19 / 70
19 まさかの聖女?
しおりを挟む
今夜も通常運転ーー
無理やり寄せたガラクタ山の谷には、ふかふかのお布団が敷かれていた。
秘書官のトミー、リン、そして俺、魔王。
三人は仲良く川の字で就寝スタイルだ。
「……おやすみなさい」
リンは、俺の顔をちらっと見る。
そして、毛布にくるまり、コトンと寝息を立てはじめた。
え?……三秒で寝落ち。
「……あんなことのあとでも寝られるのね」
ウンディーネが呆れたように言ったが、リンは全く気にしていないらしく、いつも通りだった。
「ただ風邪をひかせるといけないと思っただけだからね。
それに、孤児院では子どもたちとくっついて寝ていたらしいから、彼女にとって隣に誰かが寝ていることに深い意味はないんだと思うよ」
――でも。
「りんちゃん、おかし~!」
布団の端っこでエアリアがくすくす笑いながら転がる。
エアリアが転がると、ふわふわ色んなものが風で飛ぶ。
「あーっ!ダメです。重要書類もゴミ山にいってしまいますから!!」
トミーが叫ぶ。
エアリアは、ぷぅーっと膨れながら、
「風の精霊に風を起こすなは無理!風を起こすためにいるのに!!」
と、色んなものを蒔き散らしながら魔王城で遊んでいる。
遠くで風の音が聞こえる。
エアリアも久しぶりで、気分が高揚しているらしい。
今夜から魔王城の風通しはすこぶる良くなりそうだ。
「エアリアさん、なんでおかしいって言ったんだろう?え? なにが? どうして??」
リンは小さく首をかしげたまま、何度も俺に聞いていたが、結局はすやすやと夢の国へ行ってるんだもんな。
俺は苦笑いするしかない。
ーー
「完全に寝ましたか?」
「寝ましたね」
夜更け、そっと起き上がるトミーと俺。
万歳ポーズのリンを確認。
熟睡、夢の国にご招待されたままだ。
二人は、顔を見合わせて、静かに寝室を出る。
そして、台所へと向かう。
ネズミイは台所の鍋の中に潜り込みながら、寝床を調整中。
「うーん、せっかくだから俺の鍋も明日リンに磨き直してもらおうかな?瘴気はついてないけど、長く洗ってないんだよなあ」
くんくんと匂いを嗅ぐ。
魔界は、鬼クラスのサイズが多いから、鍋も人間が入れるぐらいでかい。
「リンに洗ってもらったら、また濡れちまうな。魔王さまが、また脱がそうとしても困るよなあ??ったく、びっくりだぜ。」
そんなことを独り言で言いながらも、ネズミイは、バッチリふかふか魔鳥の羽根布団を広げて蓋をのせる準備をする。
「瘴気があるときには、30構造体の鍋蓋のおかげで助かったぜ。だけど、やっぱり一度お日様に乾かしたいよな」
そんなことをネズミイが言いながら振り向くと
ーーげっ!
「……なんだよ。夜中まで作業すんのかよ」
ネズミイはジト目で俺とトミーを睨む。
独り言、しっかり聞こえてるよ。
俺は、苦笑いしつつも、ネズミイの表情が活き活きしてきている変化に少し嬉しくなる。だが、今日はさらに気になることがある。
「いや、ちょっとウンディーネと話したいことがあるんだ」
俺の声は、めずらしく真剣だったからか、それを聞いたウンディーネも、魔石からゆらりと現れる。
「来ると思ってたわ」
ウンディーネはなぜかドヤ顔の仁王立ち。
「リンの掃除の件だけど……」
「あーー!まだあいつの服脱がせたいのか?おいおい、普通、あいつのあの掃除姿に発情しろって無理だろ!今日はびっくりしたぜ!」
即ツッコミをかますネズミイ。
「ち、ちがっ……!ハレンチだ!そういう意味じゃない!」
俺は終わったはずと思っていたところのカウンターパンチに、珍しくうろたえて耳まで真っ赤になってしまう。
今まで長く生きてきても、こういうツッコミを受けたことはない。
「ただ否定すればいいんです。あなたの言い訳っぽい発言がハレンチなんですよ」
トミーが冷静に刺してきた。
ぐはっ!
ハレンチって!!
「まあまあ、茶化すのはそこまでにして」
ウンディーネが腕を組む。
「話したいこと、私も察してるわ」
俺は小さく息をのむ。
「やっぱり……そう、なんだね」
リンを見て、まさかと思っていたが、可能性としてはそれしか考えられなかった。
そうだ!それもあって、余計にあんな突拍子もない行動をとってしまったんだ。
あんな小さな子の服を脱がそうなんて!
そんないい大人がしてはならない。
俺は再び思い出し真っ赤になる。
「?」
「???」
ネズミイとトミーが、挙動不審な俺の様子に、揃って首をかしげた。
ウンディーネはふんっと鼻で笑い、冷静な顔でみんなに告げた。
「彼女――リンは、聖女よ。しかも、相当な力を持ってる」
「ええええええええ!?!?!?」
ネズミイとトミーの声が、廊下に響きわたった。
「マジかよ! もっとこう……聖女って聖女な感じかと思ってたぞ!?」
ネズミイは意味なく、小さな手で聖女を想像するようなシルエットを作る。
「でもよく考えると、リンさんが掃除したあとって、空気が澄んでるんですよね」
トミーは、顎に手を置いて、そういうことかとうなずいた。
「初日に会った時、あれって思ったの。台所、カビや汚れだけじゃなく瘴気まで消えてた」
ウンディーネが部屋の瘴気だまりがあったところを指さす。
「……ハタキのせいじゃなかったのか?」
ネズミイは思わずごくんと息を呑む。
「だったら全員パタパタしてるわよ」
ウンディーネがパタパタするふりをする。
「だけどよぉ!こんな台所に聖女がはたきを手にしてるのおかしいだろうよ。でも...今日の噴水や小川も、リンの掃除のあと瘴気が消えたんだったな」
流石に、ネズミイも嘘だろと言いつつ、今日の紫の瘴気が抜けていくのを見ているだけに次の言葉が続かない。
「でも、紫ぃー!って歌ってたぞ。あれが浄化なのか?」
ネズミイの聖女像が崩れていくようで、意味なく手で聖女の形を作っていたシルエットが、リンの背丈ぐらいのところを手で示す形に変わっていく。
「絨毯を踏んだ瞬間に、瘴気がじわっと抜けてったじゃない。普通の魔族があれやったら死ぬって」
ウンディーネが、そんなネズミイにため息混じりに話しかける。
「えーっ!ウンディーネとエアリアのスペシャルクリーニングのおかげじゃなかったのかよ」
「ちがうよぉ。私は風を通しただけ~」
エアリアも一通り魔王城で風を吹かせて満足したらしい。
台所に戻ってきて話に参戦し始めた。
ふわっと登場して、クリーニングを表すように、指先で空気をくるくる撫でる。
「リンちゃんが瘴気をほぐしてくれてたおかげで、廊下もスイスイだったよ」
天然、無自覚、でも最強クラスの浄化能力。
リンは――まぎれもなく
「聖女!」
みんな台所で重苦しい雰囲気になり、呆然としている。
「これ……大変なことになるぞ……!」
トミーが真顔になる。
「聖女って、本来は魔王を浄化するために召喚される存在じゃないですか……!」
「つか、“嫁候補”になった前例なんかねえだろ……」
ネズミイが頭を抱える。
「……でも、大義名分になるわ」
ウンディーネが肩をすくめる。
「瘴気を消してくれる存在が魔王のお嫁さんですもの。国民みんな大喜び。」
「いや、わたしは……そんな打算じゃ……」
俺は視線をそらして、今日のこともあり、耳まで染めて口ごもる。
トミーはあえて何も言わないが、俺がリンと今後どう関わればいいか迷っていることを見抜いているようだった。
そのとき――
ドンカラガッシャーーン!!
寝室から、轟音が響く。
「しまった……リンは!!」
俺は真っ青な顔になる。
「寝相が悪いんだったーーー!!」
深夜の魔王城に、俺の全力ダッシュが響き渡る。
あのゴミ魔窟は、曰く付きだらけだ!
無理やり寄せたガラクタ山の谷には、ふかふかのお布団が敷かれていた。
秘書官のトミー、リン、そして俺、魔王。
三人は仲良く川の字で就寝スタイルだ。
「……おやすみなさい」
リンは、俺の顔をちらっと見る。
そして、毛布にくるまり、コトンと寝息を立てはじめた。
え?……三秒で寝落ち。
「……あんなことのあとでも寝られるのね」
ウンディーネが呆れたように言ったが、リンは全く気にしていないらしく、いつも通りだった。
「ただ風邪をひかせるといけないと思っただけだからね。
それに、孤児院では子どもたちとくっついて寝ていたらしいから、彼女にとって隣に誰かが寝ていることに深い意味はないんだと思うよ」
――でも。
「りんちゃん、おかし~!」
布団の端っこでエアリアがくすくす笑いながら転がる。
エアリアが転がると、ふわふわ色んなものが風で飛ぶ。
「あーっ!ダメです。重要書類もゴミ山にいってしまいますから!!」
トミーが叫ぶ。
エアリアは、ぷぅーっと膨れながら、
「風の精霊に風を起こすなは無理!風を起こすためにいるのに!!」
と、色んなものを蒔き散らしながら魔王城で遊んでいる。
遠くで風の音が聞こえる。
エアリアも久しぶりで、気分が高揚しているらしい。
今夜から魔王城の風通しはすこぶる良くなりそうだ。
「エアリアさん、なんでおかしいって言ったんだろう?え? なにが? どうして??」
リンは小さく首をかしげたまま、何度も俺に聞いていたが、結局はすやすやと夢の国へ行ってるんだもんな。
俺は苦笑いするしかない。
ーー
「完全に寝ましたか?」
「寝ましたね」
夜更け、そっと起き上がるトミーと俺。
万歳ポーズのリンを確認。
熟睡、夢の国にご招待されたままだ。
二人は、顔を見合わせて、静かに寝室を出る。
そして、台所へと向かう。
ネズミイは台所の鍋の中に潜り込みながら、寝床を調整中。
「うーん、せっかくだから俺の鍋も明日リンに磨き直してもらおうかな?瘴気はついてないけど、長く洗ってないんだよなあ」
くんくんと匂いを嗅ぐ。
魔界は、鬼クラスのサイズが多いから、鍋も人間が入れるぐらいでかい。
「リンに洗ってもらったら、また濡れちまうな。魔王さまが、また脱がそうとしても困るよなあ??ったく、びっくりだぜ。」
そんなことを独り言で言いながらも、ネズミイは、バッチリふかふか魔鳥の羽根布団を広げて蓋をのせる準備をする。
「瘴気があるときには、30構造体の鍋蓋のおかげで助かったぜ。だけど、やっぱり一度お日様に乾かしたいよな」
そんなことをネズミイが言いながら振り向くと
ーーげっ!
「……なんだよ。夜中まで作業すんのかよ」
ネズミイはジト目で俺とトミーを睨む。
独り言、しっかり聞こえてるよ。
俺は、苦笑いしつつも、ネズミイの表情が活き活きしてきている変化に少し嬉しくなる。だが、今日はさらに気になることがある。
「いや、ちょっとウンディーネと話したいことがあるんだ」
俺の声は、めずらしく真剣だったからか、それを聞いたウンディーネも、魔石からゆらりと現れる。
「来ると思ってたわ」
ウンディーネはなぜかドヤ顔の仁王立ち。
「リンの掃除の件だけど……」
「あーー!まだあいつの服脱がせたいのか?おいおい、普通、あいつのあの掃除姿に発情しろって無理だろ!今日はびっくりしたぜ!」
即ツッコミをかますネズミイ。
「ち、ちがっ……!ハレンチだ!そういう意味じゃない!」
俺は終わったはずと思っていたところのカウンターパンチに、珍しくうろたえて耳まで真っ赤になってしまう。
今まで長く生きてきても、こういうツッコミを受けたことはない。
「ただ否定すればいいんです。あなたの言い訳っぽい発言がハレンチなんですよ」
トミーが冷静に刺してきた。
ぐはっ!
ハレンチって!!
「まあまあ、茶化すのはそこまでにして」
ウンディーネが腕を組む。
「話したいこと、私も察してるわ」
俺は小さく息をのむ。
「やっぱり……そう、なんだね」
リンを見て、まさかと思っていたが、可能性としてはそれしか考えられなかった。
そうだ!それもあって、余計にあんな突拍子もない行動をとってしまったんだ。
あんな小さな子の服を脱がそうなんて!
そんないい大人がしてはならない。
俺は再び思い出し真っ赤になる。
「?」
「???」
ネズミイとトミーが、挙動不審な俺の様子に、揃って首をかしげた。
ウンディーネはふんっと鼻で笑い、冷静な顔でみんなに告げた。
「彼女――リンは、聖女よ。しかも、相当な力を持ってる」
「ええええええええ!?!?!?」
ネズミイとトミーの声が、廊下に響きわたった。
「マジかよ! もっとこう……聖女って聖女な感じかと思ってたぞ!?」
ネズミイは意味なく、小さな手で聖女を想像するようなシルエットを作る。
「でもよく考えると、リンさんが掃除したあとって、空気が澄んでるんですよね」
トミーは、顎に手を置いて、そういうことかとうなずいた。
「初日に会った時、あれって思ったの。台所、カビや汚れだけじゃなく瘴気まで消えてた」
ウンディーネが部屋の瘴気だまりがあったところを指さす。
「……ハタキのせいじゃなかったのか?」
ネズミイは思わずごくんと息を呑む。
「だったら全員パタパタしてるわよ」
ウンディーネがパタパタするふりをする。
「だけどよぉ!こんな台所に聖女がはたきを手にしてるのおかしいだろうよ。でも...今日の噴水や小川も、リンの掃除のあと瘴気が消えたんだったな」
流石に、ネズミイも嘘だろと言いつつ、今日の紫の瘴気が抜けていくのを見ているだけに次の言葉が続かない。
「でも、紫ぃー!って歌ってたぞ。あれが浄化なのか?」
ネズミイの聖女像が崩れていくようで、意味なく手で聖女の形を作っていたシルエットが、リンの背丈ぐらいのところを手で示す形に変わっていく。
「絨毯を踏んだ瞬間に、瘴気がじわっと抜けてったじゃない。普通の魔族があれやったら死ぬって」
ウンディーネが、そんなネズミイにため息混じりに話しかける。
「えーっ!ウンディーネとエアリアのスペシャルクリーニングのおかげじゃなかったのかよ」
「ちがうよぉ。私は風を通しただけ~」
エアリアも一通り魔王城で風を吹かせて満足したらしい。
台所に戻ってきて話に参戦し始めた。
ふわっと登場して、クリーニングを表すように、指先で空気をくるくる撫でる。
「リンちゃんが瘴気をほぐしてくれてたおかげで、廊下もスイスイだったよ」
天然、無自覚、でも最強クラスの浄化能力。
リンは――まぎれもなく
「聖女!」
みんな台所で重苦しい雰囲気になり、呆然としている。
「これ……大変なことになるぞ……!」
トミーが真顔になる。
「聖女って、本来は魔王を浄化するために召喚される存在じゃないですか……!」
「つか、“嫁候補”になった前例なんかねえだろ……」
ネズミイが頭を抱える。
「……でも、大義名分になるわ」
ウンディーネが肩をすくめる。
「瘴気を消してくれる存在が魔王のお嫁さんですもの。国民みんな大喜び。」
「いや、わたしは……そんな打算じゃ……」
俺は視線をそらして、今日のこともあり、耳まで染めて口ごもる。
トミーはあえて何も言わないが、俺がリンと今後どう関わればいいか迷っていることを見抜いているようだった。
そのとき――
ドンカラガッシャーーン!!
寝室から、轟音が響く。
「しまった……リンは!!」
俺は真っ青な顔になる。
「寝相が悪いんだったーーー!!」
深夜の魔王城に、俺の全力ダッシュが響き渡る。
あのゴミ魔窟は、曰く付きだらけだ!
10
あなたにおすすめの小説
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる