13 / 56
襲撃? いや、自発的な患者ですね?
しおりを挟む
深夜。
草木も眠る丑三つ時。
玄白も、体の疲れを癒すために眠りについている。
神から授かった御神体でも、疲れを癒したり消費した魔力を回復するためには、眠りが必要。
特に、今日はかなり疲れた。
自称・勇者とのやりとりのあとは、いつものように治療院で患者を診ていたのだが。
今日は患者の数が多く、特に外傷のひどい冒険者が後を絶たなかった。
話によると、普段は見られない魔物の姿が、街の近くにまで近寄っていたらしい。
これが、勇者の話していたドラゴンが住み着いたことによる影響なのかと考えはしたものの、一介の治癒師である玄白の仕事ではないと頭の中から叩き出す。
そして夜遅くまで治療を続け、クタクタに疲れ切って眠りについたのである。
──ZZZZZ
豪快ないびきを掻きながら爆睡する玄白。
──コトッ
すると、静かに窓が開き、二人の黒尽くめの人物が室内に侵入した。
音もなく腰のホルダーからナイフを抜くと、二人同時にベッドで眠っている玄白に目掛けて素早く突き刺す。
一人は腹部、もう一人は首筋。
声が出ないように喉を狙い、突き刺した後も暴れられないように腹部目掛けて突き落とし、そのまま体を抑え込む。
だが、突き刺した感触に違和感がある。
体に当たった感覚はあるが、刃が刺さる様子がない。
そして
──ドゴォォォォォッ
毛布がはだけ、玄白の掌底がひとりの顎にぶち当たる。
脳が物理的に大きく揺らされると同時に、掌に纏っていた闘気が頭の中を揺らぐ。
これだけで酩酊状態になり、一人はその場に崩れ落ちて嘔吐。
「こ、このフバシュ!!」
──ドゴォォォォォッ
続いて一撃。
今度は右足に闘気を纏い、頭めがけて力一杯ぶちかます。
当然ながら闘気全開、頭に叩き込まれた闘気が全身を巡り、神経を麻痺させる。
「全く。スタークが夜は気をつけろと言っていた意味が、よくわかったわ」
ベッドから起きてパンパンと埃を落とす仕草をする。
その玄白の体からは、幾つもの【魔法障壁】が浮かび上がっている。
「これはマチルダが付与してくれた、【対刃術式】じゃよ。これがなかったら、本当に危なかったわ」
そう呟いたものの、目の前の暗殺者は今にも死にそうな表情である。
「さて。ここで死なれると困ったことになりそうじゃからな。まあ、しばらくは眠ってもらおうか?」
──ブゥン
|解体新書(ターヘル・アナトミア)を取り出し、麻酔薬を精製する。
それを倒れている奴らに嗅がせると、侵入者たちはやがて意識を失った。
「ふぅ。それで、この吐瀉物は誰が片付けるのじゃ……患者のものならいざ知らず、こんなら見ず知らずの暴漢のものなど触りたくもないわ」
そうはいうのだが、やむを得ず消毒液を生成して吐瀉物にぶちまけると、古布を被せて|解体新書(ターヘル・アナトミア)の中に収める。
そしてゴミ箱まで持っていくと、その中に全て投げ捨てた。
………
……
…
翌朝。
玄白は冒険者ギルドに向かう。
そして昨晩何があったのかを、朝食を取っていたスタークたちに告げると、すぐさま【深淵をかるもの】のメンバーが治療院にやってきた。
そして床に縛り上げられている二人の侵入者を見て、なるほどなぁと納得している。
「はぁ。ランガさん、こいつらは指名手配されていた奴らですよ」
「ほう? 指名手配とな?」
「ええ。詳細までは詳しくないのですが、確か暗殺者ギルドに所属している奴らですね。しかしまあ、よくご無事で」
「マチルダ殿に魔法を付与して貰っていなかったら、危ないところであったかもな」
「そうでしたか。今日からは、警備を雇ったほうが良いかもしれませんね」
スタークの言葉に、玄白は頷くのだが。
「警備を雇うとなると、やはり冒険者じゃなぁ。どの程度の金額で、どれだけの腕のやつが雇えるのかさっぱり分からんわ」
「それならよ、俺が戦闘技術を教えてやろうか?」
困り果てた玄白に、サフトが話しかける。
ちなみにサフトの冒険者ジョブは盾戦士。
守りに特化した戦士である。
「戦闘技術か。すまぬが、頼みたい。昨日のように襲われた時のために、自衛手段は身に付けぬといかんようじゃからなぁ」
「そうと決まれば、早速始めるか?」
「待て待て、戦闘技術を乞うのなら、然るべき代価は必要じゃろ?」
そう告げてから、懐から金貨を取り出してサフトに渡そうとするが。
「待った、それは後にしてくれ。それよりもこいつらの処遇だ」
「指名手配されているので、自警団か騎士団詰所に連れて行けば報奨金が支払われる。先に手続きをしたほうがいいだろう」
「それもそうか。ではひとっ走り、騎士団詰所まで向かうことにしよう。すまぬが留守番を任せて良いか?」
「ええ、構いませんが。私たちが代わりに呼んできましょうか?」
マクシミリアンが玄白に問いかけるが、玄白は頭を左右に振る。
「ワシの命を狙って、失敗して捉えられている。この次の手としては、こやつらの口封じじゃろ? だから、ここは任せるぞ」
「なるほど。では、しっかりと警護することにしましょう」
スタークが話しつつサムズアップ。
その意味は知らないが、とりあえず玄白も同じ素振りをしてから、騎士団詰所まで走っていった。
やがて半刻もすると、玄白は数名の騎士を連れて治療院に戻っていく。
一通りの手続きを経て侵入者たちを騎士団に引き渡すと、受け取った褒賞から【深淵をかるもの】たちに金貨を数枚手渡す。
「いや、こんなに貰うわけには」
「よいよい。それよりも、ワシに戦闘技術を教えてくれるのじゃろ? 治療院が終わってからで良いか?」
「そうですね。俺たちの依頼がない日なら、夕方の鐘の後でなら構いませんよ。近接戦闘についてはマクシミリアンとサフトが、魔術ならマチルダが教えることができますから」
「という事ですので、今日からよろしくお願いしますね」
スタークとマチルダの説明を受けて、玄白も静かに頷く。
そして外で待ち始めた患者の治療を始めると、スタークたちも仕事として治療院の警備を始めることにした。
草木も眠る丑三つ時。
玄白も、体の疲れを癒すために眠りについている。
神から授かった御神体でも、疲れを癒したり消費した魔力を回復するためには、眠りが必要。
特に、今日はかなり疲れた。
自称・勇者とのやりとりのあとは、いつものように治療院で患者を診ていたのだが。
今日は患者の数が多く、特に外傷のひどい冒険者が後を絶たなかった。
話によると、普段は見られない魔物の姿が、街の近くにまで近寄っていたらしい。
これが、勇者の話していたドラゴンが住み着いたことによる影響なのかと考えはしたものの、一介の治癒師である玄白の仕事ではないと頭の中から叩き出す。
そして夜遅くまで治療を続け、クタクタに疲れ切って眠りについたのである。
──ZZZZZ
豪快ないびきを掻きながら爆睡する玄白。
──コトッ
すると、静かに窓が開き、二人の黒尽くめの人物が室内に侵入した。
音もなく腰のホルダーからナイフを抜くと、二人同時にベッドで眠っている玄白に目掛けて素早く突き刺す。
一人は腹部、もう一人は首筋。
声が出ないように喉を狙い、突き刺した後も暴れられないように腹部目掛けて突き落とし、そのまま体を抑え込む。
だが、突き刺した感触に違和感がある。
体に当たった感覚はあるが、刃が刺さる様子がない。
そして
──ドゴォォォォォッ
毛布がはだけ、玄白の掌底がひとりの顎にぶち当たる。
脳が物理的に大きく揺らされると同時に、掌に纏っていた闘気が頭の中を揺らぐ。
これだけで酩酊状態になり、一人はその場に崩れ落ちて嘔吐。
「こ、このフバシュ!!」
──ドゴォォォォォッ
続いて一撃。
今度は右足に闘気を纏い、頭めがけて力一杯ぶちかます。
当然ながら闘気全開、頭に叩き込まれた闘気が全身を巡り、神経を麻痺させる。
「全く。スタークが夜は気をつけろと言っていた意味が、よくわかったわ」
ベッドから起きてパンパンと埃を落とす仕草をする。
その玄白の体からは、幾つもの【魔法障壁】が浮かび上がっている。
「これはマチルダが付与してくれた、【対刃術式】じゃよ。これがなかったら、本当に危なかったわ」
そう呟いたものの、目の前の暗殺者は今にも死にそうな表情である。
「さて。ここで死なれると困ったことになりそうじゃからな。まあ、しばらくは眠ってもらおうか?」
──ブゥン
|解体新書(ターヘル・アナトミア)を取り出し、麻酔薬を精製する。
それを倒れている奴らに嗅がせると、侵入者たちはやがて意識を失った。
「ふぅ。それで、この吐瀉物は誰が片付けるのじゃ……患者のものならいざ知らず、こんなら見ず知らずの暴漢のものなど触りたくもないわ」
そうはいうのだが、やむを得ず消毒液を生成して吐瀉物にぶちまけると、古布を被せて|解体新書(ターヘル・アナトミア)の中に収める。
そしてゴミ箱まで持っていくと、その中に全て投げ捨てた。
………
……
…
翌朝。
玄白は冒険者ギルドに向かう。
そして昨晩何があったのかを、朝食を取っていたスタークたちに告げると、すぐさま【深淵をかるもの】のメンバーが治療院にやってきた。
そして床に縛り上げられている二人の侵入者を見て、なるほどなぁと納得している。
「はぁ。ランガさん、こいつらは指名手配されていた奴らですよ」
「ほう? 指名手配とな?」
「ええ。詳細までは詳しくないのですが、確か暗殺者ギルドに所属している奴らですね。しかしまあ、よくご無事で」
「マチルダ殿に魔法を付与して貰っていなかったら、危ないところであったかもな」
「そうでしたか。今日からは、警備を雇ったほうが良いかもしれませんね」
スタークの言葉に、玄白は頷くのだが。
「警備を雇うとなると、やはり冒険者じゃなぁ。どの程度の金額で、どれだけの腕のやつが雇えるのかさっぱり分からんわ」
「それならよ、俺が戦闘技術を教えてやろうか?」
困り果てた玄白に、サフトが話しかける。
ちなみにサフトの冒険者ジョブは盾戦士。
守りに特化した戦士である。
「戦闘技術か。すまぬが、頼みたい。昨日のように襲われた時のために、自衛手段は身に付けぬといかんようじゃからなぁ」
「そうと決まれば、早速始めるか?」
「待て待て、戦闘技術を乞うのなら、然るべき代価は必要じゃろ?」
そう告げてから、懐から金貨を取り出してサフトに渡そうとするが。
「待った、それは後にしてくれ。それよりもこいつらの処遇だ」
「指名手配されているので、自警団か騎士団詰所に連れて行けば報奨金が支払われる。先に手続きをしたほうがいいだろう」
「それもそうか。ではひとっ走り、騎士団詰所まで向かうことにしよう。すまぬが留守番を任せて良いか?」
「ええ、構いませんが。私たちが代わりに呼んできましょうか?」
マクシミリアンが玄白に問いかけるが、玄白は頭を左右に振る。
「ワシの命を狙って、失敗して捉えられている。この次の手としては、こやつらの口封じじゃろ? だから、ここは任せるぞ」
「なるほど。では、しっかりと警護することにしましょう」
スタークが話しつつサムズアップ。
その意味は知らないが、とりあえず玄白も同じ素振りをしてから、騎士団詰所まで走っていった。
やがて半刻もすると、玄白は数名の騎士を連れて治療院に戻っていく。
一通りの手続きを経て侵入者たちを騎士団に引き渡すと、受け取った褒賞から【深淵をかるもの】たちに金貨を数枚手渡す。
「いや、こんなに貰うわけには」
「よいよい。それよりも、ワシに戦闘技術を教えてくれるのじゃろ? 治療院が終わってからで良いか?」
「そうですね。俺たちの依頼がない日なら、夕方の鐘の後でなら構いませんよ。近接戦闘についてはマクシミリアンとサフトが、魔術ならマチルダが教えることができますから」
「という事ですので、今日からよろしくお願いしますね」
スタークとマチルダの説明を受けて、玄白も静かに頷く。
そして外で待ち始めた患者の治療を始めると、スタークたちも仕事として治療院の警備を始めることにした。
0
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる