感染

宇宙人

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第5話

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    どうにも、暴徒の数が少ない。桃園のテニスコートの周辺や、近場のアミューズメントパーク、そちらに集結している可能性も考慮したが、それも違うらしい。不穏な静寂の中、浩太がハンドルを握る。

「なあ、ちょっと静かすぎないか?」

 助手席で煙草を吹かしていた真一は、窓から吸殻を指で飛ばす。

「ああ、確かに少ないぜ......なんつうか、嫌な予感がする......」

 小倉を抜ける途中から、その異常には気付いていたが、二人はどうにも口火を切れなかった。この予感が外れであってほしいという願いも、ここまできてしまえば、いとも容易く水泡に帰す。大規模な、何かが起き、それがこの状況を作り出しているのだろう。
    荷台から運転席に繋がる小窓を開き、装備の確認をしていた達也が口を挟んだ。

「浩太、弾丸だけど、もう残り少ねぇ……どこかで一度、補充しないと厳しそうだぞ」

 暴徒や生存者への懸念に、弾丸にまで及ぶ憂慮、考えることは尽きない。
    ひどまず、目先の目的とするのは、武器を潤沢にすること、まではいかないものの、不安を僅かでも拭い去りたい気持ちがある。
 だが、日本は銃社会ではない。拳銃を一挺入手するだけでも、とてつもない時間と労力がかかる国だ。だからこそ、治安の良さは、世界でも五本の指にはいれているのだが、今となっては、それが障害になると思えた。
    浩太は、頭を振って気分を切り替えると、助手席の真一に尋ねる。

「なあ、どっか武器を置いている場所の心当たりはないか?」

 真一は思案顔になりつつも、それ以外に目立つ変化もない。予め用意していたかのように、淀みなく言った。

「黒崎にあるとしたら、最近、家宅捜査に踏みいられたヤクザの事務所があったはすだぜ。押収されたとなると、多分、警察署だ」

「黒崎の警察署っていうと......」

「八幡西警察署だ。他には、確か……二百号線の交番の真上に、銃砲店があったはずだぜ」

 浩太は、紅梅という町の交差点で車を停めた。まっすぐに抜ければ、八幡西警察署、左に曲がれば国道二百号線へ入る分岐点だ。
    真一が訊いた。

「どっちにいく?」

「八幡西警察署だな。黒崎には市民体育館もある。避難している人がいるかもしれないし、上手くいけば武器も手に入るだろうしな」

「了解だぜ。達也もそれで良いか?」

「ああ。けど、奴等が多い場所は避けてくれたら助かる。荷台に群がられたら、さすがに辛ぇからよ」

「大丈夫、生存者がいなければ無茶はしない」

 縁起の悪い浩太の返しに、達也は内心、冷や汗を流した。トラックは、紅梅の交差点を直進し、黒崎へと進んだ。
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