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第21話
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廊下に伸びていたアーノルドは無事に使用人たちに連れ帰されていった。
その後、父にこってりと絞られた。
ちなみに、兄の言い分としてはリュエル公爵家の令嬢に言い寄られてしまったことに相当な危機感を持ったようで、そこで結婚適齢期であり結婚も婚約もまだな令嬢が多い学園に令嬢に目を付けたようだ。そこで、学園に通う身であるミリアのもとへ来た…ということらしい。
「相当に焦っているようね…」
「飼育係がお似合いかと思います」
何の、とは言わない辺りルーミアも少しは学習したようだ。
とはいえ、ミリアとしてもあれが義姉になるのは勘弁してもらいたい。
よく考えれば、アーノルドの嫁ということはミリアの義姉になるということだ。
そうなれば、いずれ家を出る身とはいえ、仲の良い関係を築いていきたい。
その相手をあえて自分が選んでおけば、今後においてより良好な関係を築けるんではないだろうか。
そう思ったところで思考が止まる。
あのアーノルドに紹介する?妹とはいえ、無断で扉を開ける作法のさの字も無い男に?
「無理ね…」
ぽつりと漏れた一言。聞こえたルーミアがうんうんと頷いている。
そこで思い浮かんでしまうのは、ヴィオーネだ。
アーノルドに果敢に挑み、転ばせた豪の者。
彼女ならアーノルドを抑えつけられるのではないだろうか。
とはいえ、彼女はアーノルドを大層嫌っている。
だから先日案としては出したけども満場一致で却下した。
…しかし、物は試しという言葉もある。
今のアーノルドは相当切羽詰まっている。跡継ぎどころか、最悪の結婚になりそうなくらいに。となれば、見た目も家柄も中身も問題ないヴィオーネは最高の条件だ。
あとはヴィオーネ側だが、これはもう言ってみるしかない。
***
「冗談でしょう?」
顔はにこやか、背景は真っ黒、あまりに対照的なその様子にミリアは背筋を震え上がらせた。
ヴィオーネを捕まえ、適当な雑談で場を温め、アーノルドとの婚約について話を切り出したところこの返事だ。
「い、いえ、冗談ではありま…」
否定しようとしたところでヴィオーネの目が一層きつくなる。
まるで蛇に睨まれた蛙よろしく、言葉が紡げない。
縮こまるミリアを見て、ヴィオーネは目元を和らげ、はぁと一息吐いた。
「…アーノルド様の噂については私も存じ上げております。各家の未婚の令嬢に手当たり次第に求婚していると。あのようなことをされれば例え相手が資産家で侯爵家の令息といえど、悪評が立って仕方ありませんわ」
「そう、ですわね…」
相手のことも、女性の機微も察しないアーノルドにそんなことを理解しろといったところで無駄だろう。なにせ、彼にとって今回の結婚は跡継ぎのための条件でしかないのだから。
「で・す・が!」
再度目元を吊り上げ、ミリアをにらみつける。そのにらみつけの威力たるや、後ろにルーミアがいなければ逃げ出したくなるほどだ。
「だからといってあのような女性の敵と結婚するなど嫌がらせ以外の何物でもありませんわ!二度とそのような話をなさらないでいただけるかしら!」
「は、はい…」
こうまで強固に拒絶にされてはもうミリアとしては何も言えない。
あとはもうアーノルドの頑張りに懸けるしかないかもしれない。
「第一、何故あなたが彼の結婚相手を探しておりますの?以前には『ざまぁみろ』と仰ってらしたではありませんか?」
「その時とは状況が変わりまして…」
「ほほう?」
キランとヴィオーネの目が光る。
「それは一体どのような状況でして?」
「いえ、それはさすがに家のことなので…」
「その家のことが原因であなたが私に結婚の話をしてきたのでは?なら、それを言わないのは卑怯ではなくて?」
「うっ……」
そう言われてしまえばその通りだ。そもそもが家の問題なのに、それの解決に外部の人間であるヴィオーネを使おうとした。その罪悪感がミリアにのしかかる。
「それに、その事情次第では協力してあげてもよろしくてよ?」
「………」
ヴィオーネの協力。それは非常に魅力的だ。
なにせ彼女は学園中の令嬢に慕われる姉御令嬢。今こうしてミリアから話を聞き出そうとしているのも、野次馬半分、もう半分は世話好きの血からだ。
「実は…」
「…それはまた…」
跡継ぎにミリアも候補に入っていること。先日にはリュエル公爵家の令嬢が押し入ってきたこと、このままでは自分が跡継ぎになるか、リュエル公爵家の令嬢が義姉になってしまうこと。その苦悩をミリアは語った。
「仰るとおり、お兄様の求婚に応えてくれる家はどこにもございません。かといって、あまりにその……受け入れるにはアレな方はちょっと。だからといって、私が跡継ぎになるのは…」
「そうですわね…」
考え込むヴィオーネ。
すると、ヴィオーネはゆっくりと瞳をミリアに向けた。
「…ちょっと我儘がすぎるんじゃなくて?」
「えっ?」
思わぬヴィオーネの言葉にミリアはぽかんとした。
「あなたが、よ。どれもあなたが嫌だから、それだけで私に結婚してくれだの、ちょっと我儘なんじゃありませんの?貴族の娘…いえ、子なら優先すべきは家の繁栄ですわ」
「それ、は…」
「なのにあなたときたら自分のことばかりで跡継ぎは嫌、義姉は嫌…それを我儘と言わず何と言いまして?」
「………」
ヴィオーネの言葉がミリアに突き刺さる。
ヴィオーネの正論が、ミリアの心をえぐっていく。
(確かに……そう、なんだけど…)
けれど、ミリアとしては好きで貴族家に生まれた…生まれ変わったわけじゃない。ただ病気の体ではできなかった、好きなことをしたい。好きな人と結ばれたい。ただそれだけを叶えたい。その思いしかなかった。
「家のことを考えるのなら、あなたは彼のこともあきらめる…その選択も必要ですわ」
ヴィオーネの言葉にミリアは愕然とする。
彼を諦める…ルッツのことを諦める。
(諦…める…?ルッツ……を……)
あの光と熱がこもった目が思い出される。あの目で見つめられるとミリアの心はわしづかみにされたかのようにルッツから離れない。
あの目で見られることが、今までのように軽口でのやりとりも、この先にあると思っていたことも…
その、すべてが失われる。
「…ちょっと、ミリア様!?」
「……えっ?」
慌てたヴィオーネがハンカチを取り出し、ミリアの目元に当てる。
その時になってようやく、ミリアは涙を流していたことに気づいた。
ルーミアもすぐさま涙を拭きにかかる。
けれど涙が止まらない。失われる恐怖が、つらさが、悲しみが、流れた涙の分だけ増幅されていくよう。
それが嗚咽に変わるまでにそう時間はかからなかった。
「ふっ……ふぐっ……うぅ……」
「えっ、ちょ、まっ…な、何でですの!?」
ヴィオーネが狼狽するも涙は止まらない。
「い……や……ひくっ…」
「仕方ありませんわ。女性であろうと、家を継ぐのは…」
「ルッ……ツ……」
「………えっ、そっち?」
「お見苦しいところをお見せしました……」
「いえ……」
ようやく嗚咽が収まったミリア。
場には気まずい空気が流れる。
「そこまで彼のことを愛してらっしゃるのね…」
「………」
そう言われ、けれどまだミリアは素直にうなずけない。ルッツを失うのが嫌であれだけ大泣きしながらまだ認めない強情な主人にルーミアはうんざりし始めていた。
「ですが、それでも貴族なら……」
そこまで言ってヴィオーネは言葉を切った。また泣かれてはかなわないからだろう。
そこで、ルーミアが口をはさんだ。
「何をおっしゃいます?」
「えっ?」
「えっ?」
意図が分からず、ミリアとヴィオーネはルーミアを見つめる。
「傲慢、我儘、我が道を行くがモットーのお嬢様が他人の言うことに従って生きるなど、このルーミア、天地がひっくり返ろうともあり得ないと信じております」
「それは…もう…」
それはもう『ミリア』のころの話だ。今はもう違う。ルーミアもそのことは分かっているはず。なのにあえてそれを出してきた意図はなんなのか。
「ルーミアさん。だからといってですね…」
「違いますか?お嬢様」
ヴィオーネの言葉を遮り、ルーミアはミリアに念押ししてくる。
そこでようやくミリアはルーミアの意図を察した。
そう、ミリアはかつての『ミリア』とは違う。
だが、思い起こせば、ミリアとなったこれまでのことすべて、ミリアの我儘なのだ。
『ミリア』ではない自分を『ミリア』の両親に受け入れさせたこと、1年もの間ルーミアにリハビリを突き合わせたこと、1年しかないのに学園に通えるようにしてもらったこと、ルッツとの婚約を解消させたこと、デウスとの婚約を拒否したこと…そのどれもがミリアの我儘なのだ。
方向性は違えど、はた目から見れば今のミリアも十分我儘、傲慢だ。
「…そうね…そうだったわね。そうしてきたものね。これまでも、これからも」
ニヤリとルーミアを見上げれば、ルーミアもニヤリと笑みを返してくれる。
イヤな笑顔を浮かべ合う主従にヴィオーネは口元を引きつらせた。
悪い予感しかしない、と。
「…それでは私、そろそろ失礼させて…」
席を立って逃げようとしたヴィオーネ。が、いつの間にか背後に回ったルーミアが肩を抑え、立ち上がらせてくれない。
「いつの間に!?何なんですの!?」
「まだお嬢様の話は終わっておりませんので」
「私は終わったわ!」
「ええ、その通りよルーミア。私の話は終わってないわ」
ニヤリと笑みを浮かべるミリアにヴィオーネは背筋を震わせた。
(そうよ……諦めることなんてできないし、諦めたくもない。だったら、私の我儘を突き通させてもらうわ)
本気で決意を固めたミリア。その目に宿る光は力強く、表情はずっと晴れやか。
そのミリアとは対照的に、ヴィオーネはどこか諦めたような表情だった。
その後、父にこってりと絞られた。
ちなみに、兄の言い分としてはリュエル公爵家の令嬢に言い寄られてしまったことに相当な危機感を持ったようで、そこで結婚適齢期であり結婚も婚約もまだな令嬢が多い学園に令嬢に目を付けたようだ。そこで、学園に通う身であるミリアのもとへ来た…ということらしい。
「相当に焦っているようね…」
「飼育係がお似合いかと思います」
何の、とは言わない辺りルーミアも少しは学習したようだ。
とはいえ、ミリアとしてもあれが義姉になるのは勘弁してもらいたい。
よく考えれば、アーノルドの嫁ということはミリアの義姉になるということだ。
そうなれば、いずれ家を出る身とはいえ、仲の良い関係を築いていきたい。
その相手をあえて自分が選んでおけば、今後においてより良好な関係を築けるんではないだろうか。
そう思ったところで思考が止まる。
あのアーノルドに紹介する?妹とはいえ、無断で扉を開ける作法のさの字も無い男に?
「無理ね…」
ぽつりと漏れた一言。聞こえたルーミアがうんうんと頷いている。
そこで思い浮かんでしまうのは、ヴィオーネだ。
アーノルドに果敢に挑み、転ばせた豪の者。
彼女ならアーノルドを抑えつけられるのではないだろうか。
とはいえ、彼女はアーノルドを大層嫌っている。
だから先日案としては出したけども満場一致で却下した。
…しかし、物は試しという言葉もある。
今のアーノルドは相当切羽詰まっている。跡継ぎどころか、最悪の結婚になりそうなくらいに。となれば、見た目も家柄も中身も問題ないヴィオーネは最高の条件だ。
あとはヴィオーネ側だが、これはもう言ってみるしかない。
***
「冗談でしょう?」
顔はにこやか、背景は真っ黒、あまりに対照的なその様子にミリアは背筋を震え上がらせた。
ヴィオーネを捕まえ、適当な雑談で場を温め、アーノルドとの婚約について話を切り出したところこの返事だ。
「い、いえ、冗談ではありま…」
否定しようとしたところでヴィオーネの目が一層きつくなる。
まるで蛇に睨まれた蛙よろしく、言葉が紡げない。
縮こまるミリアを見て、ヴィオーネは目元を和らげ、はぁと一息吐いた。
「…アーノルド様の噂については私も存じ上げております。各家の未婚の令嬢に手当たり次第に求婚していると。あのようなことをされれば例え相手が資産家で侯爵家の令息といえど、悪評が立って仕方ありませんわ」
「そう、ですわね…」
相手のことも、女性の機微も察しないアーノルドにそんなことを理解しろといったところで無駄だろう。なにせ、彼にとって今回の結婚は跡継ぎのための条件でしかないのだから。
「で・す・が!」
再度目元を吊り上げ、ミリアをにらみつける。そのにらみつけの威力たるや、後ろにルーミアがいなければ逃げ出したくなるほどだ。
「だからといってあのような女性の敵と結婚するなど嫌がらせ以外の何物でもありませんわ!二度とそのような話をなさらないでいただけるかしら!」
「は、はい…」
こうまで強固に拒絶にされてはもうミリアとしては何も言えない。
あとはもうアーノルドの頑張りに懸けるしかないかもしれない。
「第一、何故あなたが彼の結婚相手を探しておりますの?以前には『ざまぁみろ』と仰ってらしたではありませんか?」
「その時とは状況が変わりまして…」
「ほほう?」
キランとヴィオーネの目が光る。
「それは一体どのような状況でして?」
「いえ、それはさすがに家のことなので…」
「その家のことが原因であなたが私に結婚の話をしてきたのでは?なら、それを言わないのは卑怯ではなくて?」
「うっ……」
そう言われてしまえばその通りだ。そもそもが家の問題なのに、それの解決に外部の人間であるヴィオーネを使おうとした。その罪悪感がミリアにのしかかる。
「それに、その事情次第では協力してあげてもよろしくてよ?」
「………」
ヴィオーネの協力。それは非常に魅力的だ。
なにせ彼女は学園中の令嬢に慕われる姉御令嬢。今こうしてミリアから話を聞き出そうとしているのも、野次馬半分、もう半分は世話好きの血からだ。
「実は…」
「…それはまた…」
跡継ぎにミリアも候補に入っていること。先日にはリュエル公爵家の令嬢が押し入ってきたこと、このままでは自分が跡継ぎになるか、リュエル公爵家の令嬢が義姉になってしまうこと。その苦悩をミリアは語った。
「仰るとおり、お兄様の求婚に応えてくれる家はどこにもございません。かといって、あまりにその……受け入れるにはアレな方はちょっと。だからといって、私が跡継ぎになるのは…」
「そうですわね…」
考え込むヴィオーネ。
すると、ヴィオーネはゆっくりと瞳をミリアに向けた。
「…ちょっと我儘がすぎるんじゃなくて?」
「えっ?」
思わぬヴィオーネの言葉にミリアはぽかんとした。
「あなたが、よ。どれもあなたが嫌だから、それだけで私に結婚してくれだの、ちょっと我儘なんじゃありませんの?貴族の娘…いえ、子なら優先すべきは家の繁栄ですわ」
「それ、は…」
「なのにあなたときたら自分のことばかりで跡継ぎは嫌、義姉は嫌…それを我儘と言わず何と言いまして?」
「………」
ヴィオーネの言葉がミリアに突き刺さる。
ヴィオーネの正論が、ミリアの心をえぐっていく。
(確かに……そう、なんだけど…)
けれど、ミリアとしては好きで貴族家に生まれた…生まれ変わったわけじゃない。ただ病気の体ではできなかった、好きなことをしたい。好きな人と結ばれたい。ただそれだけを叶えたい。その思いしかなかった。
「家のことを考えるのなら、あなたは彼のこともあきらめる…その選択も必要ですわ」
ヴィオーネの言葉にミリアは愕然とする。
彼を諦める…ルッツのことを諦める。
(諦…める…?ルッツ……を……)
あの光と熱がこもった目が思い出される。あの目で見つめられるとミリアの心はわしづかみにされたかのようにルッツから離れない。
あの目で見られることが、今までのように軽口でのやりとりも、この先にあると思っていたことも…
その、すべてが失われる。
「…ちょっと、ミリア様!?」
「……えっ?」
慌てたヴィオーネがハンカチを取り出し、ミリアの目元に当てる。
その時になってようやく、ミリアは涙を流していたことに気づいた。
ルーミアもすぐさま涙を拭きにかかる。
けれど涙が止まらない。失われる恐怖が、つらさが、悲しみが、流れた涙の分だけ増幅されていくよう。
それが嗚咽に変わるまでにそう時間はかからなかった。
「ふっ……ふぐっ……うぅ……」
「えっ、ちょ、まっ…な、何でですの!?」
ヴィオーネが狼狽するも涙は止まらない。
「い……や……ひくっ…」
「仕方ありませんわ。女性であろうと、家を継ぐのは…」
「ルッ……ツ……」
「………えっ、そっち?」
「お見苦しいところをお見せしました……」
「いえ……」
ようやく嗚咽が収まったミリア。
場には気まずい空気が流れる。
「そこまで彼のことを愛してらっしゃるのね…」
「………」
そう言われ、けれどまだミリアは素直にうなずけない。ルッツを失うのが嫌であれだけ大泣きしながらまだ認めない強情な主人にルーミアはうんざりし始めていた。
「ですが、それでも貴族なら……」
そこまで言ってヴィオーネは言葉を切った。また泣かれてはかなわないからだろう。
そこで、ルーミアが口をはさんだ。
「何をおっしゃいます?」
「えっ?」
「えっ?」
意図が分からず、ミリアとヴィオーネはルーミアを見つめる。
「傲慢、我儘、我が道を行くがモットーのお嬢様が他人の言うことに従って生きるなど、このルーミア、天地がひっくり返ろうともあり得ないと信じております」
「それは…もう…」
それはもう『ミリア』のころの話だ。今はもう違う。ルーミアもそのことは分かっているはず。なのにあえてそれを出してきた意図はなんなのか。
「ルーミアさん。だからといってですね…」
「違いますか?お嬢様」
ヴィオーネの言葉を遮り、ルーミアはミリアに念押ししてくる。
そこでようやくミリアはルーミアの意図を察した。
そう、ミリアはかつての『ミリア』とは違う。
だが、思い起こせば、ミリアとなったこれまでのことすべて、ミリアの我儘なのだ。
『ミリア』ではない自分を『ミリア』の両親に受け入れさせたこと、1年もの間ルーミアにリハビリを突き合わせたこと、1年しかないのに学園に通えるようにしてもらったこと、ルッツとの婚約を解消させたこと、デウスとの婚約を拒否したこと…そのどれもがミリアの我儘なのだ。
方向性は違えど、はた目から見れば今のミリアも十分我儘、傲慢だ。
「…そうね…そうだったわね。そうしてきたものね。これまでも、これからも」
ニヤリとルーミアを見上げれば、ルーミアもニヤリと笑みを返してくれる。
イヤな笑顔を浮かべ合う主従にヴィオーネは口元を引きつらせた。
悪い予感しかしない、と。
「…それでは私、そろそろ失礼させて…」
席を立って逃げようとしたヴィオーネ。が、いつの間にか背後に回ったルーミアが肩を抑え、立ち上がらせてくれない。
「いつの間に!?何なんですの!?」
「まだお嬢様の話は終わっておりませんので」
「私は終わったわ!」
「ええ、その通りよルーミア。私の話は終わってないわ」
ニヤリと笑みを浮かべるミリアにヴィオーネは背筋を震わせた。
(そうよ……諦めることなんてできないし、諦めたくもない。だったら、私の我儘を突き通させてもらうわ)
本気で決意を固めたミリア。その目に宿る光は力強く、表情はずっと晴れやか。
そのミリアとは対照的に、ヴィオーネはどこか諦めたような表情だった。
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