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第五章 スキルリセット アイリスの再生
第97話: 【意志の弾道】理を穿つ一矢と、一ゴルドの希望
しおりを挟む「……あるじ、左だ。風を読む必要はない。其方の『射抜く』という意志だけを妾に乗せよ」
工房の外、かつての「死の森」は今や変異した猛獣たちの巣窟となっていた。
だが、健太郎の背にあるのは、ただの弓ではない。
黒鋼樺の長弓へと姿を変えながらも、魂の深淵で繋がった相棒――アイリスだ。
「わかってる。……いくぞ、アイリス」
健太郎が弦を引き絞る。以前のようなシステム的な「オートエイム」は存在しない。
だが、『聖霊同調』が復活した今、アイリスの視界は健太郎の視界と重なり、獲物の急所が熱源のように浮かび上がる。
――ヒュッ、と空気を切り裂く音が一度。
放たれた一矢は、百メートル先の茂みで構えていた大型の変異猪(アビス・ボア)の眉間を、正確無比に貫いた。
「くく……見事だ。主の意志、しかと受け取ったぞ」
次々と襲い来る獲物に対し、健太郎は迷いなく矢を放つ。
眉間、喉元、心臓。放たれる全ての矢が、理を穿つように獲物の命を刈り取っていく。
「結衣、やるぞ」
「うん、任せて!」
仕留めた獲物を前に、健太郎は素早く腰の短刀を抜いた。
『レザークラフト』と『サバイバル』のスキル、そして現実の職人としての経験。
無駄のない動きで血を抜き、皮を剥ぎ、肉を部位ごとに捌いていく。
結衣もまた、健太郎の動きを補助しながら、手際よく素材を仕分けていった。
気づけば、工房の前の広場には、山のような肉と、上質な皮が積み上げられていた。
「……健太郎さん、これ見て。掲示板が……大変なことになってる」
結衣が操作するウィンドウには、悲痛な叫びが溢れていた。
『武器が壊れた』『道具が作れない』。そして何より、『空腹で動けない。デスペナでレベルが下がり続けて、もう消えそうだ』という、餓死寸前のプレイヤーたちの断末魔。
「……アイツら、食いもんもねえのか」
健太郎は、積み上がった大量の肉を見つめた。
自分たちだけで消費するにはあまりに多い。だが、今のマーケットでこれを高値で売れば、莫大な富が得られるだろう。しかし、健太郎が選んだ道は違った。
「結衣、この肉……全部マーケットに流すぞ。値段は、一律1ゴルドだ」
「えっ……1ゴルド!? 健太郎さん、それじゃタダ同然だよ?」
「ああ。今のあいつらに必要なのは、富じゃない。『明日も生きられる』っていう確信だ」
健太郎はマーケットの出品欄に、捌きたての肉を次々と登録していく。
そして、その全てに一つのメッセージを添えた。
『諦めるな。想いが、願いが、この世界の力になる。――食って、立ち上がれ』
その瞬間、停滞していたマーケットのログが、猛烈な勢いで動き始めた。
【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
【キャラクターレベル:3】
【ジョブ:レザークラフト(革職人) Lv.2】
■ 生産系(マスタリー)
• 木工(マスタリー) Lv.1:(10/100) → (25/100) UP
• レザークラフト(マスタリー):(60/100) → (80/100) UP
• サバイバル(マスタリー):(15/100) → (45/100) UP
■ 特殊生産系(レベル上限なし)
• 慈愛の加工:(60/100) → (70/100) UP
• 導きの声:(110/100) → (125/100) UP
• 愛撫:(90/100) → (105/100) UP
■ 真理系
• 鑑定眼 Lv.2:(20/100) → (40/100) UP
【結衣 スキル熟練度】
【キャラクターレベル:3】
【ジョブ:裁縫師 Lv.2】
■ 生産系
• 裁縫マスタリー Lv.1:(25/100)
• 探知・探索:(75/100) → (90/100) UP
■ 身体強化系
• 奉仕マスタリー:(95/100) → Lv.1 (10/100) LEVEL UP!!
• アイリスとの聖霊同調により、戦闘能力が大幅に向上(眉間を貫く精度)。
• 健太郎は大量の肉と皮を確保し、肉を「1ゴルド」でマーケットに放出。
• メッセージ「諦めるな、想いが、願いがチカラになる」をプレイヤー全体へ発信。
• 結衣の『奉仕マスタリー』がレベル1に上昇。
【連鎖する意志】灯された火と、革の鼓動
健太郎がマーケットに放流した「1ゴルドの肉」。
それは、餓死とレベルダウンの恐怖に支配されていたプレイヤーたちにとって、単なる食料以上の意味を持っていた。
■ 掲示板:【生存】神の肉を食った奴、ちょっと来い 130層目
1 名無しの冒険者
……食えた。本当に1ゴルドで「極上の干し肉」が買えた。
おい、これ……ステータス異常の『飢餓』が消えるだけじゃねえ。
身体が、熱いんだ。
2 名無しの冒険者
>>1
俺もだ。数日ぶりに腹が膨れた……。
添えられてたメッセージ見たか?
『想いが、願いがチカラになる』……これ、あの「1ゴルドの肉」を出した奴の言葉だよな。
3 名無しの生産職
……情けねえ。俺は何を諦めてたんだ。
「システムが消えたから何もできない」って座り込んでた自分が恥ずかしい。
肉を食ったら、力が湧いてきた。
誰かは知らねえが、この肉を捌いた奴……一刀ごとに「魂」が込もってやがる。
見てろ、俺も今から石を砕いて、絶対ナイフを作ってやる!
4 名無しの冒険者
【速報】
マーケットの1ゴルド肉、現在進行形で数十個単位で追加されてる模様。
出品者の名前は伏せられてるが……。
かつて、あの「死の森」で職人をやってたレジェンドじゃねえかって噂だ。
5 名無しの素材屋
>>4
間違いない。この皮の剥ぎ方、部位の分け方……。
素材への敬意が異常だ。これは「ゲームの作業」じゃねえ。
プロの『職人』の仕事だ。
■ 工房にて
「健太郎さん、すごい……マーケットの肉、出せば出すほど売れていくよ。みんな、メッセージを読んで……また立ち上がろうとしてる」
結衣は、絶え間なく流れる購入通知と、掲示板に溢れる感謝の言葉に瞳を潤ませる。
「……当然だ。あいつらも、好きで負け犬になってたわけじゃない。きっかけが欲しかっただけだ」
健太郎はアイリスを傍らに置き、次は確保した大量の「変異猪の皮」へと視線を移した。
肉は配った。次は、あいつらが戦うための「守り」が必要だ。
「結衣、ここからは本職(レザークラフト)の時間だ。この皮、ただの素材じゃないぞ」
「うん。……意志が現実を侵食するなら、この皮に『絶対に守る』っていう願いを込めれば……」
「ああ。最高の防具を打ち出すぞ。アイリス、手伝ってくれ」
『くく……あるじよ、合点承知。私の魔力、惜しみなくその皮へ流し込んでやろうではないか』
健太郎の手が、猪の皮に触れる。
スキル『愛撫』が、かつてない高揚と共に発動した。
【健太郎(三神健太郎) スキル熟練度】
【キャラクターレベル:3】
【ジョブ:レザークラフト(革職人) Lv.2】
■ 生産系(マスタリー)
• 木工(マスタリー) Lv.1:(25/100)
• レザークラフト(マスタリー):(80/100) → (95/100) UP
• サバイバル(マスタリー):(45/100) → (60/100) UP
■ 特殊生産系(レベル上限なし)
• 慈愛の加工 Lv.1:(70/100) → Lv.2 (10/100) LEVEL UP!!
• 導きの声 Lv.1:(125/100) → Lv.2 (35/100) LEVEL UP!!
• 愛撫 Lv.1:(105/100) → Lv.2 (25/100) LEVEL UP!!
■ 真理系
• 鑑定眼 Lv.2:(40/100) → (60/100) UP
【結衣 スキル熟練度】
【キャラクターレベル:3】
【ジョブ:裁縫師 Lv.2】
■ 生産系
• 裁縫マスタリー Lv.1:(25/100) → (40/100) UP
• 探知・探索:(90/100) → Lv.1 (10/100) LEVEL UP!!
■ 身体強化系
• 奉仕マスタリー Lv.1:(10/100) → (30/100) UP
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