78 / 419
第4話
しおりを挟む
小金井の申し出に、東は眉を寄せた。険しい口振りで小金井を睨みつける。
「素性も知れねえやつと手を組むなんざ、馬鹿のすることだ。しかも、死体愛好家だと?デニス・ニセルンにでもなってるつもりか?」
生と死の境界はどこでも明確に別れている。しかし、小金井は死体を愛するという人類のタブーをおかしているようだ。彼の中に、生と死の境は存在していないのだろう。
小金井は、東を見やり、訳がわからないと首を振る。
「東さんは、限りなく近い思考の持ち主だと思ってたんだけどな」
やや残念そうな小金井に対し、東は口調を変えずに返した。
「あ?犯罪者が犯罪者の心理なんか分かるわけねえだろ」
「じゃあ、聞き方を変えるよ。東さんが殺人で罪を感じる部分は、人を殺してしまった、じゃなくて、殺すときに泣かせてしまって可哀想ってとこだったりしない?」
東は、大儀そうに溜め息を吐いた。
突然、発生した事態に、押し留められていた嗜好のタガが外れたタイプだろう。獣欲に突き動かされていることが、すぐに分かる発言だった。
出来ればやめたかった。でもやめられなかった。他に何の喜びも幸せもなかったのだ。
記憶の糸を手繰り寄せ、東が思い出したのは、そんな言葉だった。
自分が異常であると気付いている犯罪者の台詞だ。異常と正常の境目で、長年、苦しんできたことが分かる言葉だ。
東も理解しようと、自分にできる範囲内で調べた。結果はあまり変わらなかったが、多少は、犯罪者という立場から話しは出来る。
生まれたばかりの小金井にはそれがなく、ただ、新しい遊びを覚えた子供のように享楽的になっているだけなのだろう。
いや、そんなことよりも、東には、小金井に対して、腑に落ちない点が幾つかあった。だが、不用意な発言は控え、安部に判断を委ねるように一歩下がり、意図を察した安部は、一度頷き口を切った。
「我々にとっても仲間がいるのは、心強い。それに、貴方を救えるのであれば力を借しますよ」
出会った時のような笑顔で、改めて小金井は手を差し出したが、安部はそれを握らずに言った。
「条件です。我々の武器は、貴方に渡しません。私が、良し、というまで丸腰でいて下さい。この条件はのめますか?」
「そんなこと条件にもならない。もちろん、了承する」
安部は、今度こそ差し出された手を握り返した。その背中を眺めていた東は、安部を透かすように、その先にいる小金井へ鋭い眼光を送っていた。
※※※ ※※※
一台のトラックが八幡東区に入った。自衛隊仕様のカーキ色の荷台が、揺れて、トラックが左折する。運転手を勤めている浩太は、窓の外へ目を向けた。
「素性も知れねえやつと手を組むなんざ、馬鹿のすることだ。しかも、死体愛好家だと?デニス・ニセルンにでもなってるつもりか?」
生と死の境界はどこでも明確に別れている。しかし、小金井は死体を愛するという人類のタブーをおかしているようだ。彼の中に、生と死の境は存在していないのだろう。
小金井は、東を見やり、訳がわからないと首を振る。
「東さんは、限りなく近い思考の持ち主だと思ってたんだけどな」
やや残念そうな小金井に対し、東は口調を変えずに返した。
「あ?犯罪者が犯罪者の心理なんか分かるわけねえだろ」
「じゃあ、聞き方を変えるよ。東さんが殺人で罪を感じる部分は、人を殺してしまった、じゃなくて、殺すときに泣かせてしまって可哀想ってとこだったりしない?」
東は、大儀そうに溜め息を吐いた。
突然、発生した事態に、押し留められていた嗜好のタガが外れたタイプだろう。獣欲に突き動かされていることが、すぐに分かる発言だった。
出来ればやめたかった。でもやめられなかった。他に何の喜びも幸せもなかったのだ。
記憶の糸を手繰り寄せ、東が思い出したのは、そんな言葉だった。
自分が異常であると気付いている犯罪者の台詞だ。異常と正常の境目で、長年、苦しんできたことが分かる言葉だ。
東も理解しようと、自分にできる範囲内で調べた。結果はあまり変わらなかったが、多少は、犯罪者という立場から話しは出来る。
生まれたばかりの小金井にはそれがなく、ただ、新しい遊びを覚えた子供のように享楽的になっているだけなのだろう。
いや、そんなことよりも、東には、小金井に対して、腑に落ちない点が幾つかあった。だが、不用意な発言は控え、安部に判断を委ねるように一歩下がり、意図を察した安部は、一度頷き口を切った。
「我々にとっても仲間がいるのは、心強い。それに、貴方を救えるのであれば力を借しますよ」
出会った時のような笑顔で、改めて小金井は手を差し出したが、安部はそれを握らずに言った。
「条件です。我々の武器は、貴方に渡しません。私が、良し、というまで丸腰でいて下さい。この条件はのめますか?」
「そんなこと条件にもならない。もちろん、了承する」
安部は、今度こそ差し出された手を握り返した。その背中を眺めていた東は、安部を透かすように、その先にいる小金井へ鋭い眼光を送っていた。
※※※ ※※※
一台のトラックが八幡東区に入った。自衛隊仕様のカーキ色の荷台が、揺れて、トラックが左折する。運転手を勤めている浩太は、窓の外へ目を向けた。
0
あなたにおすすめの小説
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる