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41 【サイド】マクライア4
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「ギルドやってるって聞いたけど」
ウンディーネ(=アルデリア)は聞いた
「ああ。意味あるかわかんねぇけど……せめて無理な依頼やバランスの悪いパーティには押し付けないようにしてる」
俯きながら、マクライアはぽつりと語る。
「頑張ってるじゃない」
ウンディーネが微笑むと、彼の背筋が少し伸びる。
「でも……ダメだ。最近は“聖女”って肩書きの安売りみたいになってて。あの日、お前が命を削って積み上げたものが、全部無意味にされたみたいに思えて無力さしか感じない」
マクライアは自嘲気味に笑った。
「この間なんて、細っこい女の子が“聖女認定試験で勇者になったって言ってきてな。でも、勇者じゃないのは見ても明らかなんだ。この国は見ても明らかなものにすら、気づきもしない。それなのに、俺、また何もできなかった。見てるだけだった」
「…それ…リンちゃんのことね」
「え?知ってるのか?」
「会ったわよ。むしろ、彼女こそ“本物”の聖女よ。今は魔王さまに大事にされてる」
「……は?聖女??大事って?」
「ふふっ。あんた、そういうとこは鈍感なクセに、変なとこで勘が鋭いのよね」
「俺、あの子を魔界に行かせて正解だったのかな」
「さあね。でも……少なくとも、ガブリエルの元よりはずっとマシよ」
ガブリエルは、魔術師をやめて、アルデリアを“理想の聖女”として利用し、教会の頂点に登り詰めた。
それが、更にマクライアの心に重くのしかかっていた。
「……リースは盗賊崩れで、仲間割れで死んだ。盾役のキリルは、教会騎士団にいたらしいけどな、先週、森で獣にやられたって話だ」
「……先週って。ほんとについ最近じゃない」
ウンディーネは嫌な予感がする。
「最近、魔界も瘴気が溜まり始めたし、リンちゃんが魔界に来たり、キリルが殺されたり。なんか一気に動き始めている気がするわ」
「ああ。教会もおかしくなる一方だからな。もう俺たちも歳だ。あれから年数が経ったのに結局、反省させることもできず、あいつらをお前に詫びさせることもできずに終わったよ」
「今さら詫びられても困るわよ。……生涯悔やみなさい」
「ああ。悔やみ続ける。そして、お前を……弔い続ける」
「残念だけど、私はもう墓の下にはいないの。精霊になって、自由にやってるから」
だから、もういいわよとウンディーネはぷいっと呟く。
「それでも……俺にできるのは、それだけだ」
静かな声で、マクライアは言った。
そんなマクライアを見て、ウンディーネは変わってないわねとつぶやいて、ため息をつきながら言った。
「リンちゃんと魔王さまがね。私が指輪越しに移動できるように細工してくれたの」
ウンディーネは指輪をひと撫でして、優しく笑った。
「だから、誰もいないところで懺悔するくらいなら――
ちゃんと、私の前で懺悔しなさいよ」
「……えっ?」
『それと、次来るときは座布団ね!ちゃんと私用の!』
マクライアは目を潤ませながら、しっかりとうなずいた。
「……ああ、アルデリア。君のために、最高の座布団、用意するよ」
「じゃ、戻るね。リンちゃんたちも心配してるだろうし」
ふわりと水の粒が舞い上がり、ウンディーネの姿は静かに消えていった。
静寂が店に広がる。
――夢じゃない。
指輪も、伝書鳥も、確かにここにいる。
マクライアは、その足で夜の街へと出かけ、彼女が好きだったブルーの指輪ケースを探しに行った。
手に入れたそのケースを何度も見つめながら、心の中で繰り返す。
「気に入ってくれるといいな、アルデリア……」
だが――その願いが叶うことは、なかった。
その夜、マクライアは何者かによって命を奪われた。
翌朝、店のテーブルには、ブルーの指輪ケースに収められた指輪が、ひとつだけ静かに置かれていた。
それが、マクライアからアルデリアへの最後の贈り物だった。
ウンディーネ(=アルデリア)は聞いた
「ああ。意味あるかわかんねぇけど……せめて無理な依頼やバランスの悪いパーティには押し付けないようにしてる」
俯きながら、マクライアはぽつりと語る。
「頑張ってるじゃない」
ウンディーネが微笑むと、彼の背筋が少し伸びる。
「でも……ダメだ。最近は“聖女”って肩書きの安売りみたいになってて。あの日、お前が命を削って積み上げたものが、全部無意味にされたみたいに思えて無力さしか感じない」
マクライアは自嘲気味に笑った。
「この間なんて、細っこい女の子が“聖女認定試験で勇者になったって言ってきてな。でも、勇者じゃないのは見ても明らかなんだ。この国は見ても明らかなものにすら、気づきもしない。それなのに、俺、また何もできなかった。見てるだけだった」
「…それ…リンちゃんのことね」
「え?知ってるのか?」
「会ったわよ。むしろ、彼女こそ“本物”の聖女よ。今は魔王さまに大事にされてる」
「……は?聖女??大事って?」
「ふふっ。あんた、そういうとこは鈍感なクセに、変なとこで勘が鋭いのよね」
「俺、あの子を魔界に行かせて正解だったのかな」
「さあね。でも……少なくとも、ガブリエルの元よりはずっとマシよ」
ガブリエルは、魔術師をやめて、アルデリアを“理想の聖女”として利用し、教会の頂点に登り詰めた。
それが、更にマクライアの心に重くのしかかっていた。
「……リースは盗賊崩れで、仲間割れで死んだ。盾役のキリルは、教会騎士団にいたらしいけどな、先週、森で獣にやられたって話だ」
「……先週って。ほんとについ最近じゃない」
ウンディーネは嫌な予感がする。
「最近、魔界も瘴気が溜まり始めたし、リンちゃんが魔界に来たり、キリルが殺されたり。なんか一気に動き始めている気がするわ」
「ああ。教会もおかしくなる一方だからな。もう俺たちも歳だ。あれから年数が経ったのに結局、反省させることもできず、あいつらをお前に詫びさせることもできずに終わったよ」
「今さら詫びられても困るわよ。……生涯悔やみなさい」
「ああ。悔やみ続ける。そして、お前を……弔い続ける」
「残念だけど、私はもう墓の下にはいないの。精霊になって、自由にやってるから」
だから、もういいわよとウンディーネはぷいっと呟く。
「それでも……俺にできるのは、それだけだ」
静かな声で、マクライアは言った。
そんなマクライアを見て、ウンディーネは変わってないわねとつぶやいて、ため息をつきながら言った。
「リンちゃんと魔王さまがね。私が指輪越しに移動できるように細工してくれたの」
ウンディーネは指輪をひと撫でして、優しく笑った。
「だから、誰もいないところで懺悔するくらいなら――
ちゃんと、私の前で懺悔しなさいよ」
「……えっ?」
『それと、次来るときは座布団ね!ちゃんと私用の!』
マクライアは目を潤ませながら、しっかりとうなずいた。
「……ああ、アルデリア。君のために、最高の座布団、用意するよ」
「じゃ、戻るね。リンちゃんたちも心配してるだろうし」
ふわりと水の粒が舞い上がり、ウンディーネの姿は静かに消えていった。
静寂が店に広がる。
――夢じゃない。
指輪も、伝書鳥も、確かにここにいる。
マクライアは、その足で夜の街へと出かけ、彼女が好きだったブルーの指輪ケースを探しに行った。
手に入れたそのケースを何度も見つめながら、心の中で繰り返す。
「気に入ってくれるといいな、アルデリア……」
だが――その願いが叶うことは、なかった。
その夜、マクライアは何者かによって命を奪われた。
翌朝、店のテーブルには、ブルーの指輪ケースに収められた指輪が、ひとつだけ静かに置かれていた。
それが、マクライアからアルデリアへの最後の贈り物だった。
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