神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

文字の大きさ
83 / 117

宝物庫への誘い(1)

しおりを挟む
 城主と妃とはそこで分かれると、エルンとアルは別の方へと案内された。
 アルは心ここにあらずの様子。
 ローレンツについていくと城とは別棟の建物が現れた。
 無数の衛兵に見張られた厳重な造りの建物だ。
 ローレンツが合図をすると門番が鍵を開ける。
 開けた瞬間、様々な魔力が混ざり合った一種異様な空気が雪崩出てきてエルンを包み込んだ。
「すごい魔力だ……」
 思わず声が漏れた。
 その言葉にローレンツが反応した。
「魔力に疎い私どもには何も感じないのですが、はやり鑑定スキルの保持者にはそう感じるようですね」
 薄暗い宝物庫の窓が一斉に開けられた。
 普段は陽の光が入らないように閉じられているらしい。
 目の前が一気に広がった。
 何段もの棚に整然と陳列される宝物。
 魔導書、魔道具、剣、盾、鎧、馬車……どれも一級品。国宝も数知れず。
 エルンは言葉が出なかった。
 アルも同じらしい、口がぽかんと開いている。美女も台無しだ。
「ここまで来てお聞きするのはちょっと遅いかもしれませんが、どうして僕はここへ呼ばれたんでしょうか?」
「そうですね、ちゃんとお話ししないといけませんね」
 ローレンツは後ろで手を組むとゆっくり歩きながら話し始めた。
「宝物庫はこれを含めて三十三ありまして、その中には大小、様々な宝物三万五千点が収められております。中にはいかがわしい物も含まれておりますがすべてヴィッツレーベン家にまつわる品ばかりでございます。古いものでは三五〇年前の品から数か月前の品まで時代も様々でございます。ヴァルデマール家が我が国の王権を奪取したのは今から二五三年前。前王権の悪政に業を煮やしたヴァルデマール1世が蜂起し、みごと前王制を打ち破ったわけでございます」
 エルンはあくびを堪えるに必死だったが、アルは大きなあくびをした。
「それ以来、国を統治するために様々な戦いが行われました。国民との戦いもあれば、隣国との闘い、時には病気との闘い、その他さまざま。しかし、これらに関しては全て王と側近、家来たちによって淘汰してまいりました。その中でも最も熾烈を極めたのは悪辣魔法使いとの闘いでございます。奴らは民主を誑かし、国を転覆させようと目論んだのでございます。しかし、我が国は魔法を否定するものではございません。人々を救う魔法であれば率先して擁護し、優秀な魔法使いを育てようと考えておる次第でございます。ここにある宝物はいわばその歴史の証人なのでございます」
 アルが二発目のあくび。確かに学校の歴史の授業より退屈だ。
 堪らずエルンが口を挟んだ。
「つまり、ここにある魔道具の鑑定と修理をすればいいんですね」
「その通りでございます」
 最初からそう言ってくれればいいのに。黙って最後まで聞いてたら、きっと三日くらい歩かないといけなかったね
 アルが涙目でにっこりとエルンに微笑んだ。
「でも、城にも立派な鑑定士や修復師はいらっしゃいますよね」
「もちろんおります。というよりおりました」
 おりました、という言葉が引っかかる。
「エルンストくんもご存じの通り、魔道具に掛けられた魔法というものは時がたつにつれて弱くなります。弱くなるだけならいいのですが、弱くなるにつれて強くなるものがあるのです」
「つまり、封印が弱くなって外に漏れだす邪気のことですか?」
「その通りです。特に邪悪な魔法使いの魂を封印した柩と呼ばれる魔道具が問題なのです」
——ヒツギ。どこかでこの響きを聞いたような気がする。神様から探すよう命じられたものだ。すっかり忘れてた——
「柩といっても必ずしも箱とは限りません。邪気が封印されたものをすべてを柩と呼んでおります」
——えっ、そうなの? 見た目でわからないのなら探しようがないよね——
「だったら封印を強化すればいいと思いますが」
「そうですね。ですがそれがそう簡単なことではないのです。古い物であれば……」
「そうか……」
 エルンはピンと来た。
「そうです」
「わからないわよ。わかるように説明してよね」
 アルが不服を露にする。 
「つまり、古いものは術式が違うんだよ。時代によってはそれに関する資料もほとんどないから、術式を解き明かして対処しないといけないんだ。そのためには時間と労力が必要になる。でないと逆効果になりかねないんだ」
「そういうことね。だったらそう言ってよね」とアル。
「途方もない時間がかかるわけでして、その間に、鑑定士や修復師は次々にその邪気に中り体調を壊したり、気が触れたりして城を去りました。残っているのはわずか数人」
「それで僕を抜擢したということですか。ですが、僕はまだ駆け出しです。とても僕にできるとは思えませんが」
「いいえ、エルンストくんにはそれだけの資質があります。もちろんまだ未熟な点もありますが……これからの成長を加味してお願いしたいのです」
——どうしよう。リサイクルショップの仕事もあるし、学校もあるし……、宝物庫の仕事なんてできるかな——
「できるわけないよ小僧。とっとと帰りな」
 どこからかしゃがれた声が響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...