【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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42 魔王とはなんぞや

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「ウンディーネさーん! おかえりなさい!」

わたしはぱっと顔を輝かせ、魔石から戻ってきたウンディーネに駆け寄った。

「ただいま。……無事に帰ってこれたわ」

柔らかく笑うウンディーネに、わたしはそっと胸をなでおろす。雰囲気的に、再会はよい雰囲気だったようだ。

ウンディーネは着いて早々、ふと部屋を見渡して、眉をひそめる。

「……あれ? ここ、ゴミ部屋じゃないわよね?」

魔界樹のつやつやした机、ふかふかのベッド。
歩くと転んでしまいそうな絨毯。
部屋はピカピカで、以前のゴミ山があった無機質部屋から嘘のような豪華な部屋だ。

「えへへ、色々ありまして、今日から正式にみんなの前で聖女デビューしました! 一気に出世です!」

ちょっと得意げに胸を張るわたし、
けれどすぐ、ぺろっと舌を出して照れ笑い。

「でも、注意されてたのに、さすがにちょっとだけ体力使っちゃいました……」
「ふふ、そうだったのね。よく頑張ったわね」

ウンディーネは優しく眉を下げ、わたしを見つめていた。

「それで……マクライアさんとは?」

少し声を潜めて尋ねると、ウンディーネはふっと肩をすくめた。

「おっさん、通り越して、ほぼお爺ちゃん。情けないったらないわ」

ぽつぽつと語られる再会のエピソードに、わたしは思わず声を上げる。

「汚れた鍋敷き……!? それ、魔王さまスタイルじゃないですか!」
「でしょ!? 50年ぶりの婚約者に座布団のつもりで鍋敷き渡して、しかも『どちらさま?』って! 昔から鈍感だったけど、あれはもう犯罪レベルよ!」

ぷんすか怒るウンディーネ。
けれどその頬は、ほんのりと赤い。

――よかった。ウンディーネさん、ちゃんと幸せそう。

わたしはそっと、嬉しそうに笑った。


* * *


その日、再び、緊急魔王会議がわたし同席で行われることになった。嫁としてふさわしいのか見てやる!そういう空気が立ち込めているとトミーさんも不安そうにしている。

それを聞いた朝から、魔王さまは不安定だった。
部屋の中をそわそわ歩き回ったかと思えば、急に抱きしめてきて――

「もうここに閉じ込める!」

本気で言い出す始末。

「魔王さま、私が選んだことです。大丈夫ですよ」

抱き返して背中をトントンすれば、いったんは落ち着く。
でもすぐに、また不安そうな顔でつぶやく。

「……リンに何かあったら、傷つけられたら、俺……どうすればいい……?」

いつもは頼れる大人なのに、今の魔王さまは、まるで泣き出しそうな子どもみたいだった。

――だから私は、迷わず言った。

「わたし、あなたの妻になりたい」

手を握って、まっすぐに見つめる。
魔王さまの瞳が、涙でにじむ。その繰り返し。

朝からエンドレス。
魔王さまが甘えん坊なのはいいことだけど先に進まない。


そのとき――

バァアアアアアアン!!!

扉を破って乱入してきたのは、トミーさんとヘビ鞭を構えたスネク先生だった!

「魔王さま……秘書官から聞きましてよ。まあまあ、なんとぐずぐずと!わたくしの教育が間違っておりましたわ!!!」

ピシッ! パシッ!!

ヘビムチは容赦なく、魔王さまと私に襲いかかる。

「い、痛っ!? 先生!? なぜ私までーー!!」
「魔王さま!!帝王とは、なんぞや!!」
「わ、私はこうありたいを世界に押し通せる存在です!」

(えっ!? 魔王ってそういう立場なの!?)


ぐすんと子供のようになっていた魔王さまが急に真顔になり、今まで夢を見ていましたとばかりに立ち上がる。

「そう、姿勢! 髪! 指先! あなたのすべてが命令なのです!」

(わ、私の指先、ボロボロなんですけど!?)

わたしは急いで髪と爪をチェック。

「そして……黙っていても背中で支配できる姿勢!!」

パシッ!

(だから、なんで私にまで鞭がーー!!)

「そしてリンさん!」
「は、はいっ! 私が世界基準です!!」
「個人的にはそれでよろしい。ですが、あなたは魔王の妻!!」
「は、はい! でも、まだ正式では……」

パシッ! パシッ!!

(痛い!痛いよーー!なんか鞭がひゅんひゅん音を立ててる!)


「魔王に愛されるだけでは魔王の妻になれません!
魔界すら従える女になること――それが真の魔王の妻です!! さあ、お行きなさい!!」

スネク先生が一気にピシッと指を指す。
それは魔王会議の方向だ。

「はいぃぃぃっ!!」

二人は、スネク先生の怒涛の鞭に追われるように、最上階の会議室へと駆け出していった。

――そこで、魔界を揺るがす初の聖女誕生がまっている。
もちろんわたし本人は、そんな大事になるとは微塵も思っていなかったけれど。
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