
重臣の前へ投げ出される少年を衛兵が押さえつけ、斧が振り上げられる。処刑に精剣は使われない。
だが振り下ろされる直前、短い、しかし大きなざわめきが起きた。
「誰だ!」
重臣が怒鳴る先にある姿は、悠々と歩いてくるフミ。
――フミさん……。
「私がいった通りだ。最後まで諦めるな」
自分を見上げてくる少年の顔に、フミが微笑みを向ける。
「よく頑張った。感動しましたよ」
その姿にざわめきは少しずつ大きくなっていった。
「一人で、何をするつもりだ?」
声をあげたのは、村人の側から。
その堂々とした佇まいから感じる気配を形容するとしたら、高貴しかない。
浮かび上がる単語は剣士。
フミがプロミネンスの剣士が前へ出た瞬間、声は全て消えた。
あらゆる期待、希望が膨れあがる中、放たれたものは――、
「この間は、大変なご無礼を」
プロミネンスを持つ剣士が跪いた瞬間、全て崩れ去った。
「あの場をお納めになるため、このメダルを捨てるなんて、さすがは器が違いすぎます」
何を言っているのか理解できた者は、少なくとも領民たちの中にはいない。
剣士が差し出すのは、フミが昨夜、場を収めるために差し出したメダル。
そのメダルに意匠されている紋章は――、
「このメダルの文様……遺跡のシンボルとは……」
遺跡のそこかしこに掲げられている。
「お帰りなさいませ。ご帰還を、皆、首を長くしてお待ちしておりました」
即ち――、
「領主様!」
絶望が、全てを塗りつぶす。
「嘘だ……フミさん……、嘘だ……」
声を震わせる少年を見下ろし、フミは――、
「いっただろう? 最後まで諦めるな、と」
動作も声も、嫌にゆっくりしているフミの顔にあるのは、笑みなどではない。
「その方が、もっともっと深く絶望する!」
茶番だ、喜劇だ、猿芝居だと、フミは声高にいった。
「私はお前たちに、希望と絶望を同時に与えるために旅をしてきた」
完璧な演技だっただろうと自画自賛するため、真っ赤な口を開く。
「そう――その旅の中で知った。精剣には、テーブルがある」
遺跡を指差す。
「テーブルがあり、天井がある。特別な時間帯に、大量のコインを消費し、その後にメダルを使えば、必ず最上級の精剣が現れる」
精剣のシステムを解き明かしたのだ、と宣言した。
「そして人の身体は、自分の中へ入ってこようとする異物を排除しようという意識が働く。生きていようと思うならば当然の事だ。その抵抗は精剣の格を落とす事もわかった。即ち――生きていたくないと思っている女が必要だ」
その全てが今、揃うのだといった所で、フミは高笑いを発した。
「絶望した女たち、私が手に入れたメダルと、コイン。全ての舞台は整った!」
遺跡に登ったフミは、くるりと剣士と女たちを振り向き、
「さぁ、顕現の儀式を始めよう!」
フミが手にしていたコインをばらまく。
いや、ばらまこうとした。
コインは遺跡の中へと消えず、ひらりと宙を舞った男の手に収まっていた。
「何者だ!」
フミが声を荒らげた相手は、赤を基調として黒を配置したタバードに袖を通し、黒のトラウザースと赤いブーツというコントラストの衣装を身に着けていた。
赤いグローブに包まれた手で羽帽子の鍔を跳ね上げると、そこには見知った顔がある。
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