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10 元勇者の戦闘服
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ここにいるまで着ていた神官服はもう限界だった。
ほつれ、染み、破れ……
なんならサイズアウト。
あれ、これ呪われてる?
だから、お仕事がもらえて、新しい服をもらったときは、嬉しかった。
そして、それ以上に――ホッとした。
私の“ここにいていい”を、肯定してもらえた気がして。
で、袋を開けたら――
「え、これ……メイド服?」
あの高貴なおうちにいる人たちが着るやつじゃないですか!
黒ワンピースに、白いエプロン。
胸元ふんわり、ちょっと緊張。ちょっと期待。
大人な雰囲気、そして...いやん♡
でも、魔王さんが選んだ?
趣味ってわけじゃ、ないよね?
意外と魔王のイメージってメイドが一列にずらっと並んでいそう
……そんな淡い期待を一瞬抱いた私を、現実が叩き落とす。
「埃にはいいんですよ。でも、ちょっと長すぎません??」
あげをしていないので、足首少し上のロング丈の黒ワンピースだが、まあ、体を埃から守ってはくれそう。
「おかしいな?間違いなくエプロンなんだけど...胸元が余りすぎて、割烹着になる?」
埃による防御は高めてくれそうだけど...
うーん、おかえりなさいませ、ご主人様!じゃないなあ?
「メイドのキャップって三角巾とフェイスマスクだっけ?」
そこに雑巾+ハタキという、武器を持ち勇者!戦闘開始?
理想:可憐なメイド。
現実:プロ掃除
「……まあ、そんなもんだよね。色は一緒だったけど」
全身を鏡で見て、思わずわたしは沈黙する。
「まあ、でも、これでいいか。今必要なのは、おしゃれより戦闘力。」
私は三角巾をきゅっと締め、窓の鍵に手をかける。
ギィィ……
長く開けられていないような鈍い音。
風とともに部屋に舞ったのは――紫色のもや。
「え、なにこれ……埃じゃない」
肌に触れた瞬間、ゾクッとした。
埃?いや、違う……でも、魔界の結界の時と同じ匂いがする。
(なんか良くないものよね)
埃じゃなければなんなんですか?
壁は昔ながらの石造り。
だからただでさえ光を通しにくいのに、こんなに紫の埃が舞ってたら、視界がよく見えなくなってしまう。
「紫さーん、ぱたぱたしますよぉ」
ハタキを一振り。ぱたぱた
ふわっ、と綿菓子みたいに消えていく紫のもや。
空気が、変わる
埃?蜘蛛の巣?魔界だもんね。
蜘蛛の巣が白とは限らない。
「そっか、魔界の蜘蛛の巣かぁ。ドキドキしちゃったよ」
こんな空間で、魔王さんとトミーさん寝てたの?
蜘蛛の巣ぐらい取りましょうよ。
ちょっとはたけばいいだけなのに、誰もしないのかな?
「もう。体に悪いって!」
この臭いに、この紫の埃。
「呼吸器やられちゃうよ!」
私はもう一度ハタキを振る。
今度は右から左。パタパタ。
もやが次々に消えていく。
おおっ!面白いぐらい消える消える!
掃除したらこれは綺麗になるよ!
ぱたぱた
パタパタ
「うんうん、しかも蜘蛛の巣をとったような跡が残らないのがいいねぇ」
景色が開けてく。
空気が軽くなる。
胸の奥も、少しだけ――あったかくなる。
「ここ、ちゃんと暮らせる場所にするからね」
紫の埃が消えるに従い、目の前に見えるのは本当の汚れ。
台所とは縁遠い不潔さだけど、視界が開けると、鍋や皿、調理道具がどんどん見えてくる。
「うわぁ!蜘蛛の巣がなくなっても、これだけ汚れてたら、ご飯も作れないよ!紫の後は緑だ...」
いろんなものにカビが緑、白、青...
「ここ台所なの?本当に??よくここで過ごしてるなあ。」
置いてもらわないといけないし、私には行き場がないしね。
魔王さんにも、トミーさんも。
そして、私も、ここで“暮らしていい”って、そう思える場所にしよう。
そんな風に思った、そのときだった。
カラン……
棚の下の鍋が、カタリと揺れた。
棚の下の鍋に、何かが潜んでいたなんて、私はまだ知らなかった。
ほつれ、染み、破れ……
なんならサイズアウト。
あれ、これ呪われてる?
だから、お仕事がもらえて、新しい服をもらったときは、嬉しかった。
そして、それ以上に――ホッとした。
私の“ここにいていい”を、肯定してもらえた気がして。
で、袋を開けたら――
「え、これ……メイド服?」
あの高貴なおうちにいる人たちが着るやつじゃないですか!
黒ワンピースに、白いエプロン。
胸元ふんわり、ちょっと緊張。ちょっと期待。
大人な雰囲気、そして...いやん♡
でも、魔王さんが選んだ?
趣味ってわけじゃ、ないよね?
意外と魔王のイメージってメイドが一列にずらっと並んでいそう
……そんな淡い期待を一瞬抱いた私を、現実が叩き落とす。
「埃にはいいんですよ。でも、ちょっと長すぎません??」
あげをしていないので、足首少し上のロング丈の黒ワンピースだが、まあ、体を埃から守ってはくれそう。
「おかしいな?間違いなくエプロンなんだけど...胸元が余りすぎて、割烹着になる?」
埃による防御は高めてくれそうだけど...
うーん、おかえりなさいませ、ご主人様!じゃないなあ?
「メイドのキャップって三角巾とフェイスマスクだっけ?」
そこに雑巾+ハタキという、武器を持ち勇者!戦闘開始?
理想:可憐なメイド。
現実:プロ掃除
「……まあ、そんなもんだよね。色は一緒だったけど」
全身を鏡で見て、思わずわたしは沈黙する。
「まあ、でも、これでいいか。今必要なのは、おしゃれより戦闘力。」
私は三角巾をきゅっと締め、窓の鍵に手をかける。
ギィィ……
長く開けられていないような鈍い音。
風とともに部屋に舞ったのは――紫色のもや。
「え、なにこれ……埃じゃない」
肌に触れた瞬間、ゾクッとした。
埃?いや、違う……でも、魔界の結界の時と同じ匂いがする。
(なんか良くないものよね)
埃じゃなければなんなんですか?
壁は昔ながらの石造り。
だからただでさえ光を通しにくいのに、こんなに紫の埃が舞ってたら、視界がよく見えなくなってしまう。
「紫さーん、ぱたぱたしますよぉ」
ハタキを一振り。ぱたぱた
ふわっ、と綿菓子みたいに消えていく紫のもや。
空気が、変わる
埃?蜘蛛の巣?魔界だもんね。
蜘蛛の巣が白とは限らない。
「そっか、魔界の蜘蛛の巣かぁ。ドキドキしちゃったよ」
こんな空間で、魔王さんとトミーさん寝てたの?
蜘蛛の巣ぐらい取りましょうよ。
ちょっとはたけばいいだけなのに、誰もしないのかな?
「もう。体に悪いって!」
この臭いに、この紫の埃。
「呼吸器やられちゃうよ!」
私はもう一度ハタキを振る。
今度は右から左。パタパタ。
もやが次々に消えていく。
おおっ!面白いぐらい消える消える!
掃除したらこれは綺麗になるよ!
ぱたぱた
パタパタ
「うんうん、しかも蜘蛛の巣をとったような跡が残らないのがいいねぇ」
景色が開けてく。
空気が軽くなる。
胸の奥も、少しだけ――あったかくなる。
「ここ、ちゃんと暮らせる場所にするからね」
紫の埃が消えるに従い、目の前に見えるのは本当の汚れ。
台所とは縁遠い不潔さだけど、視界が開けると、鍋や皿、調理道具がどんどん見えてくる。
「うわぁ!蜘蛛の巣がなくなっても、これだけ汚れてたら、ご飯も作れないよ!紫の後は緑だ...」
いろんなものにカビが緑、白、青...
「ここ台所なの?本当に??よくここで過ごしてるなあ。」
置いてもらわないといけないし、私には行き場がないしね。
魔王さんにも、トミーさんも。
そして、私も、ここで“暮らしていい”って、そう思える場所にしよう。
そんな風に思った、そのときだった。
カラン……
棚の下の鍋が、カタリと揺れた。
棚の下の鍋に、何かが潜んでいたなんて、私はまだ知らなかった。
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