【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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50 ウンディーネの後悔

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「こらーーーっ!!!」

突然、金庫の中から怒鳴り声が響いた。
私と魔王さまは、その声にびくっとする。
そして、二人で顔を見合わせて、金庫の扉を凝視する。

「勝手にしんみりして、私を成仏させようとしないでよ!! まったく、マクライアといい、魔王さまといい!!」

びくっ。
ウンディーネさんが激ギレしている。
私も魔王さまも反射的に体を硬くする。
間違いない。
金庫の中から、泣きながら怒るウンディーネの声が響いていた。

「……もう出してもいいのかい?」
「暗いところは嫌いよ! 水の精霊に金庫って、どういうセンスよ!? せめて水槽とかにして!!」

魔王さまがそろーりと金庫を開けて、指輪のケースを取り出すと――パカッ。
ふわふわした水の精霊が、涙をいっぱい溜めた目で飛び出してきた。

「なによ! 勝手にマクライアと仲良く成仏!? 私はそんなつもりないからね!?」
「ウンディーネさん……」
「なんであいつの“死んだ都合”に私が合わせなきゃいけないのよ!? まだリンちゃんに教えてあげたいこと、いっぱいあるの!  ていうか死んでも死にきれないって、まさに今の私よ!!」

ぷんすか怒ってるのに、ぽたぽた泣いている。
体の水がチャプチャプ波打って、逆立っている。

「謝りたいって言ってたくせに、先に死ぬとか意味わかんないし! トミーさんにもまだ懺悔中でしょ!? ちゃんとやり遂げてから成仏しなさいよ!」

「きっと、マクライアさんも、思い残してしまったことだらけでつらかったと思います!」

わたしは、うんうんと頷きながらウンディーネさんを見つめる。精霊で抱きしめることもできない。本当はもっとギュッと抱きしめてあげたい。

その様子を見て、魔王さまがふっと目を伏せた。

「そうか.......マクライアもこれで“無事にあの世に”……とはよく考えたら.....いかないかもしれないな」

「えっ?」

「その指輪ケースさ。アルデリアに渡したくて買ったのに、結局渡せなかった。未練だらけだよ、たぶん」

「……それって、マクライアさん、まだ迷ってる可能性があるってこと……?」

魔王さまは、手に魔法陣を展開して、伝書鳥を呼び出した。

「鳥さん!? 手の中で飼ってたの!?」
「鳥籠から転送しただけ。……ほんと、リンは面白いな」

にこっと笑って、伝書鳥の羽を軽く撫でる。

「伝書鳥。マクライアにメッセージを頼む。もし成仏できないと迷ってるなら、道案内も。リンの時みたいに」

窓を開けて、黒い翼が空へと飛び立っていった。

「……俺、これ以外選択肢なんてないって思い込んでた。でも、色んな場面で、もしかしたら違う答えも選べたはずなんだよな。もっといろんなこと」
「……後悔しますよね。私もです」

わたしも呟く
ウンディーネも、ぼそっとつぶやいた。

「もっと早く、マクライアを許してあげれば良かった。
“ありがとう”って素直に言えてればよかった。
あんなひとりぼっちで暮らさせて……」

水の精霊が涙を流している。文字通り、ぽたぽたと。

「なんでこんなときに指輪ケースなんか……
 私、もう実体ないのに……
 持ち上げることすらできないのに……
 気を遣わせちゃった……」
「違います。マクライアさん、ウンディーネさんに喜んでほしかっただけです」

わたしは、そっと寄り添うように微笑んだ。

「きっと、これからも一緒にお話できるのを楽しみにしてたんです」

「……リンちゃん....」

ウンディーネが、ぼそっと呟いたその時――

ピカッ。

机の上の魔石が光り、エアリアが転移してきた。

「……大変だよ!!」

「エアリアさん!?」

「九尾一族の里……崩壊してる!! 
 廃屋になってて、トミーさんの痕跡はあったけど……
 誰もいなかった!」

部屋の空気が、一瞬で凍りついた。

さっきまでの涙とぬくもりが、遠くへ押し流されていく。

静かに、魔王さまが目を伏せた。

「俺はまた選択を間違えたのか?」

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