[R18]2度目の人生でスローライフ?ハーレムだっていいじゃないか

白猫 おたこ

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第四章 やりたい事……。

第80話: 焦熱の回廊、新緑の牙

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 黄金色の朝日が工房の窓から差し込み、作業台に置かれた新装備『黒曜竜の月光防具』を神々しく照らし出していた。
 健太郎は、両腕に伝わる柔らかく温かな肉感と共に目を覚ました。
右腕には、しっとりと肌を寄せてくるアイリス。
左腕には、健太郎の胸板に顔を埋めて安らかな寝息を立てる結衣。
 昨夜の「三位一体の調律」による濃厚な余韻が、肌に残るぬるっとした感覚と、心地よい倦怠感として残っている。

「……ふぅ、よく寝たな」

 健太郎は、愛しき二人の伴侶をさらに強く抱きしめた。
 二人の身体がぴくっと反応し、眠たげな瞳がゆっくりと開かれる。

「……ん、あるじ……。おはよう……なのじゃ。朝から主の腕の中にいられるとは、これ以上の贅沢はあるまいな……」

 アイリスが舌先を出して健太郎の鎖骨を舐め、甘えるように首筋に顔を寄せた。

「健太郎さん、おはようございます……。夢の中でも健太郎さんと繋がっていた気がして、すごく……幸せな朝です」

 結衣もまた、上気した顔で健太郎を見上げ、ぷちゅっ唇をつけ彼に寄り添う。
 健太郎は二人の額、そして少し開いた唇に、愛しさを込めてちゅっと深いキスを落とした。

「二人とも、おはよう。最高の目覚めだ。……さあ、飯にしよう。今日は長旅になるからな」

 健太郎が起き上がると、二人も名残惜しそうにしながら、慣れた手付きで着替えと朝食の準備を始めた。
 朝食の献立は、健太郎の『料理マスタリー』を活かした、スタミナ重視の特製ミートパイと、結衣が淹れた香りの良いハーブティーだ。
 サクサクとしたパイを頬張りながら、健太郎は地図を広げ、アイリスに問いかけた。

「アイリス、お前の感覚でいい。ここから西の火山地帯、その最奥にある『日没の神殿』まで、この装備で進むとして……何日かかる?」

 アイリスはカップを置き、西の空を見据えるようにして目を細めた。彼女の聖霊としての感知能力が、遠く離れた地の魔力密度を測る。

「うむ……。通常の冒険者であれば、溶岩流を迂回し、熱波を凌ぐために一週間は要するであろう。じゃが、あるじが仕上げたこの『月光銀』の加護があれば、影の道(シャドウ・パス)を直進できる。……順調にいけば、三日。三日目の日没までには、神殿の門前に立てるはずじゃ」

「三日か……。短いようで、過酷な三日間になりそうだな」

 健太郎は、鈍く光る黒曜竜の防具を見つめ、静かに決意を固めた。

「結衣、予備のポーションと食料の最終チェックを。アイリス、道中の魔物避けの術式を頼む。……飯を食い終えたら、すぐに出発だ」

「「はい(うむ)、あるじ(健太郎さん)!」」

 二人の力強い返事が、工房に響く。
48歳の革職人・健太郎。愛する二人の伴侶と共に、いよいよ神域の深淵へと足を踏み出す

「そういえば、途中に村か街はあるのか?」

「うむ、道中か。……そうじゃな、二日目の昼を過ぎたあたりに、火山の麓の廃村を再利用した『灰被りの宿り(アッシュ・レスト)』という中継点があるはずじゃ」

 アイリスは地図の西端、赤く塗られた山脈の入り口付近を指差した。

「街と呼べるほど立派なものではないが、火属性の魔石を採掘するドワーフや、神殿を目指す物好きな冒険者たちが集う場所よ。そこで装備の最終調整や、現地の生きた情報を仕入れることができるじゃろう。何より、神殿の呪いに抗うための『聖灰』はそこでしか手に入らぬからな」

「なるほど、補給ポイントがあるのは助かる。……結衣、そこまでは一気に進むぞ」

「はい、健太郎さん! 準備は万端です。……それにしても、三日間も健太郎さんとずっと一緒にいられるなんて、過酷な旅のはずなのに、なんだか楽しみになっちゃいます」

 結衣がはにかみながら、健太郎の二の腕にそっと抱きついた。

「ふふ、結衣よ。浮かれるのは良いが、火山地帯の熱は肌を焼くほどじゃ。主が作ってくれたこの防具がなければ、数時間で干物になっておるぞ。主、出発の前に……景気づけに、もう一度だけ妾たちを抱いていかぬか?」

「アイリス、お前……。さっき朝飯を食べたばかりだろう」

「何を申す。主の精(魔力)を体内に満たしておくことが、最強の魔除けになるのじゃからな!」

 アイリスがいたずらっぽく笑い、健太郎の腰に手を回す。
健太郎は苦笑しながらも、頼もしい二人の背中を押し、工房の重い扉を開け放った。

「……いや、先を急ごう。その『お楽しみ』は、二日目の宿場町まで取っておく。……行くぞ!」

 工房を後にした三人の前に広がっていたのは、緑豊かな辺境の森から一転し、空が薄暗い火山灰で覆われた「焦熱の回廊」へと続く荒野だった。

 地面からは時折、熱を帯びた蒸気が吹き出し、空気は硫黄の匂いと乾いた熱気に満ちている。

「……暑いな。だが、この籠手(ガントレット)……全く熱を通さないどころか、内側から冷気が流れてくるようだ」

 健太郎は、自ら製作した『黒曜竜の月光防具』の感触を確かめた。
月光銀の筋が、周囲の熱を吸収し、魔力へと変換して装着者の体温を一定に保っている。

「さすがは主じゃ。妾の聖霊としての加護を、これほどまでに効率よく循環させるとは。これなら、魔物との戦闘に全神経を集中できよう」

「健太郎さん! 前方、岩陰に反応あり! ……溶岩の塊みたいな犬が、三匹!」

 結衣の鋭い警告と共に、岩の隙間から全身が炎に包まれた魔物『ラヴァ・ハウンド』が躍り出た。
 健太郎は迷いなく、背負った聖弓を引き絞る。

「……ちょうどいい。新装備の試運転だ。アイリス、結衣、援護を!」

「心得た!」「お任せください、健太郎さん!」
 三人の新たな戦いが、今始まった。

 かつては無骨な黒鋼樺の長弓であったアイリスの本体は、今やその姿を劇的に変えていた。
 健太郎が注ぎ込んだ情愛と、月光銀の魔力、そして「真誓」の契約。
それらすべてが結晶となり、白金(プラチナ)の輝きを放つ【聖弓アイリス】へと進化を遂げたのだ。

「ふふ、主よ。今の妾を引く心地はどうじゃ? 以前よりもずっと、主の指先に敏感になっておるじゃろう?」

 健太郎の手に握られた聖弓が、アイリスの思念を乗せて甘く震える。
健太郎はその白い弓幹の滑らかな曲線に、昨夜愛でたアイリスの肢体を重ね合わせ、力強く弦を引き絞った。

「ああ。……吸い付くような手応えだ。お前のすべてを、俺が『把握』しているのがよく分かる」

 健太郎が狙いを定めた先には、岩陰から躍り出た三頭のラヴァ・ハウンド。
全身に溶岩の滴を纏った醜悪な魔獣たちが、耳を刺すような咆哮を上げる。
 だが、健太郎の動きに迷いはない。
【弓術マスタリー】の極地に近いその指先が、白銀の弦を弾く。
 ヒュンッ!
 放たれたのは物理的な矢ではない。
聖弓アイリスの魔力と、健太郎の『慈愛の加工』によって精錬された純粋な光の魔矢だ。
 矢は空気を引き裂き、狙い違わず先頭のラヴァ・ハウンドの眉間を貫いた。

「ガ、アッ……!?」

 炎の魔獣は悲鳴を上げる間もなく、内側から月光のような白銀の光に焼かれ、一瞬で塵となって霧散した。

「すごい……! 健太郎さん、一撃ですか!?」

 後方で結衣が驚嘆の声を上げる。

「一撃では足りぬ。アイリス、次だ!」

「応とも、あるじ! 妾を思う存分、射ち放つが良い!」

 健太郎は流れるような動作で二の矢、三の矢を番える

 シュンッ! シュンッ!

 矢は意志を持っているかのように軌道を描き、残る二頭の心臓を正確に射抜いた。
 焦熱の回廊に、静寂が戻る。

「ふぅ……。この弓なら、西の火山の難敵も恐れることはないな」

 健太郎は聖弓の感触を確かめ、肩の力を抜いた。

「さて、一旦はこの場を掃討できたな。……結衣、アイリス。この先の中継地点に着いたら、一度ログアウトしよう。現実(リアル)の方でも、少し休息と栄養補給が必要だからな」

 健太郎の言葉に、結衣が家庭的な微笑みで頷く。

「そうですね。ログインしっぱなしじゃ、健太郎さんの身体が心配ですから。……戻ったら、美味しいご飯、作りますね」

「うむ……あるじが消えてしまうのは寂しいが、夜の『手入れ』のためにも、主の身体は労わらねばならぬからのう」

 アイリスが第五形態に戻り、健太郎の腕に抱きつく。
 一行は、二日目の目的地「灰被りの宿り」を目指し、灰の降る荒野を力強く進み始めた。

 焦熱の回廊を抜け、荒涼とした岩場にひっそりと佇む中継拠点キャンプ地に到着した頃、神域(ゲーム)内の空は不気味な赤紫色の黄昏に染まっていた。
健太郎は、煤けた石造りの宿屋の一室を借りると、愛用の聖弓アイリスを壁に立てかけ、大きく息を吐いた。

「ふぅ……。ここまでにしよう。アイリス、結衣。一度、現実(リアル)に戻るぞ」

「うむ、承知した。あるじ、向こう側でもしっかり身体を休めるのじゃぞ。妾はここで、主が戻るまでこの聖弓の中で主の温もりを反芻しておるわい」

 アイリスが第五形態の肢体で健太郎に最後の一抱きをし、淡い光となって弓の中へと溶け込んでいく。
健太郎は次に、隣で少し名残惜しそうに自分を見つめる結衣へと向き直った。

「結衣、お疲れ様。……向こう側で会おう」

「はい、健太郎さん。……ふふ、同じ家に帰るのに、なんだか不思議な感じですね。それじゃあ、また後で」

 結衣がログアウトの光に包まれて消えるのを見届け、健太郎もまたシステムメニューを展開し、ログアウトを選択した。
 カプセル状のログインデバイスが静かに開き、健太郎は現実世界の自室へと戻ってきた。48歳の身体に、重力としっとりとした夜の空気が戻ってくる。
 リビングへ向かうと、そこには既にデバイスから抜け出し、部屋着に着替えてお湯を沸かしている結衣の姿があった。

「あ、健太郎さん。お疲れ様です。……今、珈琲淹れますね」

 結衣はふわりと微笑み、手慣れた動作で豆を挽き始めた。
香ばしい珈琲の香りがリビングに広がり、先ほどまでの火山地帯の硫黄の臭いを上書きしていく。
 健太郎はソファに深く腰を下ろし、結衣が差し出したマグカップを受け取った。

「……美味いな。生き返るよ」

「良かったです。……神殿まであと二日。明日の夜には、いよいよ麓の村まで行けるよね。明日、仕事から帰ってきたら、また一緒にログインしよう? それまでに、明日の夕飯の仕込みもしておくから」

 結衣は健太郎の隣に腰掛け、その逞しい肩にそっと頭を乗せた。
ゲーム内での「正妻」としての献身も素晴らしいが、こうして現実の生活の中で共に珈琲を飲み、明日を語らう時間は、健太郎にとって何物にも代えがたい「手入れ」の時間であった。

「ああ。……続きは明日だ。お前が帰ってくるのを待ってるよ」

 健太郎は結衣の肩を抱き寄せ、最後の一口を飲み干すと、二人は静かに寝室へと向かった。
 明日の戦い、そしてその先にある神殿。職人の夜は、穏やかな眠りの中で更けていった。

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